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【小児の発育不全と中医学】入学式をみて思う。

先日は入学式のだったようですね。緊張した顔、うれしそうな顔、怖がっている顔、いろんな表情の子供たちを見かけました。表情はもちろんみんな背丈もそれぞれ違います。子供の成長はほんとに早いものですが、この「成長」には、中医学では「腎」の強さが関与していると言われています。中医学の「腎」とは、いったいどんなものなのでしょうか。



入学式 / hirota_kenichi


「腎」とは、、、


「腎」とは、生長と発育、生殖を司る臓器で、エネルギーである「精」溜めている生命の泉です。中医学の「腎」とは、西洋医学でいうところの、泌尿器系、生殖器系、ホルモン代謝系、カルシウム代謝系、免疫などに関わる臓器です。また、「腎は精を蔵す」といい、生命エネルギーの源とも考えられています。そして骨や歯の成長、そして脳の機能も、この「精」無くしては正常に行われません。人の成長、発育、そして老化と健康は、腎の精の充実度合いにより決まってくるというのが、中医学の考えです
ちょうど小学校に入学するぐらいの齢、中医学でいえば、女の子は7歳ぐらい、男の子は8歳ぐらいになると、歯が永久歯に生え変わる時期と言われており、ちょうど「腎」が充実し始める時期です。腎は、生長、発育、生殖を司る臓器の一つで、私たちが生きていくための、エネルギーの源でもあります。中医学には、「 腎主骨」(「腎」は骨を司どる)という言葉と、「歯為骨之余」(歯は骨の余りである)という言葉があり、歯は、云わば骨が露出した部分なので、歯を見ることで、骨の状態、しいては腎の状態がうかがい知れるというわけです。
 
 
 

老化と成長と腎の精


人は誰しも平等に齢をとりますが、背が伸びる人伸びない人、歯や骨が強い人弱い人、毛髪が豊かな人薄い人、精力の強い人弱い人など、人それぞれ異なった特徴をもち、その成長や衰退の度合いは様々です。同じ年齢の方でも、腰が曲がっている人やまっすぐな人、髪が真っ白な人とそうでない人もいます。その違いの大きな部分で腎の充実度が関わってきています。腎の充実度とは、生命エネルギーである「精」の充実度です。精がたっぷりとあれば、腰はしっかりしており、髪は豊かで、歯も骨も強く、頭もはっきりして、見た目も若々しく見えます。また「腎は髄を生ず」と言われ、骨髄や脊髄をつくっています。髄は精からつくられており、それが集まったものが骨となります。また脳は「髄海(ずいかい)」と呼ばれ、腎が精に満たされ、ちゃんと機能していることが記憶や思考などの脳の機能を維持するためにも重要です。
 
前回の「美しい髪の毛を育てる中医学」でもお話しましたが、腎の精には、父母からもらった「先天の精」に加えて、飲食と呼吸から生まれまた「後天の精」があります。精は7~8歳ぐらいから徐々に充実し始め、20代後半から30代にピークを迎えて、30歳を過ぎたあたりから減り始めて、身体的にも徐々に衰えを感じるようになると考えられています。この生命エネルギーが衰えた状態を「腎虚(じんきょ)」と言います。腎虚とは要するに老化のことです。老化は誰にも等しく訪れるものですが、腎の精の充実度により、腎が衰えるスピード、老化のスピードには個人差が出てきます。40代を過ぎてからの腎の衰えは誰しもが感じられることですが、40代手前や、子供の腎の衰え(腎虚)は、生命エネルギーの不足を意味しており、対策が必要です。



龍山寺老人 / SUNG HSUAN WANG



腎の弱さを補う補腎薬


腎を補う漢方薬に「補腎薬(ほじんやく)」というものがあります。補腎とは、腎を補うということ。補腎薬はそのための薬です。腎を補うには、腎の陰と陽を補う方法があります。陰と陽は上記の精をもとにつくられます。陰と陽の基本的な働きとは、「陽は温煦を主り、陰は涼潤を主る。」なので、冷えを感じるような場合は、陽を補い、乾燥やほてりを感じる場合は、陰を補うというのが腎を補う場合の基本です。陰と陽の説明は余りにも長くなるので簡単に説明すると、陰と陽とは、人体の生理機能環境を整え維持するものです。陽気は主にエネルギーで「動かす」もの「変化をもたらす」もの、そして温かいものです。陰は「形ある」もので、栄養に富んだ潤いや水分、血などを指し、冷たいものです。


P1090197 / andieyywong


 

冷えを伴う腎陽の不足には「八味地黄丸」


代表的な補腎薬に、「八味地黄丸」という処方があります。別名「腎気丸」または「金匱腎気丸(きんきじんきがん)」と呼ばれる有名なお薬です。これは、腰やひざのだるさ、耳鳴り、めまい、健忘など腎の衰えの症状に、手足の冷え、寒がり、むくみ夜間多尿などの陽気の不足がみられる場合に使われるお薬です。生薬の構成内容を見てみると、地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂枝、附子から成り立ち、滋陰、補血の地黄、補益肝腎の山茱萸補気健脾の茯苓の「三補」と、それに対し「三瀉」の清肝火、清熱涼血の牡丹皮、瀉腎火、清熱利水の沢瀉、利水滲湿の茯苓でバランスをとっています。補とは補うという意味で、瀉とは、余ったもの、不必要なものをとり去るという意味です。附子と桂枝は全身の機能を活発にし温めるために入れられた生薬で、全体を見ると、腎陽を助け、冷えからくる様々な症状を改善するお薬といえ、主に大人や高齢者にみられる冷えを伴う様々な症状の改善に使われています。
 

小児の発育不全を改善する「六味地黄丸」


腎陽の不足を改善する八味地黄丸に対して、腎の陰の不足の改善を主眼に置いた「六味地黄丸」という処方があります。これは上記の八味丸から桂枝と附子を抜いた処方で地黄、山茱萸、山薬の三補と、沢瀉、牡丹皮、茯苓の三瀉から成り立っています。生薬が8つではなく、6つなので六味地黄丸です。さらに「六」には「陰」や「水(腎と置き換えられる)」という意味があり、その名前が付けられたと言われています。
中医学では小さな子供は「純陽」と言って陽の塊だと考えられており、子供の陽気を強めることは、熱性の副作用が出やすくなってしまうと考えられています。子供の腎を補う場合は、腎の陰をもって補う必要があり、補陽の生薬である附子と桂枝は邪魔になったので、それらを抜いた六味地黄丸がつくられました。
六味地黄丸は元々、小児の先天的な虚弱体質や発育不良を改善する処方です。歯がなかなか生えない時や生えてもぐらぐらしている、骨の弱りのクル病や足腰が弱いなどや精神発達の遅延などを改善するために使われています。六味地黄丸は腎の陰を補いますが、根本的には、腎の精を補う漢方です。
 
六味地黄丸は長期に使われると内分泌系を調節する作用もあるため、六味地黄丸をベースにした杞菊地黄丸や麦味地黄丸、知柏地黄丸などの補陰の処方は子宝相談の時に多く使われています。その他、その陰(栄養に富んだ潤い)を補う作用を持って、大人のほてり、眼精疲労、耳鳴り、めまい、口や喉の乾燥やそれに伴う咳などにも、腎の弱りを改善する薬として幅広く使われています。


Cuties / travel oriented


中医学では、人は生まれてくるときに腎の中に、一生分の生命力の可能性を宿して生まれてくると考えており(先天の精)、もし腎の精が不足して生まれてきたら、長生きできないと考えていました。1400年ほど前に書かれた小児科の専門書、『小児薬証直訣』には、腎虚の人は64歳以上生きることが出来ず、不摂生をしたらさらに寿命は短くなると書かれています。六味地黄丸はその不足を補うことで、一般的に近づけようとした処方です。今ではそこから派生した包剤もたくさんあり、さらに細かに症状や体質に適応できるようになっています。
発育不全がみられる腎が弱い子供には、腎を補い、発育、発達を促す。それがしいては、大人になったのちの健康の維持や、寿命を延ばすことにもつながると中医学では考えています。
もし病気がちな子、生長の発育が芳しくない子、骨や関節が弱い子、小さいころからでも出来ることは有ります。今後の心配事を抱える前に、一度、漢方薬局で相談してみてくださいね。
 

2014/04/09

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