まずはもう一度、「気」についての復習を‥
中医学でいう「気」を簡単に言えば、「体を動かすエネルギー」。パワーの源です。この「気」には様々な働きがあります。
◯ 推動(すいどう)作用‥気血を押し出す、臓腑の生理機能を推し進める、生命活動を推進する働き
◯ 温煦(おんく)作用‥体を温め、生理機能を活発にする働き
◯ 防衛(ぼうえい)作用‥病気を引き起こす原因となる邪気から体を守る働き
◯ 固摂(こせつ)作用‥正気が体から外へ漏れ出ないようにする働き
◯ 気化(きか)作用‥新陳代謝、あるものを別のものに変化させる働き(例:気を血に作り変える)
◯ 営養(えいよう)作用‥血を作る材料となり、全身を営養する働き
「気滞(きたい)」とは‥
以上のように人間の体にとって非常に重要な働きを担う「気」ですが、いくら豊富に存在しても上手く体中に行き渡らなければ効果を発揮できません。例えば川の水も、岩やゴミなどの障害物があると、スムーズな流れにはならず、よどみが出来て水も濁ってきますよね。人間の体にも同じようなことが言えるのです。そしてこの状態こそ「気滞(きたい)」と呼ばれる症状なのです。
「気滞」とは「気」が滞り、流れが悪い状態を指します。上記のように様々な役割を持つ「気」の巡りが悪くなれば、当然のごとく様々な症状が現れます。主な症状は張りと痛み。以下に代表的な症状を記しましたので、チェックしてみましょう。
・ 患部(特に胸や脇、腹部)の張り
・ ノドのつまり
・ ガスが多くたまる
・ イライラなど情緒不安定
・ ストレスに弱い
・ 女性は生理前の体調不良
上記症状を西洋医学的にいえば、自律神経の失調とも云えるでしょう。
現代の生活とストレスは切っても切れない関係にあります。ストレスのかかった緊張状態が長く続くと「肝」という臓器がダメージを受けてしまうのですが、「気滞」はこの「肝」の機能と深く関係しているのです。よって「肝」の状態を良くすることが「気滞」の改善につながるといえます。
【生活上の注意点】
・ 疲れない程度の運動を心がけましょう
運動は、気の巡りを改善します。とはいえ、イヤイヤやっていては、かえって悪影響をもたらします。出来たら自分の好きなスポーツを見つけるといいですね。最初はストレッチなどでから初めてもいいですが、みんなで楽しくワイワイするような競技が一番お勧めです。
・ 趣味を持ちましょう
リラックスできる時間を毎日少しずつでも持ちましょう。音楽を聞いたり映画鑑賞でゆっくりとした時間を過ごすことにより、気はスムーズに流れるようになります。自分の好きなことを楽しみましょう。
【気滞体質を改善する食養生】
・香りの良い食材を取りましょう!
良い香りをかぐとリラックスすることは皆さん実感されているとおり。中医学でも香りの強い食材は「気滞」改善効果、すなわちリラックス効果があるとされるのです。セロリやシソ、春菊などが代表的な食材です。
・ 「肝」を強くする食材もお勧め
「肝」と「気滞」が密接に結びついていることは先ほどご説明したとおり。「肝」を強くすることが体質改善につながります。そのためにはレバーやほうれん草、枸杞の実、なつめなどの食材がお勧めです。
【気滞体質を改善する漢方薬や健康食品】
・ 逍遥散(しょうようさん)‥広く使われている漢方薬である加味逍遙散はこのお薬の類似処方です。「気滞」に対する最も一般的なお薬です。
・ 開気丸(かいきがん)‥主に腹部の気滞症状を取るためのお薬です。腹部膨満感がある時などに用います。
・ 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)‥ノドから胃までの胸部につまり感がある時に使われます。
・ シベリア人参‥精神的に不安定で、特に寝つきが悪かったり睡眠の質が悪い場合に使われる健康食品です。
その他にも気滞症状に使われる漢方薬はたくさんありますので、実際に服用される時には専門家に相談されると良いでしょう。気滞の改善は生活の質を向上させます。日本人は他国と比べ、気滞体質の方が多いようにも思います。陽気に明るく過ごすためにも是非ご紹介した養生法を実践してみてくださいね!