漢方薬を服薬する際に、生体リズムを表わす子午流注に月経周期のリズムを対応させると薬の効果をよりアップさせるに最適な服薬時間があるといわれています。中医学独特な理論ですがご紹介いたします。

 

先日、7年前に一度訪れたことのある南京中医薬大学婦人科の研修にいってきました。国家の名医と言われる夏桂成先生(80歳)の外来を見学していた時に先生は患者さんに壁にかけられているボードを指差しながら「必ずアレ守りなさい!」と仰っていました。

sdada

ボードに描かれたものは初めて見る子午流注の陰陽循環循行図と月経周期ごとに服薬する時間でした。

(以下の内容は夏桂成先生著書「婦科方薬臨証心得十五講」より抜粋しました。)

 

【1】子午流注とは?


shigo

もともと中医鍼灸学で用いられていた古典的な針法であり、「人と天地相応」の観念から人体気血の流れを昼夜での盛衰開合の時間からツボや手法の選択をし、最適な治療効果をもたらすことに用いられてきた。

この1日の時間の流れによる変化を女性の月経周期の変化に応用し、女性ホルモンの陰陽の消長転化のリズムすなわち【月経期・卵胞期・排卵期・黄体期】に当てはめて考えられる。

 

【2】子午流注と月経周期の関係


子午流注にはリズムがあり日内時計と呼ばれ主に4つの段階に分けられる。古い文献《灵枢・衛気行》の中では“一年は十二ヶ月、一日は十二辰(支)、子午は経、卯酉は緯。”とあり子午流注、日内時計において子午卯酉は重要な時期とされている。

さらに、《素問・金匱真言論》では日内の時間の変化を“明け方から日中(6時から12時)は天の陽 陽中の陽なり日中から夜(12時か18時)は天の陽 陽中の陰なり夜から夜中(18時から24時)は天の陰 陰中の陰なり夜中から明け方(24時から6時)は天の陰 陰中の陽なり”と表しており、昼夜間陰陽変化のリズムである。

また、人体との関係においては“人体の陽気は日中外を運行し各種の効能活動を推し進め夜は内に入り休息する”つまり、昼夜陰陽の変化は人体の変化にも呼応しているということである。

月経周期は4つの時期に分けられ、

・月経期と排卵期は周期の中で2回の顕著な転化期であり、月経期は重陽が陰に転化する時期で子午流注の“午”の時に相似しており12~13時にあたる。

・排卵期は重陰が陽に転化する時期で子午流注の“子”の時に相似しており、24~1時にあたる。

・卵胞期は陰長陽消(陰が成長し陽が減少する)が始まり「陰長陽消期」といい、午流注の“酉”の時に相似しており18~19時にあたる。

・黄体期は陽長陰消(陽が成長し陰が減少する)が始まり「陽長陰消期」といい、午流注の“卯”の時に相似しており6~7時にあたる。

月経周期のリズムを一日のリズムに圧縮させた見方である。

過去に臨床上で統計をとった結果、妊娠適齢期で生殖効能が正常な30例のうち連続3カ月の来潮の時間が昼間だったのが27例、2例が18~19時、あとの1例が6~7時に来潮しており、ここから統計数は少ないけれど月経期と午の時が呼応していることと捉えるに重要な結果である。

 

【3】子午流注が導く月経周期における薬物服用時間


そこで子午流注による日内リズムに順応させながら月経周期のリズムに対応し月経を調節する薬物を服用するに最も適した時間を検討してみましょう。

“子”の時は夜中で重陰転陽の時間で排卵期に相当する。前述した通り排卵は夜間に起こることが多いため、排卵を促す薬物は夜の前半の時間帯を選ぶべきである。そうすることで重陰転陽の転化運動をうまく導きより高い効果を得ることができる。

“午”の時は正午で重陽転陰の時間で月経期に相当する。前述した通り大多数が昼間に来潮するため、調経の薬物は午前か正午を選ぶと効果的である。

“酉”の時間18~19時は陽から陰に入る時、陰の成長の始まりすなわち卵胞期に相似しており滋陰養血の薬は酉の時18~19時あるいは戌の時20~21時に服用するのがよい。

“卯”の時間6~7時は陰から陽に出る時、陽の成長の始まりすなわち黄体期に相似しており補腎助陽の薬は卯の時の6~7時あるいは辰の時8~9時に服用するのがよい。

この生物時計を研究応用することは必ず薬物の服用時間に注意を払うべきで治療と服薬時間は一定の関係がある。薬物の治療時間を考慮することは、治療効果を上げ、薬物の毒性を減少させることができる。と同時に重要なのは、服薬で特別に卵胞期の滋陰養血薬と排卵期の補腎促排卵湯薬は食後30分に服用、胃腸が弱い場合はさらに注意し空腹時の服用はせず胃腸への影響を避けるように。壁に掛ったパネルには、陽の時間には補陽の薬を服用し、陰の時間には補陰の薬を服用すべし。

月経期の服薬:午前中か正午 と 夕食前
卵胞期の服薬:午後と夜 例えば 昼食後と夕食後
排卵期の服薬:夜と夜中 例えば 夕食後と睡眠時
黄体期の服薬:朝食後 と 昼食後か夕食前


と記載されていました。

現代社会において、日内リズムに従って生活することは難しくさらに周期ごとの服薬時間を変えることもなかなか実行できないことかもしれません。しかし、自然界のリズムに呼応しながらより効果的な治療を進めていく上で、経験と実績のある夏先生の中医学の理論に基づいた方法を取り入れた治療には学ぶべきところ多くあると感じます。


周期療法,自然療法,