初夏は立夏5月6日から梅雨入りまでの期間ですが、爽やかな気持ちの良い日が少なく、だんだん雨が多くなる時期でもあり、この期間に咲く花は雨の憂鬱な気分を癒やしてくれます。その一つに、白い愛らしい花が咲く、くちなしがあります。布地のフエルトのような花びに、優しさや心地よさを感じます。また、西洋名はGadenia(ガーデニア)と言い、花びらが甘く華やかな香りを放ち、アロマとしても知られています。日本では、昔から黄色い染料として使用されています。皆さんには、お漬物の沢庵の色というと、なじみがあるかと思われます。
くちなしは、果実の時期が長く、最終的に12月頃には、オレンジ色、朱色まで、白いお花とは想像もつかない色に変わります。その果実は、山梔子という生薬名がついています。炎症を取る働きや、気持ちがいらいらした時の内側の熱をとる働きがあり、聞き覚えのある辛夷清肺湯や加味逍遙散などにも入っています。梔という字は、染める木の實(実)という意味からできあがっており(解字)、この一字で“くちなし”と訓読みします。果実は、時期が過ぎても表面が開いたりしないことから、“口無し”という名前の由来があります。
このことに関連して、小話があります。
花が名乗るという有名な花屋さんがあり、来店したお客さんが“君は?”と聞くと、お花は“桔梗です”、 “君は?”“あじさいです”、“君は?”“バラです”、“君は?”“・・・・・”、花屋の亭主が“あ、その花は口無しです”。
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