前回、中医学の特徴である“整体観念”についてお話しました。整体観念とは、あらゆるものはひとつに統一され、互いに関連しているという考え方で、人体内部の統一性と、人体と自然界の相互関係のふたつがありました。
今回は、中医学におけるもう一つの根幹である、“弁証論治”についてお話します。
弁証論治とは、「証を弁別して証にあった治療をおこなう」ということです。証とは病因の分類のことで、①何によって、②どの部分の、③なにが、④どうなって発病したのか、を示しています。
この時期まだカゼが流行っていますね。寒い日に薄着で出歩くと悪寒・発熱・頭痛があらわれます。病名は「カゼ(感冒)」となり、症状は「悪寒・発熱・頭痛」です。この場合の証は、①寒邪を受けることにより②体表に③冷えが④停滞して発病した、「外感表寒証(がいかんひょうかんしょう)」と分類します。治療には、体表の冷えを取り除く「辛温解表(しんおんげひょう)」の薬物を用い、葛根湯などを使います。
いっぽう同じカゼでも、悪寒が無くて熱感が強く出ていたり、喉に炎症が起きて腫れたり痛む場合は、体表に熱がある外感表熱証(がいかんひょうねつしょう)と分類します。治療は体表の熱を取り除く辛涼解表(しんりょうげひょう)となり、涼解楽などを使用します。このケースで温性の葛根湯を使うと、喉の炎症が悪化する可能性があります。よく「カゼには葛根湯」とか、「葛根湯は効かない」といった声が聞こえますが、多くの場合、使い方(使うタイミング)が間違っているのです。ところで、冷えて血行不良による頭痛・肩こりはカゼではありませんが、証は同じ外感表寒証なので、葛根湯を使うと良くなります。
このように、同じような病気であっても異なる漢方薬を使うことや、異なる病気に同じ漢方薬を使うことがあり、前者を「同病異治(どうびょういち)」、後者を「異病同治(いびょうどうち)」といいます。
弁証には何種類もの方法があり、ここで細部までお話することはできませんが、私たちの漢方相談では症状や体質についてさまざまな観点から分析しています。前述したように、ひとつの病名に対してひとつの漢方薬が結びついているわけではありませんし、限られた種類の漢方薬でいくつもの症状や体質が改善するよう最大限の効果を得られるように組み立てています。
前回と今回で、中医学の2つの大きな特徴についてお話しました。中医学が「バランス医学」「オーダーメイド医学」といわれる所以を少しでもみなさまにお届けできたなら幸いです。
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知ってみよう!中医学~弁証論治~/重原淳一
2024/02/19