食生活の欧米化などにより、生活習慣病が急増していますが、そのひとつとして糖尿病があげられます。これが進行して糖尿病性腎症を発症するケースが増えており(年間発症約1万人)、現在では総数で20万人を超える勢いです。糖尿病性腎症は慢性腎不全の引き金となり、悪化して結果的に透析が必要になると、本人のみならず家族を含めて負担が大きくなってしまいます。
腎不全とは?
腎不全とは、血液をろ過する働きが低下し、老廃物・水分を充分に排泄できなくなってしまう状態(ろ過率が正常の30%以下;血清クレアチニン値3mg/dl以上)を言います。悪化すると尿量が徐々に減少し、最終的に尿が出なくなるので、透析が必要となります。腎不全になると、老廃物である尿毒素が体内に溜まるため、食欲不振・吐き気・体がだるいなどの症状がでます。また、水分が溜まるため、むくみ・動悸・血圧上昇・心臓肥大などが起こります。その他、貧血、カルシウム不足による骨折、ホルモン異常、電解質異常などが起こる場合もあります。
腎不全には大きく分けて急性腎不全と慢性腎不全があります。
急性腎不全では、原因となった別の病気(原疾患)を治療するとともに直ちに透析などの適切な措置をすることにより、多くの場合は回復が期待できます。一方、慢性腎不全は、原疾患による腎臓への影響がゆっくりとしたものであり、年単位の時間をかけて進行します。原疾患としては、慢性糸球体腎炎・糖尿病性腎症・腎硬化症など様々ですが、生活習慣病の急増により糖尿病性腎症による慢性腎不全が年々増加しています。
腎不全の中国医学的考え方
中国医学でいう「腎」というと、腎臓そのもの以外に、生殖成長系(ホルモンや骨を含む)、泌尿水分代謝調節、他の主要臓器の機能向上、呼吸における吸気調節など、様々な役割も含まれています。この中で、「腎不全」
は泌尿水分代謝調節に深く関係があります。特に腎には、「昇清降濁」といって、キレイなものを回収して体内へ戻し、汚いものを体外へ排出する作用がありますが、腎不全ではこの作用がうまく働かなくなると考えます。そこで、「腎機能を低下させず排尿を促進させること」、「全身の新陳代謝をはかり老廃物を蓄積しないようにすること(血液微小循環改善)」、そして「腎臓の働き全体を補うこと」をめざす漢方薬が腎不全に応用されており、自覚症状の軽減や透析治療の頻度減少・導入遅延をねらいます。
(次回は治療の実際について解説します)
腎不全,