落花生(ピーナッツ)は中国語では「花生」「長生果」とも言い、
ゴマや松の実と並ぶ滋養強壮や老化防止には欠かせない食品です。
落花生はナッツ類には珍しく木枝になるのではなく地中を掘って収穫されます。
花が落ちて子房柄が地中にささってその先に実ができるので、「落花生」という名前がついているのです。
薬膳食材としては、肺を潤す効能があるので空咳が出る人や、
豊富な脂質と食物繊維を含むので腸内の潤い不足で便秘する人によく食材です。
「健脾養胃」といって胃腸を丈夫にする働きも期待できます。
豚足と煮たスープは母乳の出を良くしますし、
妊娠中の浮腫には棗やニンニクと煮たスープがよいとされています。
ピーナッツの赤い薄皮は「花生衣」といいます。
現代医学的には抗酸化作用のあるポリフェノールの一種レスベラトロールが含まれるのが有名です。
薬膳的には
「病的な出血を抑制する」
「血行を良くして鬱血を解消する」
「炎症の腫れやむくみを取る」
効能があるので血友病や血小板減少性紫斑病や肝病出血などの治療に応用されています。
薄皮には少々渋みがあるので好き嫌いがありますが、薄皮を捨ててしまうのはもったいないですね。
注意することは?
胃腸を丈夫にする効果がある反面、
食べ過ぎると消化不良になりやすいので注意が必要です。
どの体質の人も毎日少量摂るのがよいでしょう。
腸内を潤すので下痢気味の人は向きません。
揚げて塩味をつけたピーナッツやバターピーナッツは熱がこもりやすいので、
のぼせやすい人は控えめにしてください。
お勧めレシピ
殻ごと炒った落花生、バターピーナッツ、ピーナッツ味噌、
ピーナッツ油など、加工したものは年中出回っていますが、
まだ未熟なうちに収穫した生落花生は9月頃わずかな期間だけ出回る秋の味覚です。
炒ったり揚げたりしたものよりは熱もこもりません。
海水くらいの塩水で殻ごと茹でておいて、
そのままおつまみにしたり殻から出してサラダやスープにしたりといろいろ使い回せます。
今回ご紹介するのはその旬の生落花生と豚足を使ったスープで、母乳の出を良くしてくれます。
中医学では母乳の出が悪いことを「缺乳」「乳汁不足」「乳汁不行」と言い、
母乳が十分に作られない「気血虚弱タイプ」と、
母乳はあるのに出てこない「肝欝気滞タイプ」に分けられるのですが、
生落花生と豚足のスープは気血虚弱タイプの定番薬膳です。
中医学では飲食したものを消化吸収して気血を作り、
その気によって血が変化して母乳になるとされています。
気血が不足すると母乳不足につながります。
母乳の出が悪く、かつ乳房が柔らかく張りや痛みはないなら母乳不足の原因は気血不足の可能性が大。
その場合「疲労倦怠感がある」「風邪を引きやすい」「眠りが浅い」「お肌がかさかさ」「爪が割れやすい」「抜け毛が増えた」などの症状にも複数当てはまるはずです。
豚足はコラーゲンを豊富に含む美容食品ですから、このスープは授乳中のママだけでなく、肌が乾燥しがちな秋にはぷるぷるお肌と粘膜強化や便秘解消を目指す方にもお勧めです。
花生黄豆猪蹄湯(豚足と落花生と大豆のスープ)

【材料】
豚足 加熱済み半割になったもの1本分
生落花生 むきみ120g
水煮大豆 120g
紹興酒 大さじ1
塩 小さじ1(スープ味付け用)
陳皮 0.2gほど
スダチやかぼすの皮 少々
【作り方】
① 生落花生は殻ごと水の中でこすり洗いし、表面の泥やゴミを落とす。
② 鍋に海水より濃いめの塩水(塩は分量外)を沸かし、落花生を殻ごと弱火で40分ほど茹でてそのまま冷ます。
③ 落花生を殻から出して150g分用意する。
④ 豚足は熱湯をかけて表面の脂を落としておく。
⑤ 圧力鍋に豚足と水700ccと塩小さじ1を入れ、蓋をして高圧で10分加熱し自然放置する。
⑥ 圧が抜けたら蓋をあけ、浮いた油をすくい取る。
⑦ 水煮大豆と落花生と陳皮(と葱の青いところ)を加え、味見して塩加減を調整し、圧力蓋は使わずに弱火で更に20分煮て火を止める。
時間短縮のため圧力鍋を使用しましたが、本来は深鍋や土鍋でことこと煮るものです。
陳皮はスープが胃もたれ防止と豚足の匂い消しで入っています。手に入らなければ、葱の青いところを入れて煮たり、盛りつけの際にスダチや柚子皮を細く切って散らしてみてください。
【食材の功能】
豚足…甘、鹹/平/胃経/補血、潤膚、通乳、托瘡
落花生…甘/平/脾、肺経/健脾養胃、潤肺化痰
落花生の薄皮…甘、微苦、渋/平/止血、散瘀、消腫
大豆…甘、平/脾、胃、大腸経/健脾消積、利水消腫
陳皮…辛、苦/温/脾、胃、肺経/理気調中、降逆止嘔、燥湿化痰