肝からくる症状を見分けよう


前回までで五臓の生理のお話は終わりました。この捉え方をもとに、 起こっている症状がどの臓腑からくるものなのかを見分け、さらにこれまでに学んだ寒熱(かんねつ)、虚実(きょじつ)、陰陽(いんよう)、気血津液(きけつしんえき)の状態を明らかにする方法を「臓腑弁証(ぞうふべんしょう) 」といいます。

今回は五臓のうち「肝」の異常で起こる症状を見ていきましょう。

「肝の生理」の回でお話ししましたように、中医学における肝は、全身の気の運行、精神・神経の安定、血の貯蔵、筋・目の機能維持などの機能を司っています。そのため、肝が上手くはたらかないと、

  ・  精神神経症状

  ・  自律神経系の失調による身体症状

  ・  運動系の異常

  ・  目の障害

などが見られるようになります。肝はのびのびとした状態を好む「木」の性質があるためストレスによる影響を受けやすく、肝における病証はストレスの多い現代の日本にとても多く見られる症患でもあります。

 



【肝の病証】


では、具体的にはどういったことが症状として起こるのでしょうか。大きくは機能が異常に亢進している症状(=実証;じっしょう)と、機能低下や慢性病に多い症状(=虚証;きょしょう)に分けられます。

*実証*


肝気鬱結(かんきうっけつ)

ストレスなどで気の流れが悪くなりますと、イライラ、情緒不安定、月経不順、上腹部の張った感じなどの症状が見られます。また、五行学説において「木(=肝)」と相克関係であった「土(=脾)」を抑えすぎてしまうため、消化器症状(悪心・げっぷ・お腹の張りなど)も起こることがあります。この病態を「肝気鬱結」といい、肝の症 患 の中では一番よく見られます。以前ご説明した「気滞」の項目を参考にされると良いでしょう。

肝火上炎(かんかじょうえん)

肝気鬱結の状態が長びいたり、激しいストレスを受けたりした場合は、滞った気が熱を生じ、「火」の性質が現れてきます。この状態を肝火上炎といいます。肝気鬱結の症状に加えて、怒りやすい、不眠、めまい、強い耳鳴り、顔面紅潮、目の充血、便秘、月経過多などの熱証の症状が現れます。

肝痰湿熱(かんたんしつねつ)

飲食の不摂生やそれに伴う胃腸障害のため、肝と胆が炎症を起こした状態です。六淫のうちの「湿邪」と「熱邪」に犯された状態で、主な症状は、脇腹のあたりの痛み、食欲不振、黄疸、口の苦みなどです。

 

*虚証*


肝血虚(かんけっきょ)

心身の疲労、出血過多、慢性病による消耗などで肝血が不足した状態で、主な症状はめまい、ドライアイ、目のかすみ、血色不良、筋肉のしびれやけいれんなどです。

肝陽上亢(かんようじょうこう)

肝血虚の状態が続いて陰陽のバランスが崩れ、肝陽が抑えきれなくなることが原因です。肝火上炎と似たような症状(イライラ、めまい、顔面紅潮、口渇など)が見られるほか、手足のほてり、のぼせ、動悸、物忘れ、疲れやすいなど、体液不足の症状が現れてきます。

 




文章では難しく感じますが、仕事や人間関係でストレスがたまってくると、イライラしたりふさぎこんでしまったりして、だんだん食欲もなくなってきてしまうという状態は、多くの人が経験しているのではないでしょうか。あまりストレスをため込まないように、のびのびできる時間を持てるよう心がけていきましょうね。