イスクラ薬局(東京)

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中薬 徹底解説★ の記事一覧

安心を提供するための 【イスクラの品質管理】のお話

こんにちは。イスクラ薬局六本木店店長、櫻井です。今日も春麗らかな日よりの日。お出かけには最高ですね。昨日もポカポカ陽気が心地よいお天気でしたね。その分花粉が飛んでおります。私の鼻もしばらくは大丈夫だったのですが、ついに昨日、限界を迎えたようで、一日鼻水が止まりませんでした。今日は朝から花粉症対策に普段から愛用している衛益顆粒(えいえきかりゅう)にくわえて、水っぽい鼻水、冷えなどにぴったりの小青竜湯を追加。おかげさまで今のとろこ症状は出ていません。

今日、3月24日は【ホスピタリティ・デー】だそうです。ホスピタリティとは、最近話題の「おもてなし」の事です。マナーというのは、他人を不快にさせない最低限のルールですが、そこに「心」が加わると「おもてなし」、「ホスピタリティ」に変わります。ホスピタリティの語源は、ラテン語の「Hospics」で、「客人等の保護」という意味だそうです。迎え入れる心とでも言いましょうか、心配りの行き届いたもてなしというのがホスピタリティです。
このホスピタリティ、勿論、私どものような、漢方の相談薬局では、必ず持ち合わせていたいものの一つです。お客様は当店などの相談薬局には、つらいことがあったり、つらい症状があったり、何らの「トラブル」を抱えていらっしゃいます。その時、私どもがおもてなしをさせていただく事で、ご来店いただいた時より、少しでも明るく、できれば笑顔になって帰っていただく事ができるように日々、相談に励んでおります。

 

 
漢方薬局に求められる「おもてなし」の一つは、知識の量であると考えます。漢方薬・中医学のプロとして知識の習得は欠かせません。そのためにイスクラ薬局では定期勉強会への参加、国際中医相談員、国際中医薬膳師や不妊カウンセラーなどの資格取得を推し進めています。
漢方相談薬局の様な医療に携わるお仕事の場合、「安全性」も絶対的な基準の一つであり、おもてなしの一面であると考えます。私たちが手にする製剤化された漢方薬のそのほとんどが中国で製造、または原料は中国で栽培され、日本で加工され、製品化されるというものです。昨今の食の安全性の問題などから、中国で製造された原料生薬や、製薬の安全性に不安を感じていらっしゃると言ったお声が良く聞かれます。もちろん、これは、ごもっともなお話です。
なので、今日はイスクラ製品の安全性のお話をしたいと思います。
 

 

イスクラが製造を委託している中国の製薬工場は、すべて日本のGMP基準におてい製造しています。

漢方薬の原料となる生薬は、中国政府が品質の保証と中成薬の標準化・近代化を促進し高品質を保つことを目的とした「中国薬剤生産質量管理規範(GAP)」の認定をうけた、原料を使用し、さらにイスクラの製品になるものには、日本薬局方等の規格確認と残留農薬試験等の品質試験を通過したもののみを使用しています。
日本で販売が許可される医薬品は、すべてGMPという製造管理と品質管理規定に基づいて製造されます。GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略で、薬事法上は厚生労働省令の「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規定」の事を示しています。
GMPでは、
①人為的な誤りを最小限にすること
②医薬品の汚染及び品質低下を防止すること
③高い品質を保証するシステムを設計すること
の3つを原則としています。
GMPの制度は正解保健機構(WHO)が加盟各国へ抵抗を勧告したことにより世界的に広まりました。定められている内容は、製造管理、品質管理、衛生管理等多岐にわたり、製品の安定的製造の為だけでなく、出荷後にも該当製品を検証できるように、各工程での記録の保存や製造ロットごとのサンプル保管が行われます。また日本におけるGMPの認証は、工場単位とか製造ラインごとではなく、製品ごとにGMP適合性調査を受ける必要があります
イスクラ産業が販売する中成薬は、提携する中国の工場で製造され輸入されています。そして日本に輸入された後は、イスクラ漢方センターと商品センターで試験、包装、保管されています。提携工場とイスクラ産業の両センターは、ともに日本のGMP適合性の認証が必要であり、5年後ごとの業態更新の際、GMP適合性も更新調査をうけることになります
提携工場は中国政府によるGMP認定を受けていますが、イスクラ産業向け製品の製造においては、日本のGMP基準による管理を実施しています。このGMP管理、とりわけ品質管理の技術交流を中心に、中国各工場の技術者がイスクラ漢方センターで1年間の研修を行っています。彼らは、中国で製造された製品の輸入後試験を実地研修し、日本のGMP管理全般を学び、帰国後は提携工場におけるGMP管理の徹底を推進しています。また、イスクラ社員も定期的に提携工場に赴き、工場の状況視察を含めて情報交換を行っています。各工場にとってこのようにGMPに関する技術習得は、国内販売、日本以外の国への輸出にあたっても優位となる条件ですので、大変積極的に取り組んでいます。
 

日本に輸入れた中成薬は、すべてイスクラの自社検査部門で規格の確認を行っています。

イスクラを通して販売される漢方薬は、中国提携工場で製造され、陸路と海路を経て日本の港へ向かいます。荷揚げ後、製品はワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)などの関係書類を提出し通関後、当社商品センターへと搬入されます。その後、商品センターに搬入された製品から採取された試験用検体は、当社漢方センターに移され、製品毎の承認書に則った企画試験、微生物限度試験などが行われます。残留農薬試験については、外部検査機関に委託し、内服薬全製品に対し、日本漢方製剤協会自主基準を含む、255種について実施しています。規格試験合格品は、商品センターで包装作業が行われます。漢方センターでは、経時安定性試験のため、製造から最低4年間検体を保存しており、製品出荷後の品質の安定性確認を行っております。
 

 
健康を維持するため、未病を治すため、様々なお悩みを解決するための品質にもし落ち度があれば、私たちは何のために存在するかわかりません。その「品質」とは私たちが取り扱う商品自体の品質はもちろんの事、スタッフの知識や相談の態度、お店の温度や湿度、香りや光や音、清潔さといった環境などすべてをひっくるめた「品質」です。お客様がご来店され、少しでも不快なことがあれば、いつでもスタッフにお申し付けいただくか、当社お客様相談室までご連絡ください。適切にそして、早急に対応させていただくことをお約束します。
イスクラ薬局では、相談してよかったと感じていただけるおもてなしを心がけ、「つらくない、という幸せ」を実感していただくためのお手伝いをさせていただきます。
お気軽にご相談ください。
 
イスクラ薬局六本木店
〒106-0032 東京都港区六本木7-3-12 インターナショナルビル1階
TEL:03-3478-4382
FAX:03-3478-4731
E-mail:roppongi@iskra.co.jp
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜・祝祭日
 
イスクラ薬局中野店
〒164-0001 東京都中野区中野3-34-4
TEL:03-3382-7950
FAX:03-3382-7951
E-mail:nakano@iskra.co.jp
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜・祝祭日
 
イスクラ薬局新宿店 
〒160-0022 新宿区新宿1-9-1 第二タケビル1F
TEL:03-3351-9886
FAX:03-3351-9870
E-mail:pk-kanpo@iskra.co.jp
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜・祝祭日
 
イスクラ薬局日本橋店
〒103-0027 東京都中央区日本橋2-15-3 ヒューリック江戸橋ビル1F
TEL:03-3273-7331
FAX:03-3273-7334
E-mail:nihonbashi@iskra.co.jp
営業時間:10:00~19:00
定休日:土曜・日曜・祝祭日

2014/03/24

葛根湯と頭痛

普段から食養生食養生と口を酸っぱくして言っているのに、朝からマフィンとコーヒーの誘惑にまけてしまい、胃もたれと若干の腹痛を感じている櫻井です。どうもこんにちは。やっぱり食養生、大事ですね!って説得力無いですが、体験したことで自信を持って言えます!    ・・・反省しています。
今日のお話は、先日またツイッター上で、勉強熱心なフォロワーさんから「頭痛に葛根湯が効くのはなぜ?」という簡単そうで、なかなか難解なご質問をいただいたので、今日は葛根湯について、私ももう一度勉強し直しながら、お話させていただきます。

 

葛根湯

葛根湯は、漢方を飲んだことがないという人でも1回は飲んだことがあるぐらい、もっともメジャーな漢方薬ではないでしょうか。落語の枕詞(なんでもかんでも葛根湯を出す藪医者の話)にもなるほど、日本人にはなじみが深い漢方薬ですが、本場中国では同じような症状に対して、麻黄湯や桂枝湯の方が良く使われており、葛根湯の登場機会は日本ほど多くありません。
葛根湯は今からおよそ1800年ほど前に書かれた「傷寒論」という中医学の古典に掲載されている処方です。1800年前と言えば日本はまだ医療どころか文献すらないような卑弥呼の時代です。そのころの医療といえば、もっぱら神頼みだったと思われます。その時代に中国ではすでにある程度体系化されていた「医学」が存在されていることには驚きを隠せません。著者は張仲景(ちょうちゅうけい)。張仲景は、親族の大半を【傷寒】で亡くしたことを嘆き、そんな状況を克服するべく古代から伝わる医術をもとに「傷寒論」を編残したものと言われています。「傷寒」には二つの意味があり、広義では「湿熱を含めた一切の外感熱病」で、狭義では、「風寒の邪の侵入により身体が傷つくもの」で湿熱は含まれません。傷寒は広義の意味では、腸チフスやインフルエンザなどの高熱を伴う感染性の疾患を指します。狭義ではカゼなどがその範疇になります。
 

 

葛根湯の分類

葛根湯は「解表薬」(かいひょうやく・げひょうやく)という種類のお薬です。「解表」には「発表・発汗」という意味があります。なので、解表薬は(ウィルスなどの病原体を)「外(表)に出す」、または、「汗をかかせる」ためのお薬です。「表証」(ひょうしょう)は、感染症の初期に見られる、悪寒・頭痛・身体痛・発熱などの症状がみられる状態を指していて、このような状態に対して、発汗させ熱の放散を強める方法をとることが、症状を緩和させるのに有効だと考えられています。ただ、発汗の程度はそれら症状の状態や体力などに応じて変える必要があるため、様々な解表方法が工夫され、様々な包剤が考え出されてきました。
中医学では、病邪が体の表面の浅い部分(皮膚の少し下ぐらい)を侵す「表証」という状態になると考えていて、その病邪の種類には、風寒、風熱、風湿、燥邪などがありますが、大きく分けると、風寒表証(表寒)と、風熱表証(表熱)の二つになります。
葛根湯は、風寒表証に対して用いられる辛温解表薬で、悪寒・頭痛・身体痛などの寒証の症状がみられる「表寒」に対して使われるお薬です。
 

 

 葛根湯の適応

中医学解説書による、葛根湯の適応を見てみると、「悪寒・無汗・発熱・頭痛・身体痛・咳嗽あるいは呼吸困難・口渇がないなどで、鼻閉、鼻水、ふるえなどに、項背部のこわばりをともなうもの」とあります。葛根湯は、確かに悪寒をともなうカゼの初期に使う薬ですが、上記適応の最後にある「項背部のこわばりをともなうもの」という部分がポイントです。この適応は麻黄湯や桂枝湯などのほかの辛温解表薬にはありません。違いは、「葛根」という生薬の有無です。
 

葛根とは

葛根は、マメ科のクズの塊根を乾燥させたものです。性味は平性で寒熱の偏りがなく、味は甘・辛で、補う力と同時に、発散する力があります。薬理基礎実験では、解熱作用、冠状動脈拡張作用、脳血管拡張作用による脳血流量の増加作用、筋弛緩作用などがあるとされ、臨床的には、首や背中の上の方にこわばり・緊張がある場合や、潤いを補いたい場合、下痢、湿疹が出きらない場合、高血圧、狭心痛や突発性難聴の初期などに使われます。
葛根は、血管を拡張させ、血流を良くして、潤してくれる生薬です。
 
 

痛みと葛根湯

痛みの原因を中医学では、「不通則痛」(通じざれば即ち痛む)と、「不栄則痛」(栄養がいきわたらなければ即ち痛む)という二つに分けています。葛根湯と頭痛や身体痛の関係を考えると、寒さや潤いの消耗などによる血流悪化が原因の、頭痛や肩こり、身体の各部分の痛み(不通則痛)を、麻黄や桂皮、生姜などで温めながら、葛根、白芍、大棗、甘草などで潤いを作り出すことで血流を良くし、痛みを緩和しているのではなかろうかと考えることができます。もっとよく効かせるためには、血流改善薬(活血剤)をプラスすると良いでしょう。

 
葛根湯は肩こりや寝違い、五十肩、神経痛などの痛みはもとより、頭部や顔面の化膿性炎症、皮膚炎、じんましん、乳汁不足、大腸炎とその応用範囲の広さから、様々な症状の改善に使われてきています。どれにもある一定の効果がみられることから、何にたしても葛根湯っというのは藪というわけでもないかもしれません。実際「葛根湯医」という言葉には、なんでもかんでも葛根湯を出す藪医者という意味と、葛根湯にさらに生薬を加えたり、抜いたりした数あるバリエーションを使いこなせる名医という二つの意味があるそうです。今回、葛根湯をもう一度見直してみたことで、また応用範囲がひろがったと感じます。知ってる処方も、もう一度しっかり考え直してみることはとても大切ですね。

2013/11/16

猛毒の『トリカブト』も漢方ではお薬です。

今日、10月23日は、華岡青洲が生まれた日(1760年10月23日)です。華岡青洲と言えば、世界で初めて全身麻酔を使用した外科手術をした人物です。
その麻酔薬とは、草烏頭(そううず・トリカブト)と曼荼羅華の実(まんだらげ・チョウセンアサガオ)を主成分とした6種類(当帰、川芎、白芍、ナンセイシャ)の生薬を混ぜた通仙散(つうせんさん)、別名・麻沸散(まふつさん)という薬です。トリカブトはドクゼリ、ドクウツギと並ぶ、「日本三大有毒植物」すが、いまでもれっきとした「薬」としてつかわれています。華岡青洲はその他、紫雲膏をつくったことでも有名ですね。紫雲膏はこのブログでも前に取り上げています。「傷を残さない傷薬紫雲膏」は、こちらからどうぞ
 


Monkshood – 05 / Kabacchi/ トリカブト 


Angel’s Trumpet / Datura arborea / 木立朝鮮朝顔(キダチチョウセンアサガオ) / TANAKA Juuyoh (田中十洋)

トリカブトは生薬名を附子(ぶし)または烏頭(うず)といい、両方ともトリカブトをさす名前です。附子と烏頭の両者には違いがあり、トリカブト属の植物の母根を「烏頭」とよび、その傍生の子根を「附子」といいます。烏頭には川烏頭(せんうず)と草烏頭(そううず)の2種類があり、川烏頭は主に四川省で栽培されたものを指し、草烏頭は各地の野生品を指していいます。毒性が非常に強く、特に草烏頭はとても慎重に使わなくてはいけないとされています。実際に草烏頭を使った華岡青洲の麻酔薬も、数回にわたる人体実験の間に実母の死、妻の失明という犠牲を払うことになりました。
 

画像:wikipedia 附子

附子は、散寒薬とよばれる、温性・熱性を持つ、冷えや寒気などを伴う、嘔吐、下痢、腹痛などを改善する生薬です。その中でも附子は性質が「大熱」と、とても強い生薬で、すべての臓腑に通じるとされています。飲むとすぐに体が温まり、発汗します。しかし、毒性が強いので、一般には加工(中医学用語では「炮製・ほうせい」といいます)したものを使います。生で使う場合は作用が激烈なので、短期間で使うようにします。炮製したものは、炮附子とよばれ毒性が弱く、身体を温め、冷えを改善し、痛みを治す力を持っています。日本では、高圧加熱によって減毒した「加工附子」が良く使われています。日本で見られる附子が使われている漢方薬は、麻黄附子細辛湯、八味地黄丸、牛車腎気丸などがあります。注意点としては、冷えが強く、むくみがみられるような場合でないと使えません。潤い不足(陰虚内熱)や妊婦には使ってはいけません。
麻黄附子細辛湯は散寒止痛のお薬として、発汗促進・解熱、機能促進、代謝増高、抵抗力増強、鎮痛、血行促進などにつかわれ、利尿によるむくみの改善や痛み止め、咳止め、アレルギー性鼻炎の薬としても使われますが、冷えがベースにあることがこのお薬を選ぶポイントです。カゼやインフルエンザに使う時は、初期で、強い悪寒がして、余り汗をかけない場合に使います。
八味地黄丸と牛車腎気丸は補腎陽のお薬で、身体を温め、冷えを改善し、加齢に伴う足腰の弱り、冷え、痛み、夜間多尿などに使われれます。牛車腎気丸はさらにむくみの改善にも使われます。
 
 
 
初めて附子の原料が、あの有名なトリカブトであると知った時は本当にびっくりしましたが、毒と薬は使う方が勝手に決めているだけのことなので、当然と言えば当然です。前出のチョウセンアサガオの実や根にも、有効成分が多分に含まれており、海外ではシャーマンが行う、呪術的な儀式につかわれるほど強い幻覚作用をもった「毒」ですが、過去には鎮痙薬としても使われてきた経緯から、今でも日本麻酔科学会のシンボルマークとして使われています。現在では麻薬に指定されているアヘンから作られるモルヒネも、今私たちが手にすることができる中で最も強い鎮痛薬ですし、同じくアヘンをもとに作られたコデインも、咳を鎮める薬として市販の咳止め薬に広く入っていますし、覚せい剤の原料のエフェドリン(咳止め)の原料、麻黄(まおう)もれっきとした生薬です。インカ文明の時代には、コカの葉から作られた抽出液で鎮痛・麻酔して、頭蓋骨穿孔手術を行ったと考えらていますが、そのコカから生成されるのは、こちらも麻薬のコカインです。コカインはウィーンの眼科医によって、初めは目の局所麻酔薬として使われていました。さらに20世紀初頭までコカコーラにも入っていましたし、心理学の創設者で医師だったフロイトも、モルヒネの依存症を改善する薬としてコカインを処方していました。毒と考えられているものには、同じく薬効があります。薬効とは「人にとって都合の良い化学物資の影響」のことをさしており、逆に「好ましくない影響」は毒と呼ばれたり、副作用と呼ばれたりしています。今でも様々な毒から薬が造られていますが、華岡青洲の実母の死や妻の失明しかり、多くの犠牲の上にそれらも薬として使えるようになりましたが、薬と毒はやはり紙一重です。十分に注意して使用したいものです。
 
 

2013/10/23

葛根湯・麻黄湯 間違って使ってませんか?

10月に入ると俄然寒さも増して、カゼやインフルエンザの足音が聞こえる季節となってまいりました。咳や喉の痛みのご相談も増えております。
こんにちは、櫻井です。皆様、養生していますか?



いつだったか、そしてどこだったかも忘れてしまいましたが、「麻黄湯でインフルエンザ予防」というのを見かけました(ような気がします)。漢方薬を魔法の薬のように考えてるのかな?と思いましたが、どうもそうではなく、家族にインフルエンザ患者が出たら、ほかの家族がタミフルを感染予防として飲んでおくみたいな発想で、予防薬として麻黄湯を飲んでおくこと、だったようです。しかし、麻黄湯にはそんな力は有りません。ちなみに麻黄湯とは、、、

【麻黄湯】

組成:麻黄、桂枝、杏仁、炙甘草
効能:辛温解表、止咳平喘
適応:表寒・表実
症状:悪寒・無汗・発熱・脈浮を目標
 
「表寒」とは、“感染症の初期にみられる悪寒(あるいは悪風)・頭痛・身体痛、脈浮などの症候をいい、体表血管の収縮・汗腺の閉塞・筋肉の緊張・ふるえなど、一連の体温の放散抑制と熱産生増大の反射によって生じる反応と考えられる”(神戸中医学研究会 中医処方解説)とあり、「表実」とは、感染症の邪気が体表部で体の生気と戦っている状態です。よって、麻黄湯は、汗をかけず、熱が中にこもってしまった状態で、寒気がするものに対し、発汗させ、病邪を汗とともに除去する目的として使われるべき処方です。適切に使うとすぐに発汗して、熱が下がっていきますが、間違って使うと、発汗過多になって症状を悪化させかねません。とくに、老人、子供、病弱状態(気・血・津液が足りない状態)では使ってはいけないとされています。さらに、発熱が有って汗をかいていない状態でも、口渇、熱感、喉の痛みなどがみられる場合は使ってはいけません。一般的に「麻黄(まおう)」という生薬は強い生薬で、扱いが難しい生薬です。
風にあたると寒気を感じるような場合で、少し汗をかいていて、発熱、頭痛、身体痛、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどがある場合は、「桂枝湯(けいしとう)」や麻黄が入っていない葛根湯の「桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)」の方がおすすめできます。

「葛根湯」の使い方

「葛根湯はカゼの初期に!」「ひどくなる前に葛根湯!」というように、カゼの初期=葛根湯と覚えているかたは多いと思いますが、これも半分間違っています。確かに感冒の初期に使うお薬ですが、麻黄湯と同じように、麻黄が含まれているので、汗をかいておらず、寒気がするときに使うというのが原則の薬ですが、項背部のこわばりがある場合、寒気がそれほどひどくない場合は葛根湯の方が適しています。なので、葛根湯の正しい使いかたの目安は「カゼの初期で、汗をかけず、なんとなく寒気がして、頭痛、咳、項背部のこわばりがあるもの」です。汗をかいている、のどの痛みや口の渇き、寒気がなく、熱感がある場合などは葛根湯を使うべきではありません。
それ以外のカゼの初期、熱感は有るがかすかな悪寒、熱感、頭痛、喉の痛み、汗をかいていないもしくは汗ばむ、軽度の口の渇き、咳、目の充血などを伴うカゼには銀翹散(ぎんぎょうさん)、天津感冒片(てんしんかんぼうへん)を使うべきです。
 

 
予防と言う面から考えると、基礎実験で抗ウィルス作用が認められている生薬(板藍根、金銀花など)を使った処方を用いるほうが効果的ですが、その場合も用量・用法などは専門家の判断を必要としますので、必ずご相談の上、ご使用ください。
カゼやインフルエンザなどでも、漢方の処方というのは、その症状、個々の体力や体質に沿って行われるべきで、カゼ・インフルエンザとひとくくりでできるものではありません。ましてや麻黄湯でインフルエンザを予防するというのは、中医学の理論からでは考えることが難しいです。やみくもに使用せず、漢方・中医学の経験のある薬局・薬店でご相談の上、ご使用ください。
 
 
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2013/10/04

『スミ』には止血効果がある。

こんにちは。櫻井です。
伝統とルール、多種多様な人たちが生活する現代での共存というのは難しいものです。
先日、マオリ族の女性が刺青のため大衆浴場に入浴できなかったというニュースがありました。
世界は広く、刺青が伝統的な民族文化として色濃く残こっているところもあり、日本もこれから国際化社会を目指していくには、ルールは変わっていく必要もあるかもしれませんね。刺青がなぜだめか、っというのは簡単には言い切れませんが、刺青=暴力団の時代が確かにあったことは否めません。刺青は江戸時代では、罪人に対して懲罰的な意味で行なわれていました。おでこに肉ならぬ「悪」と書かれたこともあったようで、文字通り悪の証のような物となっていましたが、そこに日本人の几帳面な性格や美的センスが加わり、文化となって華開いたようです。
刺青と医学の間には少なからず縁があり、オーストリアで発見された5300年前の40代の男性ミイラ死体『アイスマン』の体には、鍼灸のツボの部分に相当する部位に刺青があったそうです。その『ツボの刺青』は、アイスマンからだけでなく、シベリアのアルタイ山中パジリク古墳から発見されたミイラ遺体にも見つかったそうです。もしかすると中国発祥とされてきた『ツボ』という概念は、古代の『医療』の常識であったのかもしれませんね。

少々強引ですが、『スミ』と言えば、中医学の生薬でも昔から多用されています。こちらの『スミ』は、墨ではなく、炭のことです。中医学で炭とは、生薬などを黒い炭になるまで炒ったもののことです。炭になった生薬は多くのものに止血の効果があるとされています。民間薬でもハマグリやシジミの貝殻の灰を湿布薬にしたものは外傷の止血に使われていたようです。
なぜ墨に止血の効果があるか中医学的に解説すると、炭の色は黒で黒は五行説では水に属します。そして血の色は赤で赤は五行では火に属します。水は火を消す:抑制する(相克 そうこく)の関係にあることから炭にした生薬には流血を抑制する止血の作用があると考えられたそうです。まぁ、理屈よりも効果が先にあったとは思われますが。
止血をする炭の中でも有名なものに、『血余炭(けつよたん)』もしくは『乱髪霜(らんぱつそう)』という生薬があります。これは人の毛を炭になるまで炒った生薬で、鼻血や月経過多、補陰や利尿に使われています。内服したようですが、湿布のようにして、外傷にも使われていたようです。今でも手には入りますが、さすがに使っているところを見たことは有りません。
 

炭は古代からとても身近な、ありふれた存在だったので、止血や入れ墨に使われていたのかもしれません。古代の文献や記憶は様々な理由でその多くは形をとどめていませんが、もしかしたら今よりも進んだ医療が存在していたのかもしれませんね。時代とともに変わっていくもの、変わらないもの、いろいろありますが、後世からみると本当に大切なものこそが失われてしまうのも、また世の常とも思え、難しいものです。

2013/09/25

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イスクラ薬局の運営会社情報

運営会社 イスクラ産業株式会社(英文会社名:lSKRA INDUSTRY CO., LTD.)
本社所在地 〒103-0027 東京都中央区日本橋一丁目14番2号
設立年月日 1960年3月1日
事業概要 ロシア・CIS諸国・中国との医薬品、医療機器、化学品の輸出入
中成薬(中国漢方製剤)、健康食品、スキンケア製品の製造、販売