夏バテの中医学的な考え方
夏バテは病気ではありませんが、体が重だるく、意欲が湧かず、食欲もなくなり、病気の原因となりやすい状態です。中医学的には、暑さ、湿、気虚 が夏バテの主な原因とされています。
暑さ
夏の暑さにうまく順応できないため、体内の熱バランスが崩れてしまい、体が過熱気味な状態
症状:のどが渇く、暑がり、寝汗をかく、手足がほてる、のぼせやすいなど
湿(体内の余分な水分)
夏の湿気で、体内の水分代謝のバランスを崩してしまい、余分な水分が体内に溜まった状態
症状:体が重だるい、口の中が粘る、便が軟らかい、足が浮腫む、食欲がないなど
気虚(気力の低下や、気力の元となる栄養が取れない状態)
夏の暑さで気を消耗したうえに汗と一緒に漏れ出し、更に気が不足した状態
症状:疲れやすい、やる気が起きない、息切れ、汗が出やすいなど
夏バテに効果的な食材
それぞれの原因に効果のある食材をいくつかご紹介します。
暑さ→ 体を潤し、冷ます役目をする陰の力を補う(補陰)作用のある食材
梨、ぶどう、やまいも、トマト、白きくらげ、黒きくらげ、豚肉、鴨肉、イカ、牡蠣、豆乳
湿(体内の余分な水分)→ 不必要な水分を体外へ排出する(利湿)作用のある食材
はと麦、あずき、緑豆、スイカ、メロン、冬瓜、キュウリ、とうもろこし、白菜
気虚(気力の低下や、気力の元となる栄養が取れない状態)→ エネルギーの元である気を補う(補気)作用のある食材
粟、うるち米、もち米、大麦、やまいも、しいたけ、じゃがいも、なつめ、蜂蜜、豚肉、牛肉
夏バテのための薬膳
夏バテに効果的な食材を取り入れたメニューです。是非一度お試しください!
《冬瓜とスペアリブのスープ・とうもろこしご飯》
①冬瓜とスペアリブのスープ
<材料( 2 、 3 人分)>
・冬瓜 4 分の 1 個
・豚スペアリブ 300g
・塩 スペアリブの重量の 3.5 から 5 %
・トマト 1,2 個
・緑豆春雨 25 から 40g
・生姜 1 かけ
・塩、醤油 適宜
・黒酢、ごま油 適宜
・青味の野菜(青ネギ、パセリ、セロリの葉など) 適宜
<作り方>
1.スペアリブに塩をまぶし、ペーパータオルを敷いたパットに並べ、 1 から 2 日冷蔵庫で寝かせる。
2.たっぷりの湯でスペアリブを湯がき、水でよく洗う。
3.スペアリブと生姜を鍋に入れ、 かぶるぐらいの水を注ぎ、強火にかける。沸騰したらアクを取り除き、弱火で一時間ほど煮る。
4.ワタ除き皮を剥いて一口大に切った冬瓜を加え、更に 20 分ほど煮る。
5.くし形に切ったトマトを加えて更に 10 分ほど煮て、塩で味を調え、春雨を戻さずに加え、柔らかくなるまで 2~3 分煮る。
6.具を器に盛り、好みで黒酢、ごま油などをつけて食べる。スープはこして青味を散らして別に添える。
*冬瓜の皮とワタの部分も一緒に入れて煮ると利尿効果が更にUPする。その際は金属製のざるに皮とワタを入れ、鍋の材料の上に載せて煮込むと後で取り出しやすい。
*スペアリブの塩漬けの他に、ブロックのベーコンを使っても美味しい。その際は表面の茶色の部分を剥ぐと薫製の香りが和らぐ。
*圧力鍋を使用すると、長時間火を使わないので、暑い夏にはお勧め。その際は水の量を 2,3 割減らす。
*スペアリブを煮込んだ時点で、冷まして冷蔵庫に入れておくと、脂肪が表面に白く固まって、取り除きやすくなり、カロリー減できる。
*冬瓜はダイエット効果もあり(中国の薬物書《本草綱目》より)、特に水肥りの人には効果的。
②とうもろこしご飯
<材料( 2 、 3 人分)>
・米・ひき割りはと麦 合わせて 2合
・とうもろこし 1 本(ひげ・実・芯)
・塩 小さじ 1
<作り方>
1.米とはと麦は洗ってざるに上げておく。
2.とうもろこしのひげは、黒いところを除いてみじん切りにする。とうもろこしの実も包丁で削り取り、芯もとっておく
3.炊飯器に材料・調味料全部を入れ、通常の2合より若干多めの水加減で炊く。
*はとむぎは米の1,2割程度が目安、ひきわりなので米と一緒に炊くことができる。
*とうもろこしのひげは生薬名を南蛮毛といい、利尿作用に優れている。みじん切りにして使用すると食感も気にならない。
<食材の効用>
①冬瓜とスペアリブのスープ
冬瓜:体内の余分な熱を冷まし、利尿して、浮腫みを解消する(清熱利水消腫)
豚スペアリブ: 体を潤し、冷ます役目をする陰の力を補う( 滋陰潤燥)、 エネルギーの元である気を高める( 益気)
トマト:唾液の分泌を促進してのどの渇きを解消する(生津止渇)
緑豆春雨:のぼせ、むくみを取る(清熱利水)
②とうもろこしご飯
米:胃腸を丈夫にしてエネルギーの元である気を高める(補中益気)、消化吸収機能を回復(健脾和胃)、ストレスや咽の渇きを解消(除煩渇)
はと麦:利尿して体の余分な水分を排出する(利水滲湿)、胃腸を丈夫にし、下痢を止める(健脾止瀉)
とうもろこし:消化不良や食欲不振を解消する(調中開胃)、利尿(特にひげの部分)
生活上のアドバイス
冷たい飲み物を摂りすぎないように。
冷たいものや水分の摂り過ぎは消化機能の低下を招きます。そして体に余分な水分が溜まり、水分が熱を吸収し、ますます体内に熱がこもって口が渇き、又冷たいものを飲んでしまうという悪循環に陥りがちです。
スタミナ料理を食べ過ぎないように。
体の重だるさは、体内の余分な水分が原因ですが、栄養不足のためと誤解して、肉類や油っこいスタミナ料理を多食してしまうと、胃にもたれて、消化機能の低下を招いてしまいます。