まずは「気」について
車はガソリンがないと走ることはできず、テレビは電気がないとつきませんね。私達はごはんを食べなければ生きていけませんが、ごはんを食べようと思えることも、パクパク食べることも、食べたものから体に必要な栄養分を取り込むことも、何もかもすべてエネルギーがなくてはおこなえません。東洋医学ではこのエネルギーを「気(き)」という言葉で表します。生きていることそのものが「気」があってこそ可能といえます。
気が充満している人は元気いっぱいで疲れ知らず。気が不足している人は内臓がうまく働けず、徐々に体の不調が現れます。この「気が不足」している状態を「 気虚(ききょ) 」といいます。
【気虚の症状】
疲れやすい
だるい
体力がない
動くとすぐ息切れがする
風邪を引きやすい
冷えやすい
食欲不振
胃もたれ
軟便
下痢
肌がたるむ
筋力がない など
舌の状態-全体的に淡い色で、舌の縁に歯のあとがつく
上記の項目に 2 つ以上当てはまれば「気虚体質」といえるでしょう。一般的に、あまり元気があるほうではなく、性格も控えめで、疲れたり環境の変化ですぐに体調を崩すタイプです。日本人は元々この気虚タイプが多いと言われています。それに加えて食生活の不摂生や 過労、睡眠不足やダイエットによって気はますます消耗し、元々は健康だったのに、昔ほどやる気が起こらない、だるいなど、どんどん気虚体質の方が増えている傾向にあります。
気虚はただ元気がなく疲れやすいというだけではなく、免疫力が低下しやすく病気になりやすい状態であるため生活の改善や食事、漢方などを用いて気を補っていく必要があります。
【やってはいけないこと】
◯ 食事制限によるダイエット
気は主に食事から作られます。バランスの良い食事が第一条件。無茶なダイエットで食事の量を減らしたり、単品ダイエットなどは栄養不足になり、気虚が進みます。そうなると代謝が低下し、太りやすい体になっていくわけですね。悪循環から抜け出したければバランスのよい食事を摂りましょう。山芋は代表的な補気食材のひとつです。漢方では山薬(さんやく)という生薬名でさまざまな方剤の構成生薬となっています。こういった補気食材をとりいれると良いでしょう。
◯ 激しい運動
激しすぎる運動は体力を消耗し、気虚が進行してしまいます。気虚タイプの方は適度な運動や、体操、ストレッチ程度の運動のほうが向いています。呼吸法を取り入れた気功や太極拳、ヨガは気を養うことができるのでお勧めです。じんわり汗ばむ程度にとどめ、汗が流れ落ちるほどの運動は控えましょう。大量の汗とともに、気も流れ出てしまうからです。
◯ 睡眠不足
気虚タイプだけに限ったことではありませんが、睡眠時間の不足や遅い就寝は気虚を悪化させます。
23時に就寝することを目標にしましょう。もっと早い時間であればなお良いです。
【気虚体質を改善する食養生】
◯ 体を温める性質の食べ物を摂ろう!生食は控え火を通そう。
気虚の方はほとんどが冷え性。体を温め消化機能を高める性質の食べ物をとるようにしましょう。胃腸を冷やすような冷たい飲食物や、お刺身などの生もの、生野菜は控え、えび、にら、たまねぎ、羊肉、にんにく、生姜、シナモンなど体を温める食材を摂るよう心がけましょう。
・穀類、根菜類、豆類、キノコ類などは気を補い免疫力を高める働きがあるので毎日の食事に取り入れて!
・よく噛んで、腹八分目を心がけて!
早食いや食べすぎは消化がうまくいかず、胃腸機能の低下をまねき、気虚を悪化させます。「一口食べては箸を置く」癖をつけると、
無意識に噛むようになり、食べ過ぎ防止になります。
【気虚体質を改善する漢方薬】
◯ 玉屏風散-風邪をひきやすい、疲れやすい方。免疫力を高めるためアレルギー体質にも。
◯ 生脈散-人参、五味子、麦門冬が疲労、倦怠感を素早く改善。
◯ 香砂六君子湯-胃腸が弱く下痢をしやすい、舌に白い苔がついている方。
◯ 補中益気湯-胃腸が弱く、疲れやすい、特に胃下垂気味の方。
ご自身に合った漢方薬を選ぶために、専門家にご相談することをオススメします。