最近中国においても月経不順や不妊症の原因が多のう胞性卵巣症候群(PCOS)であることが多く20~30代の女性によく見られるとのことでした。PCOSの原因は不明でまだ根治する方法は確立されていないようです。ここでPCOSについて簡単に復習してみましょう。PCOSとは卵巣に排卵できずにいる卵胞がたくさんある状態で、排卵障害、月経不順などの原因になります。

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この病態の内分泌的な特徴として

  1. インシュリン抵抗性
  2. アンドロゲン(男性ホルモン)高値
  3. プロラクチン高値
  4. 黄体形成ホルモン(LH)高値

があげられ、肥満、多毛、ニキビの症状がみられます。

 

 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病因を中医学的に考える


中医学では多のう胞性卵巣の病名はなく“月経失調”“不妊症”などに相似した臨床表現になります。では、このPCOSの病態のメカニズムを中医学ではどのようにとらえるか?中医学の専門用語がたくさん出てきますが ご容赦の程を。

根底にあるのが 腎陰虚 天癸(女性ホルモン)不足 陰虚及陽→陽虚長期にわたって陰虚が続くと陽虚をまねき、腎陽の気化力が落ちることで 痰湿がたまる。一方、腎陽虚は「肝脾」の働きを助けられずさらに普段から偏食があると脾胃の運化を低下させより痰湿が溜まりやすい状態へ。(肥満、ニキビ、排卵できず溜まっている卵胞)

気の巡りを司る肝の疎泄機能が低下(肝気鬱滞)さらに常にストレスがかかっているとこの状態は進行しこの気滞から
血流も滞りもっと痰湿が凝集していく。(卵巣の膜が硬くなりより排卵しにくい状態へ)

また、陰虚プラス肝気鬱滞が続くと熱が生じる。(出血が止まらない、周期が短くなる、ニキビ、多毛など)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病因はとても複雑ですが、五臓の中では主に「腎、脾、肝」が関与し 病理産物として「痰湿、お血、うつ熱」があります。よってPCOSと診断されていても個々に状態が違うため 中医学的な弁証論治が重要となります。


多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を中医学的解釈すると…


夏桂成先生は多嚢胞性卵巣症候群の治療の重点は 卵胞期と排卵期。つまりいかに質の良い卵胞を育てちゃんと排卵させられるか!ということです。

1.卵胞期の治療ポイントと方薬

① 血中養陰
癸水(女性ホルモン)は全て血中にあるということから養血することで陰(癸水)が養われる 「女子以血為主」

② 心腎合治
腎陰を成長させるにはまず心の安定が必要 「静能生水」

③ 兼化痰脂
痰湿を取り除く(特に肥満の場合)

④ 重在奠基
基本づくり重点をおく。基本は卵胞が育つ時にみられる錦絲状(粘りが強く糸ひくような)のオリモノがあるかどうか?

〈代表的な方剤〉帰芍地黄湯合越鞠丸

炒当帰 白芍 熟地 ・・・ 養血
准山薬 山茱萸 熟地 ・・ 滋陰
蓮子心 合歓皮 茯苓神・・ 寧心
制蒼朮 制香附 六一散・・ 消脂 (六一散:滑石 炙甘草)

 

2.排卵期の治療ポイントと方薬


錦絲状のオリモノが少し増えてきたら排卵期に入ったと考える

① 陰陽并治
「陰」は保ちつつ排卵させるための動力となる「陽」を補う
陰陽の運動をいかに活発にさせるかが大切

② 降昇偏昇
「降」=「陰」「昇」=「陽」・・・動態的変化
排卵には、陰が十分に蓄えられた後に「昇」が必要

③ 微調血気
排卵の時は気血の変化が激しいのでその流れを整える

④ 重在調心
排卵させるためには心(脳)を安定させ整えることに重点をおく

〈代表的な方剤〉補天種玉丹

白芍 准山薬 山茱萸 別甲・・・血中滋陰
川断 菟絲子 杜仲 鹿角片・・・補腎助陽
丹参 赤芍 五霊脂 荊芥 ・・・活血助陽

また寧心安神のため 柏子仁 黄連 蓮子心 など加える

 

日常生活の注意点


「腎陰」を養うのに必要なのは陰の時間帯である夜にしっかり睡眠をとることです。帰宅時間が遅くいつの間にか深夜になっている、精神的に不安定で眠りたいのに眠れない状態もあるかもしれませんが、夜の12時までには活動せずにベッドに入ってゆったりと気持ちを落ち着けましょう。

また痰湿をためない努力は必要です。飲食の偏りはありませんか?炭水化物、甘いもの、脂っこいもの、アルコールなど痰湿をためやすいです。もし運動不足であれば無理のないところで取り入れましょう。運動はストレス発散になり気血の巡りがアップしPCOSの原因のひとつ痰湿を除いていくよい方法です。睡眠・食事・運動はこの多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に限ったことではなく心身を健康な状態を保つ基本的なことですね。いま一度ご自身の生活を見直してみませんか?


PCOS,PCO,