Hydrangea after rain / Takashi(aes256)
″冷たいもの″が体調を崩す
中医学では胃腸を「脾胃」といいますが、この脾胃が冷えてしまうと、本来持っている食べたものを必要なものとそうでないものに分けて、しっかり排泄する機能や、食べたものからエネルギーやエネルギーを運ぶ血、そして潤いを作り出す機能が低下してしまうので、中医学では冷たいものを摂りすぎてはいけないと注意を促しています。。
脾胃の機能が低下してしまうと、不要な水などが体内に溜まってしまいます。さらにエネルギーや血、潤いの不足もおこり、身体が正常に働かなくなってきます。そうすると、重だるさを感じたり、疲れが抜けなくなったり、気が滅入ったり、冷えやすくなったり、頭痛や腰痛、むくみや気分の落ち込み、めまいなどがでやすくなります。それが続いてしまいそのまま秋や冬に突入すると、今度は寒さや乾燥にやられ、さらに体調を崩してしまいます。なので、脾胃が元気をなくすような冷たいものは控えるようにした方がよいことになります。
暑い時期はどうしても冷たいものを摂ることが増えます。さらに現代では、買い物に行っても、仕事に行っても、移動中でも、どこへ行っても冷房がガンガンに効いています。外からも中からも体は常に冷やされ、そのせいで脾胃の状態が悪化し、体調不良が続くことにもなります。
夏こそ「温かいもの」を
中医学の古典、『黄帝内経』には、養生の基本として「春夏補陽」という言葉があります。これは、「春夏こそ陽気を補う」という意味です。しかし、春や夏は陽気が高まり暑くなる季節です。そんなときさらに陽気を補うのと身体はどんどん暑くなってほてりや熱症状が出たり、熱がこもったりしてしまいそうですが、実はそうではなさそうです。
この『春夏補陽』という考えは、とても実践的な教えで、夏は暑く、必然的に冷たいものを飲食することが増えてお腹の陽気が傷つけられるから、しっかりと陽を補うことが大切なのだっと言っているのです。夏が旬のものには、身体の余分な熱をとる「涼性」や「寒性」のものがたくさんあります。しかし、そればかりを食べていると、冷えすぎてしまうことも考えられます。さらに現代では、冷たい飲み物や食べ物はいたるところにあり、それらを口にする機会もとても多いです。そんな中、体内の陰陽のバランスをとり、ちょうど暑くもなく、寒くもない状態に保つために、陽を補うもことも忘れてはいけません。
前振りがながくなってしまいましたが、そんな夏に旬を迎えてしっかりと陽を補ってくれる「にんにく」のお話をしたいと思います。
ニンニクは古代から知られた強壮剤
ニンニクの原産地は中央アジアと言われていますが、正確なところはわかっていないようです。ニンニクは、紀元前1500年以前に書かかれた現存する最古の医学書『エーベルス・パピルス(The Papyrus Evers)』ですでに、疲労、衰弱、手足のふるえを伴う神経系疾患、 月経不順や心臓・循環系の疾患などに効くとして、ニンニクを含む沢山の処方が紹介されている程栄養満点の食材です。日本にやってきたのは8世紀ごろ、飛鳥時代後期に中国を経由して伝わったと言われています。
Garlic on old breadboard... / nessguide
ニンニクは身体を元気にしてくれる
ニンニクには、疲労回復を助けて、新陳代謝を活発にしてくれる「スコルジニン」や、ビタミンB1の吸収を高めたり、強い殺菌力をもつ「アリシン」と言う成分が含まれていますので、疲れやすく、食中毒の危険が高い夏場には最適な食材です。
スコルジニンは新陳代謝を活発にしてくれるので、一緒に食べた食材の栄養吸収も助けてくれる働きもあります。また、ニンニクのあの独特の香りは、硫化アリルの一種、「アリシン」によるものですが、この香り成分には、強い殺菌力と体内でビタミンB1の吸収を助ける力があります。ビタミンB1は糖質からのエネルギー生みだしたり、皮膚や粘膜の健康な状態維持するのを助ける働きをし、脳神経系を正常な働きを維持してくれます。アリシンは、動脈硬化を抑制する働き、脂肪の塊を縮小させる、カゼや気管支炎の原因になる連鎖球菌やブドウ状球菌などを殺すなど、強い殺菌・抗菌力があります。また、胃潰瘍の原因となるピロリ菌や、食中毒の原因のO-157菌にもこの殺菌力は有効だそうです。
このアリシンは食用油にとけると「アホエン」という何とも間抜けな名前の物質が生まれるのですが、このアホエンには高い抗酸化力があり、血栓を予防・改善する効果や、抗がんの効果などがあることがわかっています。ニンニクを良く食べるのニンニクの生産地では、胃がんの発生率が低いそうです。これはアリシンのピロリ菌への殺菌作用やアホエンの抗がん作用によるものと考えられています。
また美肌効果も高く、ビタミンB1の粘膜の健康維持のほか、ニンニクの有効成分が皮膚の内部に適度な脂分を溜め、水分と脂分を良いバランスでとどめて小じわやたるみを目立たないようにしてくれるようです。
このような効果は、生で食べた場合に一番強い力を発揮します。風邪の初期で寒気がするような場合に生のニンニクの1片を摩り下ろして食べると、さっと汗がでてスッキリします。加熱すると効果は少し落ちますが、匂いが和らぐので食べやすくなるはずです。
しかしニンニクは強い効果を持つ一方、食べ過ぎると胃が荒れて気持ち悪くなったり、血圧が上昇して目が充血したり、肝機能障害を引き起こす危険もあるので、生なら一日に1片程度、加熱したものでも2~3片程度にしましょう。また、ニンニクの健康効果は一度食べると2~3日は持続するようですので、毎日食べなる必要はなく、1週間に1~2回で十分です。
中医学から見たニンニク
ニンニクは漢字で「大蒜」と書きます。生薬では、同じ字を書いて「大蒜(たいさん)」と読みます。性味は、温性で、辛味。昇らせ散らせる性質を持つとされています。中医学的薬効では、寒気を伴うカゼの予防や治療、胃を温め、食べ物のつまりを取り除いたり、下痢を止めて寄生虫を退治したり、咳を止めて、腫れや痛みを取り除く効果があるとされています。
夏場冷たいものを摂りすぎて、脾胃の陽気が低下し、どうにも体に余分な湿が溜まってしまってむくむ、体がだるい、お腹が冷えてうまく働かない、下痢や軟便が続いている。そんなときにはこのニンニクの胃腸を温め、発汗を即して余分な水分を発散してくれる働きはとてもありがたいものです。
上にも書いたように、食べ過ぎると胃腸を痛めるので、胃腸機能が弱っている方は加熱して少量から食べるようにしてください。また、温性で身体を温める力があるため、アトピー性皮膚炎や、ニキビ、高血圧の方は食べ過ぎないようにしましょう。
ニンニクの臭いには、、
ニンニクの臭いが手について取れないときは、酢を入れた水につけると良いそうですよ。後、ステンレスにも匂いがうつるそうなので、手を洗った後濡れたままステンレスシンクを触るのもいいかもしれませんね。
ニンニクの臭いを消してくれるのに有効なのは、緑茶や紅茶、烏龍茶などが良いそうですよ。
暑い夏こそ陽気を補う
夏は暑いのでどうしても冷たいものを摂りすぎてしまったり、冷房の効いた室内に多くいることが増えるため、陽を補い、体を中から温めておくことが大切です。そうすることで、胃腸は元気に働けてエネルギーを造り出してくれるので、夏バテ予防にもなります。そして秋冬の冷えや体力低下で体調を崩してくれるのも防いでくれます。先々に起こりうる変化を予想して先手先手で対策していく中医学の「未病先防」の教えを実践して、健康に過ごしましょう。