麻の葉の模様について
この模様については江戸時代頃から「虫がつかずに丈夫に生長する」麻にあやかって、丈夫で元気に過ごせるように、という意味がこめられて使われるようになりました。麻は皆さんも御存知のように、全草に麻薬成分が含まれるために現在は許可無く栽培・所持は出来ません。但し、繊維と果実には麻薬成分が含まれていないため所持・使用でき、繊維の名前としてはリネン・ヘンプ・ジュートと呼ばれています。麻の果実は麻子仁(ましにん)と呼ばれ、腸を潤して便秘を改善する生薬として「麻子仁丸」などの便秘薬に使用されています。
Cannabis sativa / M. Martin Vicente
黄色のウコン
ウコンと聞けば、肝臓に良いイメージが有ると思います。
一般的に日本でウコンと呼ばれ、健康増進に使用されるのが「ハルウコン」。染料としてはウコン色のもととなるクルクミンが多く含まれている「アキウコン」を使用します。ハルウコンは中国の植物名では「鬱金」(うこん)と呼び、寒性で、アキウコンは「姜黄」(きょうおう)と呼び、温性です。同じウコンという名でも性質が正反対なので混乱しやすい生薬です。ウコンは鬱金・姜黄ともに気の滞りを解消し、瘀血を改善する薬として使用されます。染料としては、ウコン染めの風呂敷に着物や書物を包んでおくと防虫の効果があり、産着に使用するのは「悪い虫がつかないように」といった意味が込められいるようです。実は沢庵の黄色もウコンで着色されています。更に興味深い事にアキウコン・別名ターメリックはカレーには欠かせないスパイスですが、インドでは古くから魔除けとして使用されていたそうです。この様なところからも赤ちゃんの産着に鬱金を使用したのもうなずけますね。
出典:http://mypaper.pchome.com.tw/fromjack22/post/1321798618
ピンク色のベニバナ
ピンク色は女の赤ちゃんの産着に使用されます。
ピンク色の染料は紅花。その名の通り、お化粧に使用する口紅は紅花を使用してきました。又、神聖な太陽を連想させる「赤」色は日本では古来から魔除けの色とされており、「初宮参り」「七五三」「婚礼」など、女性の人生の節目に着る重要な着物の色として使用されいます。このような意味で、女の子の赤ちゃんの産着に紅花で染められた産着を使用されてきたようです。生薬としては紅花(コウカ)と呼び、温性で、こちらもウコンと同様に瘀血を改善する効能があります。紅花の別名は末摘花(スエツムハナ)。源氏物語で女性の名前に使用されていることからも、女性と紅花、深いつながりがあるのだなあと思います。
水色のアイ
水色は男の赤ちゃんの産着に使用されます。日本で染料として用いられる藍はタデ科のアイ。
「青は藍より出でて藍より青し」、とは弟子が師匠の技量を上回ると言う意味の喩え言葉ですが、男の子に藍を使用するのは、この言葉のように父を超えて立派な人になってほしい、という思いも込められている説もあるようです。又、実用面でも藍染めは防虫効果が大変高いとされています。生薬としては大青葉(ダイセイヨウ)としてアブラナ科のタイセイやタデ科のアイなどの葉、板藍根としてアブラナ科のタイセイの根、青黛(セイタイ)としてマメ科のキアイやタデ科のアイの植物から精製したインジゴを含む粉末として利用します。効能は少しずつ異なるものの、それぞれ熱毒を冷ます薬として使用されています。
出典:Wikipedia
この様に考えてみると、古くから薬として使われていたものを染料として用い、子供の成長を願う意味がそれぞれに込められてきたことがわかります。染物は使う植物が同じでも、使用する媒染でもまた色が異なってきます。その微妙な変化もまた繊細で、大変楽しいものです。自然の近くで暮らし、衣食住のすべてを自分たちで賄っていた昔とは異なり何でも購入して手に入る時代だからこそ、改めてその意味を認識することが重要であるな、と感じたのでした。