基礎体温ってよく耳にする方もいらっしゃると思いますが、なかなか詳しくご存知な方は少ないようです。なので、漢方相談のさいに、私達が日頃どういったふうに基礎体温を見ているかをご説明いたします。
基礎体温をつけよう
基礎体温は一般的に、起床時の安静な状態で測定した体温の事です。起きて直ぐ、まだお布団の中に入ったまま、極力動かずに計る体温なので、お手洗いに行ってから計ったり、朝ごはんを食べてから計ったり、夕方頃に計ってしまったのは正常な値とは言えません。また、基礎体温は連続して6時間以上の睡眠の後のものを記録してください。もし睡眠が少ない場合は体温に影響を与えてしまうため、基礎体温表にそう記録しておいてください。忘れてしまった日はブランクにして、線を引かないようにしましょう。
基礎体温表に記録する内容は、月経周期、月経量、月経時の痛みの有無や、腹痛の有無、不正出血の日数とその状態、オリモノの量の増減(もしあれば臭いや色なども)、性交渉、カゼ、服用中の薬(不妊治療薬を服用している場合は、その種類と服用期間も記入)など。
基礎体温の基本
・基礎体温は、排卵がちゃんとあれば、プロゲステロン(黄体ホルモン)の作用により、黄体期に体温が上昇し、低温相と高温相の二相性を示します。
・低温相は大体36.5℃以下、36.3℃前後で推移し、高温相は36.7℃前後が望ましいです。
・低温相と高温相の差は0.3℃から0.5℃ぐらいが理想的です。
・低温相と高温相は14日間ずつあるのが理想で、排卵は月経初日から数えて14日目前後が理想的です。
・高温期がちゃんとあっても、期間が9日間以下なら無排卵の可能性もあるので、注意が必要です。
・低温相が36.5℃近くまたはそれ以上と高い日が続く場合は、卵巣機能が低下し、良い卵がつくられていない可能性が考えられます。そのほか、内膜症や筋腫、排卵誘発剤の影響でも低温相が高くなることがあります。
・低温相から高温相への移行期は、3日間以内にとどまることが望ましく、段階的に4、5日かかって高温相へ移行する場合は、排卵がスムーズにいっていない可能性が考えられます。
子宝漢方相談で良く見られる基礎体温パターン
①低温期が長い
低温期が長い場合(月経初日から14日以上低温期が続く)は、卵の発育が弱く、良い卵がうまく育っていない可能性があります。中医学的には腎の陽気不足からくる冷えやエネルギーの低下(腎陽虚)、腎の気の不足による疲労感や疲れ(腎気虚)、肝の機能低下による気の巡りの低下、いらいら、抑鬱(肝鬱)、ドロドロとした流れにくい血(瘀血)、排出しきれていない不要な水分(痰湿)などの問題が考えられます。
②高温期が短い
高温期が短い場合(12日以内)は、腎の陽気不足による冷えや疲れ、血の不足、内膜の薄さ、冷え、月経量の減少(血虚)、生体エネルギーの弱さや黄体機能不全、卵巣機能低下(腎精不足)などが原因として考えられる。
③高温期がだけ低い
高温期がだけ低い(36.7℃以下)場合は、卵巣の機能低下、エネルギー低下、冷えや足腰のだるさや痛み(腎陽虚)、臓腑の機能低下や栄養不足(血虚)などが考えられます。
④低温期が短い
低温期が短い(12日以内)の場合は、状況は芳しくないです。良い卵を育てる力が残っていない(腎精不足)、必要な栄養に富んだ潤い(腎陰)が足り無いことや、身体の根本的なエネルギーや生殖にさけるエネルギーが尽き掛けていること(腎精毀損)、血の不足による冷えや臓腑の栄養不足(血虚)、潤いや血の不足からくる総体的な熱(虚熱)
⑤低温期が高い
低温期が高い(36.5℃以上が続く)のは、排卵誘発剤(クロミフェンなど)を使った影響や、内膜症などの炎症や筋腫などの影響によるもの(実熱)、栄養に富んだ潤いの不足(腎陰虚)、血の不足による栄養供給不足(血虚)、潤い不足から来る相対的な熱(虚熱)など。
⑥低温期から高温期への移行が遅い
低温期から高温期への移行が遅い場合は、スムーズに排卵できていない可能性がある。肝の機能低下による気の巡りの低下、血の巡りの悪さ、卵子を排出するエネルギーの不足などが考えられます。その他、卵胞の状態が悪いことも考えられるので、排卵期だけに注力するのではなく、低温相のケアも必要。
⑦基礎体温が全体的に低い
基礎体温が全体的に低いのは、冷え、腎のエネルギー不足、血の不足による栄養供給不足や冷え。
⑧基礎体温が全体的に高い
基礎体温が全体的に高いのは、栄養に富んだ潤いの不足、潤い不足による相対的な熱、余分なものが溜まっている熱など。ストレスによる熱などもある。
⑨基礎体温の変動が激しい
基礎体温の変動が激しい(ギザギザしていて、1日おきに0.3℃前後の変化がある)場合は、いらいら、ストレスなどにより、肝の気を巡らせる機能が低下し、気の巡りが鬱滞した状態。ストレス状態など。高プロラクチンでもなりやすい。
⑩一層性
一層性の体温は、多膿疱性卵巣(もしくは症候群)だったり、無排卵など。どろどろとした血の塊(瘀血)、栄養のある潤いの不足(腎陰虚)、根本的なエネルギーの弱さ(腎精不足)、免疫の問題などが考えられます。
腎と精
中医学での「腎」とは成長、発育、生殖と深く関係している臓器。腎は生命エネルギーである「精」を蓄える場所。「精」とは、身体の根本エネルギーであり、生殖力の源。精は生まれた時に父母から譲り受けるものと、生まれた後に飲食と呼吸から生まれるものとがある。腎の精の不足は生命の力の弱さを示し、生まれながらにして精が弱いものもいれば、生活習慣や食習慣の偏りなどから消耗してしまっているものもあります。腎精は30代前半をピークに徐々に減り始めます。子宝相談では、この腎の精、いわゆるその人の根本的なエネルギーがどれぐらい残っているか、どれぐらい補えるかがとても重要な問題になります。腎と精については、こちら『小児の発育不全と中医学』や、こちら『美しい髪を育てる中医学』もご参照ください。
腎陰虚(栄養に富んだ潤いの不足)は体が細い人が多く、舌は赤くひび割れていることも多い。喉の乾きや目の乾燥、寝汗、ほてりなども見られるが、冷えを訴える場合も大くみられる。
上記のパターンは、わかりやすく特徴を書いたものです。実際には周期ごとに違うパターンがみられたり、複数のパターンが重なりあったりしていることが多くあります。その他の症状と合わせて考える必要がありますので、気になった方は専門家に是非ご相談くださいね。