西洋医学的な見解と漢方の診立てとの関係


「なかなか子供が出来ないなあ」と思ったときに、まずは病院で検査をする、という方も多いのではないでしょうか。西洋医学の進歩はめざましく、妊娠に関するホルモンの働きや、細かな仕組みも段々とわかってきています。さらに超音波診断などの画像技術も日々進歩し、少ない負担で様々な判断が出来るようになってきました。

とはいえ、検査結果が出て、いざどのように対処すべきかという段階になると、西洋医学的手法は限られます。ホルモン治療や外科的手術に抵抗がある方も多くないでしょう。また、検査結果が問題なくとも子供が授からない、というケースも多々見受けられます。そのような時、検査結果を踏まえつつ、治療は漢方薬で‥と考える方が増えているようです。検査は西洋医学に任せ、実際の対応は漢方でという、使い分けが今の時流なのかもしれません。

 

それぞれの検査方法について


では一般的な検査結果に対し、漢方では一般的にどのように考えることが多いのか、見ていきましょう。ただし、以下の注意点はお忘れなく。

・検査数値は非常に敏感で誤差が大きいものもあります。あまり神経質になってもいけないと言われています。
・漢方的な診立ては、体質など様々な要素を総合しての判断が原則です。
・検査数値のみからの判断は一般的なものであることをご承知おき下さい。
・検査数値からの治療の判断は最終的にはかかりつけの医師にご相談ください。

 

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1、 基礎体温


検査といえば、まずは一番体への負担が少なく、かつ比較的良い判断材料となる基礎体温の測定が基本です。朝目覚めた時の体温を測定し、月経開始日から14日間前後は36.7℃以下(低温期)、その後約14日間は36.7℃以上(高温期)となり、その差が0.3℃以上あることを確認します。いわゆる2相性になれば、まず排卵が起こっているだろうと判断します。この基礎体温を医師に見せ、「黄体機能不全」である可能性が高いことを示唆されることが多いようです。これはおおむね高温期持続期間が12日以下、低温期と高温期の温度差が0.3℃以下の場合であり、超音波検査、ホルモン検査と合わせ診断します。

さて、この基礎体温の状態から漢方的には様々な体質の可能性を考えます。詳しくは「生理のお話」のコーナー「基礎体温をつけましょう」
をご覧下さい。


 

2、 頸管粘液検査


排卵の近い時期に実施され、いわゆる帯下(おりもの)の量や牽糸性、色、結晶などを判断します。子宮頸管粘液は、排卵直前に急上昇するホルモンにより、量が0.3ml以上、色は透明で、10cm以上の牽糸性を示すとされます。クロミッド服用中は量の減少が見られることが知られています。頸管粘液の状態も、漢方的な体質を判断する良い指標となります。詳しくは「生理のお話」のコーナー「帯下」をご覧下さい。

 

3、 フーナーテスト


排卵が近い時期に行われ、性交渉数時間後の子宮腔内等から液を採取し、精子と頸管粘液の相性をチェックします。顕微鏡での観察で運動している元気な精子がおおむね5個以上であれば良好と判断されます。ただしその検査、判定方法が完全に確立されているとはいえず、また検査時点での男性の体調等に結果が影響されやすい面も多いようです。

フーナーテストが不良の場合には、抗精子抗体が存在する可能性が考えられます。その他頸管因子、男性因子による不妊も考慮しなければならないでしょう。総じて男性側が原因である可能性も高いため、漢方的対処法としては“補腎(生殖機能を高める)”の力を持つ漢方薬を男性に服用してもらうことを第一に考えます。代表的な漢方薬には「参馬補腎丸」があります。

 

4、 ホルモン測定


血中のホルモン値を測定します。原則としては、月経開始日から3~7日後の黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、エストラジオール(E2)、プロゲステロン(P4)、テストステロン(T)を、着床期(排卵から7日目)のE2、P4を評価する場合が多いようです。また、甲状腺機能障害の有無を調べるために、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の検査をする場合もあります。各検査正常値のおおよその目安は下記のとおりとなります。

LH‥1.8-7.0(mIU/ml)
FSH‥5.2-14.4(mIU/ml)
PRL‥2.4-8.1(ng/ml)
T‥0.2-0.8(ng/ml)
E2‥卵胞期(低温期)は50pg/ml以下、黄体期(高温期)は100pg/ml以上
P4‥卵胞期(低温期)は1ng/ml以下、黄体期(高温期)は1ng/ml以上

これら数字が意味することは非常に複雑であり、例えばLHが高いから、漢方的にどうこうとなかなか言えません。ただし、比較的シンプルに考えやすい数値と漢方の関係について以下に述べてみます。

1) PRLが高い‥高プロラクチン血症と呼ばれます。漢方的には「気滞(きたい)=気の巡りが悪いこと」の場合が多く、
炒り麦芽などの生薬が良く使われます。

2) FSHが高い‥25mIU/ml以上であると排卵誘発が難しいと考えます。漢方的には、「お血=血行が悪い状態」と
「腎虚=体質が弱い」がある場合が多く、水蛭製剤や補腎剤などを良く用います。

3) P4が低い‥8ng/ml以下であれば黄体機能不全が疑われます。漢方的には「腎陽虚=腎の温める物質の不足」
である可能性が高く、補腎剤の適用となる場合が多いようです。

今回は、検査数値と漢方の関係に触れてみましたが、不妊治療の場合、非常に多岐にわたる情報から、対処法を検討します。よって人それぞれ、適したお薬が変わります。ぜひ一度漢方薬局でゆっくり相談してみて下さい。なおこのシリーズはパート2を予定しています。

 

 

参考図書;不妊ケアABC(医歯薬出版)、ホルモン測定値の読み方について(中山書店)