婦人科の不妊症の検査ではいわゆる問題となりそうな異常は見当たらないのに、なかなか妊娠しない。とは言え、目立った不妊原因が無いがゆえに、なぜ妊娠できないのか、どう対策をしたら良いかわからず余計に不安に陥り、また、次のステップに進むことも悩む…そう言った方は実はとても多いのです。今回はそんな原因不明の不妊に悩んでいた方が、漢方による体質改善で妊娠できた例をご紹介したいと思います。

 

Tさん(女性・32歳)

結婚歴5年。
避妊歴も特に無かったがなかなか自然妊娠には至らず。
生理周期も約30日前後で大きく乱れることは無い。
基礎体温も2相性にはなっている。

3年ほど前に病院を受診し、一通り検査をするが、血液検査・ホルモン値・卵管の通りも異常なし。
約1cmほどの子宮筋腫が見つかるが、妊娠には特に影響は無いサイズ・位置。
旦那さんの精液検査・フーナーテスト異常なし。

半年ほどタイミング療法を経た後、ステップアップし、人工授精も何度か試みるが判定は陰性。

 

いわゆる問題となりそうな所見は見当たらないのに、なかなか妊娠しない。原因不明不妊と言われ、体外受精も提案されたが、そこまで考えるには少し抵抗があり、また、病院に通院すること自体が苦痛に感じてきた事もあり、一度妊娠を考えるのはお休みしようと、病院の通院を止めました。通院を止めて1年ほど経ったところで、知人の紹介で当薬局に来られました。

 

<来店時の体調>


生理周期は30~35日、月経期間7日間。
経血の色は紫暗で、やや粘る。
小さい塊あり。基礎体温は2相性。低温期:36.2°前後。高温期:36.5°前後。
生理痛は鎮痛薬を飲むほどでも無い。
生理前になると下痢。
普段から軟便。
ストレスなどあるとすぐ下痢をする。
冷えるとすぐ水下痢。
冷えがひどく、寒がり。
冬は骨まで冷えると感じることがある。
食欲はあるが食が細い。

胃もたれしやすい。
食べても太れない。
ストレスで食べられなくなる。
仕事でのストレスが多い。
疲労感が常に抜けない。
顔色:蒼白 体型:痩せ型

 

<気になったポイントとお勧めした漢方薬>


病院での血液・ホルモンの検査値や生理周期、基礎体温自体は特に大きな問題は無かったのですが、とにかく胃腸の弱さと冷えが気になりました。胃腸などの消化器官は、中医学的には「脾」と言う臓になりますが、この「脾」は食べたもの・飲んだものを必要な物と不要な物に振り分け、そこから血・肉・エネルギーをつくりだす臓です。そのため、胃腸が弱い方は、摂取した食べ物から充分な栄養素を取り込むことが難しく、まず自分自身の身体も養う事が難しい場合があります。Tさんの場合も、元々食が細い上に、食べても太れないことや、何かあるとすぐ下痢をしてしまうなどの体質から、なかなか自分の身体自体を滋養できていない事が考えられました。

これらの事を踏まえ、漢方薬はまずは胃腸の調子を整えるために、イスクラ健脾散顆粒と補中丸生理や妊娠などを司る腎を助け、身体を温めるために、イスクラ参茸補血丸をお勧めしました。病院での治療は今のところ再開する予定は無いとの事でしたので、まずは漢方薬で体質を整えることをメインとし、タイミングの指導を適宜することにしました。

 

<その後>


◎服用1ヶ月後…初回の来店に比べ、顔色が格段に良くなっていました。初めて来店されたときは青白かった顔色が、血色も良くなっていました。下痢も飲み始めてからはほとんど無かったとのこと。生理前に少し下痢っぽくなったが、いつもよりは軽かったとの事でした。

 

◎服用2ヶ月後…下痢はもうほとんど無いとの事でした。疲れも最近は前ほどではない。冷え感にも改善が見られ、以前のように骨まで冷えていると感じることはほとんど無い。また、食欲も前より出てきて、以前は油モノはあり得なかったけれど、最近は少し食べてみようかなと思うようになってきたし、食べても少しくらいならもたれないとのことでした。

 

◎服用3ヶ月後…小首を傾げて、やや不審そうな表情でご来店。何かあったのかな…?と思い訊ねると、「なんだかどうも妊娠したっぽいんですが…」と!妊娠検査薬では既に陽性が出ており、来店される前に病院にも寄って、「胎嚢も確認できてますよ。5週ですね」と言われてきたそうです。しかし、ご本人はあまりにもすんなり妊娠してしまったため、いまいち実感がわかず半信半疑の様子でした。2週間後には心拍も確認でき、やっと妊娠したんだんだなぁ…と実感しました、とご報告がありました。

 

<まとめ>


Tさんはその後安定期に入るまでは流産予防のために漢方薬の服用を続けていただきました。体調も安定しており、そろそろ臨月を迎えられます。先日来店され、今までの人生で初めて順調に体重も増えてるし、一番体力があるかも!と笑顔で仰っていました。このまま母子共に健康で無事に出産される事を祈っております!Tさんの場合、きちんと胃腸に力をつけ、食べた物から血や肉やエネルギーに変換できるようになりました。まずは自分の体を滋養できるようになったことで、スムーズに妊娠に結びついたのだと思われます。

今までは、自分自身の身体を養う事で精一杯で、なかなか「子供」にまでエネルギーを回せない状態だったのでしょう。Tさんご夫妻は、血液検査や不妊治療のクリニックでの異常所見は夫婦揃って見られませんでした。ある程度のタイミング療法を経ても妊娠に至らない場合は、病院ではやはり人工授精、体外受精と言ったステップアップを進めることが一般的だと思われます。冷えの強さや胃腸の弱さと言うのは、本人が訴えることはあっても、また、お腹を冷やさないように、と忠告する医師はいても、不妊“治療”と言う観点では重点を置かれることが少ないからです。しかし、中医学的に妊娠対策を考える場合は、胃腸の弱さや冷えは大きな問題となります。そのため、胃腸自体を強める・温めると言った漢方薬も多く存在しています。

また、中医学的には、下痢体質の方は、下方向(重力)の力に耐える力が弱いとも考えられるため、流産しやすい体質と考えることもあります。そう言った考え方は、西洋医学の治療では着目することは少ない点の1つでもあります。このケース以外にも、西洋医学的にはあまり着目されないし検査などにもひっかからないけれど、中医学的には重要なポイントとなる点と言うのは多いのです。もちろん、高度医療技術へのステップアップが必要な場合もありますので、一概にどちらが良いと言うものではありません。しかし、どんなに最先端の医療技術をもってしても、まずはそれを受ける自分の身体が整っていなければ、せっかくの治療の効率も下がってしまいます。

 

不妊検査では特に問題が無いと言われ悩んでいる方々には、一度、今の自分やご主人の身体の状態を別の角度からも検討してみる、と言うこともおすすめしたいと思います。