抑肝散の原典の『保嬰撮要』(16世紀)は乳幼児に対する治療について記されたもので、乳幼児のひきつけや夜泣き・歯ぎしりなどにつかわれたものでした。また、チック症・てんかん、パーキンソンなどによる痙攣、イライラ・不眠・精神不安等の心因性の疾患にも用いられる応用範囲の広い漢方薬です。現在では、認知症の行動・心理症状の改善やQOL向上のために用いられ、その薬理作用の研究も進んでいます。

Burnout & Stress
Burnout & Stress / Hangout Lifestyle


 

抑肝散は、釣藤鈎・柴胡・川芎・当帰・茯苓・白朮(蒼朮)・甘草(炙甘草)からなる漢方薬で、配合生薬には以下のような働きがあります。

釣藤鈎・・・平肝熄風・止痙―――肝に発生した内風を抑え、痙攣を抑える
 柴 胡・・・疎肝解欝・理気―――肝に発生した熱を冷やし、気を巡らせる
 川 芎・・・疎肝解欝・理気・止痙・止痛・活血―――血の流れを良くする
 当 帰・・・柔肝・補血―――血を補い、流れを良くする
 茯 苓・・・健脾・利水・安神―――胃内の水を除き胃の働きを高め、心の働きを整える
 白 朮・・・健脾・利水―――気を補い脾胃の働きを高める
 炙甘草・・・健脾・調和―――気を補い脾胃の働きを高める

175:366
175:366 / chrisjtse(写真はイメージです)


虚弱な体質で神経が高ぶる者、体力が低下している時に、ストレスなどで肝の働きが悪くなり、胃腸の機能も低下している場合におこる症状・神経症、不眠症、イライラ、小児夜泣きなどに適応となります。

現在では、そのほかにも多様な臨床応用が進んでおり、統合失調症・発達障害・不随意運動などにも用いられています。基礎研究もさかんに行われ、作用機序の明らかになっているものもあります。
また、抗不安薬や向精神薬等を用いた時にみられる、眠気、注意力低下、ぼんやりする等の副作用がみられず、QOLの向上が期待できます。

 

抑肝散は、特に攻撃性、易怒、興奮などに効果的


認知症に伴う不安や焦燥感などの発症には脳内セロトニン神経系が関わっており、不安を誘発するはたらきをもつ5-HT2A受容体と、不安を抑制する働きを持つ5-HT1A受容体のバランスの崩れにより症状が現れると考えられていますが、その両方に働きかけるという漢方ならではの働き方をするようです。

認知症・アルツハイマーの初期症状の物盗られ妄想、攻撃性、不眠などに用いられ、錐体外路症状の副作用もなく、1剤で複数の症状に適応でき、QOL向上を期待できます。

ストレスが多い社会で、精神疾患でお悩みの方の数も増える傾向にあります。また高齢化社会が進み、認知症の人の増加も問題になってきておりますので、抑肝散の有用性が期待できそうです。