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Blog 六本木店

猛毒の『トリカブト』も漢方ではお薬です。


今日、10月23日は、華岡青洲が生まれた日(1760年10月23日)です。華岡青洲と言えば、世界で初めて全身麻酔を使用した外科手術をした人物です。

その麻酔薬とは、草烏頭(そううず・トリカブト)と曼荼羅華の実(まんだらげ・チョウセンアサガオ)を主成分とした6種類(当帰、川芎、白芍、ナンセイシャ)の生薬を混ぜた通仙散(つうせんさん)、別名・麻沸散(まふつさん)という薬です。トリカブトはドクゼリ、ドクウツギと並ぶ、「日本三大有毒植物」すが、いまでもれっきとした「薬」としてつかわれています。華岡青洲はその他、紫雲膏をつくったことでも有名ですね。紫雲膏はこのブログでも前に取り上げています。「傷を残さない傷薬紫雲膏」は、こちらからどうぞ

 


Monkshood - 05 / Kabacchi/ トリカブト 



Angel's Trumpet / Datura arborea / 木立朝鮮朝顔(キダチチョウセンアサガオ) / TANAKA Juuyoh (田中十洋)


トリカブトは生薬名を附子(ぶし)または烏頭(うず)といい、両方ともトリカブトをさす名前です。附子と烏頭の両者には違いがあり、トリカブト属の植物の母根を「烏頭」とよび、その傍生の子根を「附子」といいます。烏頭には川烏頭(せんうず)と草烏頭(そううず)の2種類があり、川烏頭は主に四川省で栽培されたものを指し、草烏頭は各地の野生品を指していいます。毒性が非常に強く、特に草烏頭はとても慎重に使わなくてはいけないとされています。実際に草烏頭を使った華岡青洲の麻酔薬も、数回にわたる人体実験の間に実母の死、妻の失明という犠牲を払うことになりました。

 


画像:wikipedia 附子


附子は、散寒薬とよばれる、温性・熱性を持つ、冷えや寒気などを伴う、嘔吐、下痢、腹痛などを改善する生薬です。その中でも附子は性質が「大熱」と、とても強い生薬で、すべての臓腑に通じるとされています。飲むとすぐに体が温まり、発汗します。しかし、毒性が強いので、一般には加工(中医学用語では「炮製・ほうせい」といいます)したものを使います。生で使う場合は作用が激烈なので、短期間で使うようにします。炮製したものは、炮附子とよばれ毒性が弱く、身体を温め、冷えを改善し、痛みを治す力を持っています。日本では、高圧加熱によって減毒した「加工附子」が良く使われています。日本で見られる附子が使われている漢方薬は、麻黄附子細辛湯、八味地黄丸、牛車腎気丸などがあります。注意点としては、冷えが強く、むくみがみられるような場合でないと使えません。潤い不足(陰虚内熱)や妊婦には使ってはいけません。

麻黄附子細辛湯は散寒止痛のお薬として、発汗促進・解熱、機能促進、代謝増高、抵抗力増強、鎮痛、血行促進などにつかわれ、利尿によるむくみの改善や痛み止め、咳止め、アレルギー性鼻炎の薬としても使われますが、冷えがベースにあることがこのお薬を選ぶポイントです。カゼやインフルエンザに使う時は、初期で、強い悪寒がして、余り汗をかけない場合に使います。

八味地黄丸と牛車腎気丸は補腎陽のお薬で、身体を温め、冷えを改善し、加齢に伴う足腰の弱り、冷え、痛み、夜間多尿などに使われれます。牛車腎気丸はさらにむくみの改善にも使われます。

 

 

 

初めて附子の原料が、あの有名なトリカブトであると知った時は本当にびっくりしましたが、毒と薬は使う方が勝手に決めているだけのことなので、当然と言えば当然です。前出のチョウセンアサガオの実や根にも、有効成分が多分に含まれており、海外ではシャーマンが行う、呪術的な儀式につかわれるほど強い幻覚作用をもった「毒」ですが、過去には鎮痙薬としても使われてきた経緯から、今でも日本麻酔科学会のシンボルマークとして使われています。現在では麻薬に指定されているアヘンから作られるモルヒネも、今私たちが手にすることができる中で最も強い鎮痛薬ですし、同じくアヘンをもとに作られたコデインも、咳を鎮める薬として市販の咳止め薬に広く入っていますし、覚せい剤の原料のエフェドリン(咳止め)の原料、麻黄(まおう)もれっきとした生薬です。インカ文明の時代には、コカの葉から作られた抽出液で鎮痛・麻酔して、頭蓋骨穿孔手術を行ったと考えらていますが、そのコカから生成されるのは、こちらも麻薬のコカインです。コカインはウィーンの眼科医によって、初めは目の局所麻酔薬として使われていました。さらに20世紀初頭までコカコーラにも入っていましたし、心理学の創設者で医師だったフロイトも、モルヒネの依存症を改善する薬としてコカインを処方していました。毒と考えられているものには、同じく薬効があります。薬効とは「人にとって都合の良い化学物資の影響」のことをさしており、逆に「好ましくない影響」は毒と呼ばれたり、副作用と呼ばれたりしています。今でも様々な毒から薬が造られていますが、華岡青洲の実母の死や妻の失明しかり、多くの犠牲の上にそれらも薬として使えるようになりましたが、薬と毒はやはり紙一重です。十分に注意して使用したいものです。

 

 2013/10/23

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