新年あけてからのご相談内容で一番多いのは、1位はやっぱりカゼにまつわるご相談です。咳や鼻水、妊娠中に飲めるかぜ薬など様々な症状でご相談にいらっしゃいます。その次は、冷え。これは冬の間ずっとある相談ですが、寒い今年はいつもにも増して多いような気がします。その次は、胃腸のトラブル。年末年始で食べ過ぎ、飲みすぎが重なったせいか、食欲がない、胃もたれ、胃痛、便秘、下痢など様々な問題を抱えてご相談にいらっしゃいます。新年会もある事ですし、胃腸の養生しっかりしておきたいですね。今から胃腸の調子を整えておくことは、春の花粉症予防にもつながりますよ!
食のトラブル
食欲がない、食が細い、疲れやすい、そんなご相談はこの時期とても多いです。体も寒さに耐えるために食べようとしますし、じめっとした湿気もなく、本来冬は比較的食欲が増加する傾向にある季節なもに、どうも食べられない。高齢者の方にもこうした方は数多くいらっしゃいます。食は健康の基本なので、しっかり食べて元気を養い、健やかに毎日を過ごしたいものです。
【医食同源】という言葉は良く耳にしますが、これは中医学の【薬食同源】から発想を得て、近年に日本で作られた造語です。【薬食同源】とは、「日々の食事こそ良薬」という意味です。食材にはそれぞれに味*(酸・苦・甘・辛・鹹)と性質*(温・熱・寒・涼・平)があり、それが身体に作用して自然と調子を整えてくれます。そのため、しっかりと食事をとることが出来れば、健やかな体を作ることが出来きるはずなんですが、胃腸の調子をおかしくして、食欲もなく、食べてもしっかり消化できていなければ、体力は低下し、臓腑もきちんと仕事が出来なくなります。その結果は、様々な症状となって出てくるようになります。
* 味と性質はこちらをご参考ください→【元気に食べるための脾胃と食のお話】
「脾胃」を養う
口から入ってきた食べ物はいったん「胃」に受け止められます。そこで小さく「消化」され、吸収のために「脾」へと運ばれます。吸収された栄養素や潤いは、肺に運ばれた後、全身へと送り出されていきます。脾胃の機能が低下するとこうした栄養や潤いの輸送も低下し、疲れや体の各部の機能低下、乾燥、免疫力の低下なども出てくるようになり、カゼをひきやすくなったり、疲れやすくなったり、髪や肌や粘膜が乾燥するようになってしまいます。
脾胃は温かく、乾燥した状態を好む臓腑です。冷蔵庫から出したばかりの飲み物やアイスクリームなど、日ごろから冷たいものをとる習慣がある方は要注意です。レストラン等で出される氷が入ったお水なども、できれば避けてほしいものです。
脾胃の養生のポイント
なるべく温かいものをとるようにし、水分を摂りすぎないことです。辛いもの・脂っぽい食事は控えることが良いでしょう。葉野菜を中心に、加熱してたくさん食べることをお勧めします。ストレスは、こまめに発散する方が良いでしょ。偏食はやめましょう。魚も肉も野菜もバランスよく食べることが大切です。家族や友人と一緒に、楽しみながら食事をする工夫をしてみてください。便秘は脾胃を健康に保つための最大の敵です。とにかく脾胃を健康にするためには便秘は禁物。もし便秘薬を飲まないと出ない状態なら、脾胃はかなり疲弊してしまっています。食生活を根本的に見直し、カタカナ食(パン、コーヒー、パスタ)を避けて、和食を中心に、野菜をたっぷり食べてください。なるべく身体を動かし、運動をして、食欲を増進するようにしましょう。運動をする時間をつくれなくても、階段を使う、一駅歩くなど普段の生活に運動を取り入れてください。
食べ方のポイントとしては、
暖食:温かく、消化に良いものを食べる
淡食:塩分を控えめに薄味で食べる
暢食:食事は楽しく、気持ち良く食べる
専食:食事に専念する。ながら食べをやめる
少食:腹八分目の量を食べる
慢食:食事はゆっくり時間をかけて食べる
潔食:新鮮で清潔な食材を選ぶ、食べる
を意識してくださいね。
その他、味(五味)・性質(五性)を考え、季節や体調に合わせた食べ物をそれぞれバランス良く食べることも大切です。そのへんは前回のブログにまとめてありますので、こちらのリンク→元気に食べるための脾胃と食のお話 をご参考下さい。
「おひたし」はかさばってしまう葉物野菜を沢山食べられ、調理も湯がくだけなのでおすすめです。写真は「春菊のおひたし」です。枝の太い部分を先に10秒ほど熱湯につけてから、葉の部分もさっと湯がいて、冷水でしめてから水けを絞り、出汁をかけて、たっぷりの鰹節と柚子を散らしてお召し上がりください。柚子の香りと春菊の香りが気の巡りを改善し、胃腸を動かし食欲をださせてくれますよ。すっごく簡単ですっごくおいしいです。
中医学が考える食の基本は「脾胃」という臓腑です。脾胃とは、消化器系全般の働きを指しており、胃は飲食の受け皿として主に消化を担当し、脾は栄養や水分を吸収して体各部に送る役割をしています。暴飲暴食やストレス、睡眠不足、加齢などによって、脾胃のこうした機能が低下すると、食欲不振や下痢・軟便、疲れ、胃もたれなど様々な症状になって出てきます。
食べるものがなかった大昔ならいざ知らず、「食」があふれかえっている現代では「飽食」にこそ注意を向ける必要があります。食べ過ぎは脾胃に負担をかけ、機能を低下させます。そして偏食や不摂生にも勿論気をつけなくてはいけません。ファストフード、お菓子、炭酸飲料、脂肪分や味付けの濃い食事、冷凍・加工食品などなど、脾胃の力を奪ってしまう「食」は私たちの周りにあふれかえっています。
元気で充実した毎日を送るためにも、おいしく楽しく食べるためにも、脾胃を養い、健やかに保ちましょう。