少し前ですが日本漢方協会主催の漢方薬局製剤実習に参加し、軟膏製剤の「神仙太乙膏(しんせんたいつこう)」を作ってきました。漢方というとどうしても飲むお薬ばかりが浮かびがちですが、今回作ったような塗り薬の漢方もございます。


塗り薬だと配合される生薬も特別のもののように思われがちですが、実はあらゆる漢方薬によく含まれる生薬ばかりで構成され、それぞれの役割としては皮膚の炎症を取り、膿を出し、肌にうるおいを与えるようなもので構成されています。

当帰…補血調経、活血行気・止痛、潤腸通便

桂皮…温中補陽、散寒止痛、温通経脈

大黄…瀉熱通腸、清熱瀉火・涼血解毒、行瘀破積、清化湿熱

芍薬…清熱涼血、祛瘀止痛、清肝泄火

地黄…清熱滋陰、涼血止血、生津止渇

玄参…滋陰涼血・除煩、滋陰降火・解毒、清熱軟堅、潤腸通便

白芷…散寒解表、祛風止痛、消腫排膿

元々この「神仙太乙膏」は「太平恵民和剤局方」(以下「和剤局方」)というおよそ900年前の中国の処方集に収載された処方です。今でも傷の修復に役立つ漢方として市販もされ、火傷や切り傷などに用いられています。

「和剤局方」には薬の調整法も載っており、「神仙太乙膏」は原料の生薬を春は5日、夏は3日、秋は7日、冬は10日麻油(ゴマ油)に浸すと書かれています。季節によって抽出する時間を変えていたというところは、昔の人の経験と知恵なのでしょうね。

現代で再現するとなると、3日間ゴマ油に浸すなどといったことは効率的ではありません。季節と抽出時間を、ゴマ油を加熱することで置き換えて製造しました。ポイントとして挙げられたのは、ゴマ油を高温で加熱しないこと。油の酸化により生じたトランス脂肪酸は、動脈硬化の原因とよく言われますがアレルギーの原因にもなります。

元々皮膚病に使う漢方薬、作る過程でアレルゲンを作るわけにはいきません。まず、予めすこし粗めに粉々にした原料生薬を、80度に加熱したゴマ油へ。30分間温度に気をつけながらゆっくりとかき混ぜ、その後カスを濾し取ります。

濾した後の抽出した油を再び80度まで加熱し、今度は軟膏の基になるミツロウを溶かし入れます。溶けた後は冷やし固め、最後は軟膏板とヘラでなめらかになるよう練り、容器に詰めて完成です。

初めは香ばしいゴマ油の香りが漂いましたが、次第にいろんな原料生薬の匂いが油のにおいに混ざりややカレーの様なスパイシーな匂いへ。色も食用のゴマ油の色からより濃い色へ変わっていきました。

二度目の加熱後ミツロウを入れて冷やしていくと、それまで透明だった液体が、溶けたロウソクが冷え固まるように徐々に白濁していき、最後はまるで照りの無い栗きんとんの様な状態となりました。これを丁寧にヘラで練るとなめらかで光沢のある軟膏に仕上がるのですが、

時間の関係で少し練っただけの状態でそのまま容器へ詰め完成としました。



今回は普段あまり作らない軟膏を作る機会に恵まれたため、報告を兼ねてご紹介しました。飲み薬同様、塗り薬も今の状態に合ったお薬や使い方などがございます。場合によってはお薬ではなくスキンケア用品で充分に対応できることもございます。もし皮膚トラブルなどでお困りの方はまずはご相談くださいませ。