先日、大相撲の名古屋場所が終わりました。相撲は今でこそスポーツとして親しまれていますが、起源は古く、 その勝敗によって、 五穀豊穣や天下の事象を占う神事の側面をもっています。

相撲には、いたるところに中国古代哲学の「陰陽説」や「五行説」が用いられ ています。
「陰陽説」とは、全ての事柄は陰と陽からなり、 それらがお互いに影響し合いながら、 調和し合って万物を生成し発展していくという思想です。
「五行説」とは、宇宙の一切の万物は木・火・土・金・水の5つの気( 五行)によってできているという思想です。例えば季節を五行で表すと、春=木・夏=火・長夏=土・秋=金・ 冬=水となり、色では青・赤・黄・白・黒が、 方角では東・南・中央・西・北がこれに相当します。

土俵は四角い形に土が盛られており、その内側が勝負俵で円形になっています。大地を表す四角形は「陰」を表し、円形は「陽」を表しています。これは天は円く、地は方形であるという古代中国の宇宙観を表した形になっています。

行司が握る軍配には、日と月が描かれていることがありますが、日 は「陽」、月は「陰」の象徴で、宇宙の陰陽を表しています。
「ハ ッケヨイ ノコッタ」の掛け声の「ハッケ」は、易の「八卦」のことで、宇宙 の森羅万象、八卦の全てがうまくいきますようにという天下泰平を 祈願した掛け声と言われています。

横綱は、横綱だけが腰に締めることを許されている白麻製の綱をそ の身体に張るように、神を宿す聖なる存在です。四股を踏むという ことは土地の邪気を払い、土地を清める意味を持ちます。

この他にも、陰陽五行説はいたるところに用いられており、調べていくととても面白いです。
同じ陰陽五行説をベースにしている中医学と共通点を感じます。
【参考文献】長田なお「陰陽五行でわかる日本のならわし」 淡交社