新宿店で月1回、お客様とのご相談にあたられている尹先生。
元気で明るく、笑顔が素敵な先生です。
Q.来日するまで、どのようなお仕事をされていましたか?
私は1996年長春中医薬大学を卒業してから、北京にあります中医学でトップの総合病院である、国立中国中医科学院 広安門病院に21年間勤めていました。
循環器内科で外来患者と入院患者の診療を担当していた当時、中西医結合(ちゅうせいいけつごう:中医学と西洋医学の考え方を結合させて病気を治療する方法)で心臓疾患を治療する技術を向上するために、路志正(ろ しせい)国医大師に師事し、2012年に修士号を取得しました。
Q.来日したきっかけは何ですか?
子供の時から、日本がずっと大好きです。知人に紹介されたことがきっかけで、興味と勇気を持って、日本語のレベルがほぼゼロであるにも関わらず、2018年にイスクラ産業株式会社に入社しました。
Q.先生は循環器のご専門ですが、中医学からみた循環器疾患について少し教えて頂けますか?
循環器疾患は幅広く様々な病気が含まれています。多くの場合には、中医学が役に立ちますし、西洋医学と比較して、優位性がある場合もあります。
例えば、先天性心疾患、あるいは、生活習慣病による狭心症などの心疾患の終末期では、心不全に陥りやすくなります。
その場合には、腎臓の機能を最大限に守るようにし、中医学理論の「益気活血(えっきかっけつ:気を補い、血のめぐりを良くすること)、利水(りすい:尿から水を排泄すること)」という治療を通じて、心不全の治療をしていきますと、患者さんの生活の質を明らかに高めることができます。
高血圧や脂質異常症などには、中医学理論の「健脾化痰(けんぴかたん:胃腸の蠕動運動を良くし、余分な水を排泄すること)、活血通絡(かっけつつうらく:血や気の巡りを良くすること)」という治療原則を用います。生活習慣の指導をしながら、脾胃の調節や血流を改善することで、これらの病気のコントロールがしやすくなります。
Q.循環器疾患がある方へのおすすめの養生法は?
人体の気血と脾胃の間には緊密な関係があります。脾胃が順調に運行することは、気血を生じる基礎であります。
脾胃は体の真ん中にあるので、正常であれば、心腎相交(しんじんそうこう:心と腎が相互に作用し、相互に制約しあって、正常な生理活動を維持すること)、肺気と肝気の調和、陰陽のバランスを取ることができます。
気血が正常に運行することは、循環器疾患の方にとって大変重要ですので、循環器疾患の方に対する養生法の最も重要なことは、『脾胃の健康を守ること』です。
おすすめの脾胃の養生法は
●まずは冷たいものや油っぽいものを控えてください。
●次に、ストレスを溜め込まないように、自分の好きな方法でよく発散していきます。
●最後は、脾胃の機能を活発させるよう適当に運動することが大切です。
Q.先生はお料理がお上手ですが、何をよく作られますか?
中国にいた時には、日本の料理や文化が大好きでしたので、日本の太巻き寿司をよく手作りしていました。家族や友達たちに好評です。中国の水餃子も得意です。
Q.日本の好きな場所はありますか?
日本のつけ麺が大好きです。千葉松戸市にある中華蕎麦屋によく食べに行きます。
北海道にあるTOMAMUという星野リゾートが大好きです。三回行ったことがあります。
Q.最後に何か皆さんにメッセージをお願いします。
日本では、脾胃の弱い方がかなり多くいると考えられます。
また、日本人の方は内臓脂肪がつきやすいです。
内臓脂肪は、中医学の理論によると「痰湿(たんしつ:身体にたまったドロドロとした余分な水)」という邪気です。これは中医学基礎理論の「脾虚は痰湿を生じやすい」という観点から説明できます。
つまり、消化管の病気は、心臓や血管の疾患、心の病と並ぶ現代の日本を代表する病気といえます。
私の恩師である路志正先生は、中国でよく「雑病(ざつびょう)の大家(たいか)」、特に「脾胃病の大家」と呼ばれています。
雑病の大家という意味は、様々な病気に対して得意技を持つ巨匠ということです。
より多くの方々に中医学の知恵を伝えるために、恩師から学んだ知識や自分の臨床経験を活かして、皆様と共に、本分を尽くして頑張っていきたいと思います。
先生、本日は貴重なお話をありがとうございました。