喘息・気管支喘息と漢方
喘息とは?
喘息とは、何らかの作用で気管支が急激に収縮して、のどの気道が狭くなるため、呼吸が苦しくなり、呼吸のたびにヒューヒューと音がする喘鳴などが発作的にでる病気です。喘息はアレルギーが関与する病気ではありますが、すべての喘息がアレルギーで起こるわけではありません。
現代医学的には、アレルギー型(アトピー型)と感染型(非アトピー型)、混合型の3つのタイプに分類されます。
どのタイプも空気の通り道である気道に炎症細胞が集まり、気道過敏性亢進や気道平滑筋の収縮にともなう気流制限が生じます。
アレルギー型(アトピー型)の喘息は、吸入アレルゲン(ハウスダスト、ダニ、動物の毛、花粉など)に反応した結果生じる喘息で、発症年齢が小児から思春期に多く、症状は発作型で春・秋などの季節の影響で憎悪しやすいという特徴があります。感染型(非アトピー型)の喘息は、アレルゲンを特定することができない喘息で、成人に多く通年慢性的に感冒・喫煙・天候などに反応し憎悪しやすいという特徴があります。アレルギー型と感染型の両方の特徴を持つのが混合型で、混合型タイプが多数を占めていると言われています。
喘息の発作は、気温が変化する夜中から早朝にかけて起こりやすく、季節の変わり目に多く発症します。夏は、表皮が開いているので、皮膚呼吸や老廃物、水分の代謝はスムーズに行われますが、秋になると、朝晩の冷えで閉じてしまい、その分の負担が気管にかかります。
また乾燥した空気が咽喉の粘膜を傷つけやすいため、咽に炎症を起こしやすく、発作が起こりやすいのです。発作が始まると、胸が詰まって呼吸困難になり、痰がつまるので、横になることができません。痰を吐きだすことができれば、喘息の症状は徐々におさまります。
気管支喘息になる原因は?
呼吸は、吐く気を外向き・上向きに、吸う気を内向き・下向きに流す運動を行う「肺」と吸い込まれた清気を納める「腎」による協調運動です。喘息は、なんらかの原因で、肺と腎の協調運動がスムーズに行われなくなり、呼吸が乱れて息苦しくなる現象と考えます。主な病変は肺に起こりますが、腎も大きく関っていると言えます。
肺にトラブルを引き起こす原因のひとつが「痰」です。痰はからだの新陳代謝が阻害されてできたもので、肺での滞りが喘息の原因になると考えられます。からだの水分代謝は、「肺」と「腎」そして消化吸収を主る臓器である「脾」が互いに協力して行われています。これらの働きが失調すると痰ができ、特に脾の働きが低下すると、痰ができやすくなります。生じた痰がからだに溜まり、肺に上がって喘息症状を起こします。つまり「肺・腎・脾」に問題があると、気管支喘息になりやすいと言うことです。
喘息(気管支喘息):漢方での治療は?
喘息体質を改善する根本治療を基本として、発作期は対症療法を、緩解期には体質改善を行います。
*発作期の漢方
肺の機能を高めて、肺の汚濁を清め、つらい咳を止めます。
黄色い粘り気のある痰が多く出る方のつらい咳には「麻杏止咳錠」などを、体が冷えていて咳があり、
鼻水や透明で水っぽい痰が大量に出る方には、「小青竜湯」や「平喘顆粒」
などで治療します。
*緩解期の漢方
1. 肺気虚タイプ
息切れしやすい・汗をかきやすい・風邪をひきやすい・動くと症状が悪化するなど、慢性疾患などが原因で肺の機能が低下してしまったタイプです。肺の気を補う「補中益気湯」や免疫力を高める「衛益顆粒」などで肺の機能を強化します。
2.腎虚タイプ
慢性病や心身の疲労、虚弱体質が原因で、生命力の根源である腎の機能が低下したタイプで、①腎陽虚と②腎陰虚に分けられます。
① 腎陽虚
足腰がだるい・冷え性・顔面蒼白・うすい痰が多い・夜に発作をおこしやすいなど、体を温める機能が低下したタイプです。「双料参茸丸」や「参馬補腎丸」などで腎を温めるとよいでしょう。
② 腎陰虚
のぼせやすい・手足がほてる・寝汗をかく・足腰がだるい・口が渇く・痰は少ない・舌が赤いなど、体液の不足したタイプです。「八仙丸」や「六味地黄丸」などで肺や腎に潤いを与えるとよいでしょう。
3. 脾気虚タイプ
食欲不振・軟便・疲れやすい・舌がむくんで歯形がついているなど、虚弱体質などが原因で胃腸が弱く、消化吸収や水分代謝が低下しているタイプです。アレルゲンは消化器官からも侵入するので、胃腸機能を高める「星火健胃錠」や水分代謝を促進し、かぜの感染やアレルギーを防衛する作用のある「衛益顆粒」などで胃腸を守るとよいでしょう。
<注意>実際に薬を服用する際は、専門家にご相談してから服用ください。
喘息の予防
発作を起こさないようにするには、まず発作の原因となる「風邪」を予防することです。
うがいや手洗いをする習慣をつけ、外出時には首回りや脚などを冷えから守るように注意しましょう。また、花粉やほこり、ダニなど喘息のアレルゲンは、こまめに掃除してシャットアウトしましょう。適度な運動や乾布摩擦などで、皮膚を鍛え、呼吸器を強くするのも有効です。
食生活では、免疫力を高めるシメジやシイタケなどのキノコ類、胃腸を丈夫にする鶏肉やカボチャ、レンコン、気管を拡張し、肺を潤して強化する山芋や銀杏、ユリ根、梨などの食物を上手に取り入れてふだんから養生することが大切です。
風邪の予防と食生活の改善が、発作の予防につながります。継続して取り組めば、きっと効果があるはずです。
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