味覚異常とは?


食べ物の味がわかりづらい、濃い味付けだといわれる、何を食べてもおいしくない、食べていないときでも口が苦い、味を見分けられない、特定の味だけわからない、などという症状はありませんか?これらは総称して、味覚異常、あるいは味覚障害と呼ばれています。これは 60 代をピークとする高齢者に多いため、従来は老化により味覚機能が減退するためだと考えられていましたが、最近では 20 ~ 30 代の若い世代にも広がりつつあります。

味覚異常の原因


味覚異常は、原因不明のものが多いのですが、主に以下のような要因が考えられています。特に最近では、食生活の変化により血中の亜鉛濃度が低下する例が多くなっているようです。亜鉛が味覚に必要なのは、舌にある味センサーの新陳代謝に必須の物質であるためです。

1)老化など、唾液分泌の低下による口腔内の乾燥によるもの

2)亜鉛濃度の低下によるもの
❒食品添加物(加工食品・インスタント食品などに含まれるポリリン酸・リン酸塩・フィチン酸など)の摂取による亜鉛吸収低下
❒長年の食事の嗜好、偏食による栄養の偏り
❒ダイエットによる、必須栄養素としての亜鉛の摂取量不足
❒薬の副作用(亜鉛の吸収が妨げられたり、亜鉛の排泄が過剰になる場合)

3)特定の疾病からくるもの:糖尿病、肝・腎・脳障害、胃腸病、心身症、舌癌など

4)熱い食事による慢性的なやけど

5)風邪後遺症など、ウイルス感染による臭覚味覚同時障害

6)味付けの濃さ:例えば一人暮らしなどをしていると、味付けに歯止めがきかなくなり、ひとたび濃い味に慣れると、味覚減退に拍車がかかるおそれがあります 。

 

漢方薬による味覚異常の治療


漢方薬では、以下のような応用が考えられます。

1) 消化機能低下 :舌は、消化器、つまり胃腸の一部と考えられます。食事の不摂生や過労・慢性疾患により、気力が足りない状態である「気虚」となり、胃腸も不調に陥ります。この場合、補中丸(補中益気湯)や健胃顆粒(香砂六君子湯)などが使われます。また、腹部に余分な湿気がたまり、膨満感による食欲不振・全身倦怠感を伴う時は勝湿顆粒(かっ香正気散)も使用されます。

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2) 唾液不足 :高齢者に多いケースであり、また、シェーグレン症候群による唾液不足でも味覚異常が見られます。唾液は、食物から味の元となる成分を溶かす働きがあるので、唾液が少なくなると乾燥して味覚感受性が落ちると考えられています。代表的な漢方薬としては、麦門冬湯や白虎加人参湯などがあります。

3) 心因性失調 :ストレスなどで抑うつ気分があるときは香蘇散など、気のめぐりが悪く怒りっぽい状態になるときは柴胡剤(柴胡という生薬を含む漢方薬)が繁用されます。

4) 全身疾患など、その他の病気を併発しているとき :そもそも併発している病気が味覚異常の原因となっていることがあります。この場合は、その原因となる病気の治療を中心に、漢方薬療法を行うことが賢明でしょう。例えば、糖尿病などの生活習慣病があります。漢方では、からだ全体の症状から適切な処方を決定する必要があり、個々の状況により選ぶべき漢方薬が異なりますので、漢方に詳しい専門家に相談してください。

 

味覚異常のための日頃の養生・注意点


味覚異常について、ここにいくつかの生活上の注意点を列挙してみました。原因と結びつきそうなものを実行してみましょう。

1) 食事に気をつける! :基本的には偏食をなくし、栄養面でバランスよく食べることが大切です。以下に注意点を挙げます。

❒亜鉛欠乏症:亜鉛を多く含む食品を摂ることを心がけましょう。亜鉛は、味を感じる舌にある細胞の新陳代謝に対して重要な元素です。味細胞にある酵素、アルカリフォスファターゼの中心に亜鉛があり、この亜鉛が欠乏すると味覚障害になるとされています。亜鉛の 1 日必要摂取量は 12mg といわれています。そこで、手っ取り早いのは、カキ(貝)を食べることです。カキは 100g に対して、 40 mg 以上の豊富な亜鉛を含有しているからです。その他の食品として、レバー・緑茶・きな粉・黒ゴマ・卵黄・野菜類・海藻類にも亜鉛が多く含まれるので、積極的に摂るようにしましょう。また、亜鉛を豊富に含む健康食品として、食用蟻(アリ)があります。本来、
食用蟻は中国で古くから滋養強壮・免疫調整の目的で用いられましたが、亜鉛はもちろん、その他のミネラルもバランスよく配合されています。「イーパオ」という名称で錠剤タイプの健康食品として入手できます。ただ、亜鉛摂取の効果は時間を要し、一旦下がった血中の亜鉛レベル回復のためには、 3 ヶ月ほどの観察が必要とされています。なお、亜鉛不足は、味覚異常以外にも精力減退・発育遅延など重大な障害が生じる可能性があるので早めの対応が必要です。客観的な診断は、総合病院の耳鼻咽喉科で血中の亜鉛値を調べてもらうのがよいでしょう。

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❒加工食品・インスタント食品は食品添加物が多く、亜鉛の吸収を妨げることがありますので、過剰に摂らないように配慮しましょう。

❒ダイエット中の方は、必要な栄養素が不足しないようにしましょう。これも同じく亜鉛摂取が足りずに味覚異常につながるケースがあります。

❒好みの味付けが、周りの人よりも濃いと気付いた場合は注意が必要です。味覚感受性低下の可能性も考えられますし、一般に濃い味付けは、将来高血圧や糖尿病などの生活習慣病になるおそれもあります。

❒よく噛んで食事をしましょう。唾液をしっかりと出し、消化・吸収をよくすることで味覚センサーの感受性を確保することができます。唾液を潤すには、食事前に酢を含むものを食べると良いという意見もあります。また、精神的にも、良く咀嚼してゆっくりと食事を味わうことが大切です。義務感で食事をすると逆にストレスを感じ、舌に対して良い作用があるとは考えられません。

 

2) 日頃のストレスをためない! :漢方では、ストレスは気のめぐりを停滞させると考えます。気のめぐりは、血流・水分の流れに影響するので、舌の健康にも関連があります。舌への栄養供給のためにもストレスを受けにくく、ためにくい生活を心がけましょう。

 

3) 西洋薬を服用している場合 :お医者さんで別の病気のためにお薬をもらって飲んでいる場合、特に降圧剤・抗生物質などは、それにより亜鉛の吸収が悪くなったり、過剰に排泄されたりする可能性もあります。服用している薬のチェックは案外大切です。薬の種類・その変更について主治医の先生に相談してみることも一法です。


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