振戦(しんせん)とは、手、足、頭、あるいは体の一部が自分の意志とは関係なく勝手にふるえることを言います。中でも、手のふるえは気にならない程度から、日常生活に支障が出るものまで症状は様々で、成人だけでなく小児にも発症することがあります。振戦は、一般的に精神的緊張により強くなります。

 

振戦の主な原因は?


【西洋医学的な考え方】

西洋医学では、手のふるえの原因として以下が考えられます。

・生理的振戦(精神的緊張、寒さ、物を持ったときなどに起こるふるえ。病気ではない)

・本態性振戦(姿勢時、動作時のふるえ)

・パーキンソン病(安静時のふるえ)

・甲状腺機能亢進症

・アルコール依存症

 

【中医学的な考え方】

中医学では、病変の過程で現れるふるえや痙攣、ひきつり、眩暈など一連の動揺性を示す症状を「肝風(かんぷう)」と呼びます。ふるえの原因となる“風邪(ふうじゃ)”には、「突然発症する、変化が多い、人体の表面・上部を犯しやすい」という特徴があります。また、結果的に自律神経や末梢神経の障害を起すことが多くあります。

手の振戦の原因として

①    内風によるもの(慢性疾患や熱病の経過で人体の機能に障害が生じたために起こる戦線)

②    外風によるもの(外からの風寒・風痰の侵撃による振戦)

③    胃腸虚弱によるもの

④    血の不足によるもの

⑤    その他(小児の手のふるえ、飲酒習慣など)

があります。

 

 

【中医学的な治療法】


①    内風の治療では、風の症状を鎮める(熄風)漢方薬を用いて治療します。肝風内動といって、肝陰肝血が不足し筋や脈へ滋養が行き届かなくなることで筋肉のひきつりやふるえ、痙攣などの症状が現れます。中医学の陰陽の考え方で、肝陰が肝陽を制御できなくなり、肝陽の「昇」と「動」の性質が過剰に働いた結果、筋脈の正常な運動機能を保つことが出来なくなった状態です。治療では、肝陰を補うことでふるえや痙攣を緩和させる杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)や抑肝散(よくかんさん)を使うことがあります。

②    外風の原因である風寒は、寒さや冷えが直接手に侵入して起こります。若い人に起こりやすく、手のふるえ以外に疼痛を伴うこともあります。治療には、体を温め、血を補い、経絡を通す当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)を使うことがあります。外風のもう一方の原因である風痰は、ご高齢の方に起こりやすく、痰が経絡を詰まらせ、経脈が正常な機能を失い手のふるえに痺れや脹った感じを伴うことが多くなります。治療には、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)を使うことがあります。

③    胃腸虚弱(脾虚)が原因でおこる手のふるえは、脾虚風動といいます。中医学では、“脾胃(胃腸)は生痰の源”といい、脾胃が虚弱であると痰を溜めやすく、ふるえなど肝風を引き起こしやすくなります。治療には、胃腸の働きを助ける健胃顆粒(けんいかりゅう)や柔肝・平肝の働きで筋のけいれんを和らげる芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を使うことがあります。

④    血の不足(血虚)が原因でおこる手のふるえは、血虚風動といいます。心肝血虚が原因でおこる手のふるえで、めまいや動悸、不眠など他の症状を伴うこともあります。治療には、養血の働きのある婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)を使うことがあります。

⑤    手のふるえは、成人だけでなく小児にも起こります。小児の場合、驚いたり、恐怖体験をすることが原因で、五臓の腎が損傷し、さらに筋脈と関係する肝に影響を与えます。筋脈の機能失調がおこると手のふるえが起こります。治療には、補腎養肝の働きのある杞菊地黄丸八仙丸(はっせんがん)を使うことがあります。

 

【手のふるえに対する養生法】


1.脂っこい物を避ける

2.規則正しい生活を送る

3.ストレスを解消する

4.タバコ・飲酒は控える

5.塩辛い食べ物を控える

6.血圧をコントロールする

7.常に便通をよくする

 

普段から血圧、血糖が高めの方、不整脈をお持ちの方などで、手のふるえが長期間続いている場合、脳梗塞など危険な病気が隠れていることもあります。また、薬剤性振戦といって服用中のお薬の影響でふるえが起こっていることもあります。このような場合、一度検査されることをお勧めいたします。