イスクラ薬局(東京)

ブログ日記 | イスクラ薬局 六本木店BLOG

ブログ日記BLOG

血瘀、痰湿、気滞、理気??難しい中医学用語を読み解くヒント

こんばんは。店長の櫻井です。
気虚痰湿血瘀???これらは中医学の専門用語ですが、なかなか難解ですよね。私も中医学を始めた時は、意味の解らない外国語にしか見えず、まったくもってちんぷんかんぷんでした。けれども、コツさえつかめば何となく想像でき、実はそれほど難しくないんです。今日はそんな中医学用語を、一般的に良く見られる体質タイプとその治療法から説明していきたいと思います。

 


 
代表的な体質タイプ
 足りない「虚」タイプ
気虚タイプ
エネルギー不足。私たちが生きていくうえで必要なエネルギーのことを中医学では「気」といいます。気が足りなと疲労感、倦怠感、免疫力低下、食欲不振、胃もたれ、下痢、軟便、そして冷えなどの症状がみられるようになります。花粉症やアレルギー症状なども気の不足が関わっていることが多くあります。
 
血虚タイプ
血の不足。血には身体を潤し栄養を与え、温めるという力があります。また、精神の安定にも影響しています。不足することで、めまいや立ちくらみ、乾燥やかゆみ、白髪や抜け毛、生理不順、不妊症、目の疲れ、手足のしびれ、不眠、不安、息切れ、不整脈などがみられることがあります。
 
陰虚タイプ
潤い(陰)不足。体内の水分である「陰」(いん)が不足しているタイプ。乾燥を感じたり、口が乾いたり、喉が乾いたり、微熱やほてり、のぼせといった熱がこもった症状を感じやすくなったり、めまい、耳鳴り、寝汗、生理不順などがみられることもあります。更年期では陰が不足しやすく乾燥しやすい傾向にあり、めまいやほてり、のぼせ、寝汗などが出やすくなります。
 

 


 
巡りが悪い「滞り」タイプ
気滞タイプ
「気」の巡りが悪くなっているタイプ。気は体内を絶えず流れている状態が正常で、流れが滞り、詰まってしまうと、痛みを感じたり、張った感じがしたりするようになります。気は自律神経に影響を及ぼすので、イライラしやすかったり、不安を感じたり、憂鬱、落ち込みなど気滞タイプは精神的に不安定になります。胃やお腹、わき腹などが張り、なでたり、マッサージすると気持ち良い、ガスやげっぷが多い、高血圧、生理不順、月経前症候群(PMS)がひどいなども見られます。
 
血瘀(けつお)タイプ
「血」の巡りが悪いタイプ。冷えや飲食の偏り、ストレスなど様々な理由により、血がドロドロとした流れにくくなる状態です。流れにくくなった血を「瘀血」(おけつ)と言います。血瘀は状態で、瘀血は流れにくくなった「血」そのものです。血も気と同じで絶えず体内を流れているのが正しい状態です。滞ってしまうと、皮膚や関節、身体の末端などに栄養が運ばれず、新陳代謝が低下してしまいます。新陳代謝とは、細胞の入れ替わりのこと。古い細胞を新しい細胞に変えていくそのサイクルが低下してしまうことになり、シミやそばかすが増えるなどがみられることがあります。その他、顔、歯ぐき、唇の色が暗くなる、クマも血瘀の特徴です。肩こりや関節痛、頭痛、子宮内膜症、子宮筋腫、生理痛が重くレバー状の塊がまじることもあります。
 
痰湿タイプ
余分な水分や老廃物「痰湿」(たんしつ)が溜まっている状態。ニキビや吹き出物、痰、オリモノの増加がみられます。肥満・水太り、むくみ、めまい、だるさ、吐き気、高脂血症、糖尿病などがみられ、熱がこもる熱タイプと、冷えやすい寒タイプがあります。
 


Herbs / romainguy


 
治療法の解説
足りないものを補う「補法」(ほほう)「補気」「補血」「補陰」
気虚タイプですが、虚というのは「足りない状態」ですので、「気虚」は「気が不足した状態」です。これを改善するには、「気」を補う、「補気」(ほき)という方法をとります。その他の代表的な「補」の方法に、「補腎」(ほじん)が有ります。「補腎」腎を補うという意味で、弱った腎を強化するという意味です。その他「補」が付く言葉には、補気、補血、補陽、補陰などがありますが、どれも足りなくなった状態(「虚」きょ)を改善するという意味です。補腎と関連がある言葉で大切なのは、「補陽」(ほよう)「補陰」(ほいん)があります。「補陽」とは、「陽虚」(ようきょ)という冷えの状態を改善する方法です。寒がりで手足が冷たい、下半身が冷えるなどは陽虚の症状です。補陽とは温めることと言えます。もう一方の補陰は、潤い不足の「陰虚」を改善する方法です。
 
血虚タイプを見てみましょう。血虚は「血」の不足ですので、「血」を補う「補血」(ほけつ)で対処します。足りない血を補うのは、血の原料を重点的に補う方法と、血の原料を補いつつ、血の製造工場である脾胃の機能を同時に改善する方法などで選ぶ包剤も変わってきます。それはその人がどういった症状を訴えているかによります。胃腸のトラブル、胃もたれ、下痢、軟便などを訴えていれば、補血にくわえて血を作る脾胃(消化器系)を元気にする、胃腸回復薬が入ったものを選びます。そういった症状が見当たらず、便秘や肌の乾燥など、血虚の症状がおもに見られるようであれば、補血を中心とした処方を選択します。補血はその他、「養血」(ようけつ)と言うこともあります。
 
陰虚タイプに対する治療法は「補陰」(ほいん)です。組織液、関節液、粘膜を潤す液体、汗など体内に存在するすべての潤いや水分を中医学では「陰」(いん)と呼びます陰虚は陰が不足する体内の乾燥状態なので、これを改善するには「補陰」(ほいん)といって陰を補う方法をとります。補陰はその他、「滋陰」(じいん)という言い方をすることもあります。
 


drugstore prescription / jimmiehomeschoolmom


 
「滞り」を改善する「理気」「活血」法
気滞タイプに対する対処法、「理気」(りき)についてから始めましょう。「理気」とは、気を滞りなく流す、気を正常に巡らせて機能を回復させるという意味の治療方法です。気を巡らせる方法は「理気」の他、「行気」(こうき)や「疏肝」(そかん)という方法がありますが、基本的には同じ意味です。行気はその字の通り、気を行かせる方法で、疏肝は肝の疏泄(そせつ)を改善するという意味です。「疏泄」とは、精神機能や臓腑活動を統括する気の巡りを調節する肝の機能の一つです。疏肝とは肝の疏泄機能を改善し、精神機能や臓腑活動をのびのびと円滑にするという意味です。それらは気の巡りが滞っているとうまくいかないので、気を巡らせることが、肝の疏泄機能を改善することになり、疏肝=気の巡りを改善するとなります。
 
血瘀(けつお)タイプは、「血」の巡りが悪い状態なので血流を改善する方法、「活血」(かっけつ)で治療します。活とは、「活発」という言葉や、「活き活きと」という言葉からもわかるように、元気に動かすという意味です。「活血」は「血」を動かすという意味ですが、「活」は「血」だけに使われる用語で、「気」を巡らせる(動かす)場合は「理気」または「行気」といって、「活気」とは言いません。活血が使われる代表的な言葉に「活血化瘀」(かっけつかお)というのがあります。これは瘀血(おけつ)ドロドロとした血の塊や流れの悪い状態を改善するという意味です。化という字には変化させる、無くすという意味がありますので、化瘀は瘀血をなくすという意味です。
 
痰湿タイプは、痰や余分な水分、不要物である痰湿が排泄されず滞った状態なので、痰湿を排泄するまたは無くす、作らせないという治療方法がとられます。それを「化痰」(かたん)と言います。「化」とは、上でも説明しましたが無くすという意味で、「化痰」(かたん)は痰をなくす、痰を除くという意味です。喉に溜まる痰を見える痰、「有形の痰」といいますが、これをなくすのも化痰で、めまいや精神症状など見えない痰、「無形の痰」が原因の症状を改善させるためにも化痰という言葉は使われます。化痰方法は塊をなくすという方法や、胃腸機能や腎機能を改善し、痰を発生しにくくして、さらに排泄しやすくる方法などの複合的な方法がとられます。「湿」(しつ)は痰よりもう少しさらっとした薄い水分のイメージです。これらは水分の過剰や停滞状態なので、これらをなくす、「除湿」(じょしつ)や「化湿」(かしつ)といった方法で対処します。
 


Hu Qing Yu Tang / faungg's photo



その他、脾胃(胃腸系)を健康にする「健脾」(けんぴ)や、胃の機能を整えて落ち着かせ、ゆったりさせる「和胃」(わい)や、本来は落ちていかないといけないものが逆流している状態と考える「吐き気」を改善する「降逆」(こうぎゃく) 、めまいやふらつき、出ては消える湿疹やかゆみなど「風」(ふう)を消す「消風」(しょうふう)や「熄風」(そくふう)、 体表にとどまっている邪気を発汗や汗ばむことで追い出す「解表」(げひょう)、寒さを散らす「散寒」(さんかん)、頭に火が昇るようにカーッとなってイライラや目が血走っている状態を改善する「瀉火」(しゃか)、身体に熱がこもってしまっている状態を改善する「清熱」(せいねつ)、食べ過ぎや胃腸機能低下による食の停滞である「食積」(しょくせき)や「食滞」(しょくたい)を改善する「消食」(しょうしょく)、便通を良くする「通便」(つうべん)など、漢字の意味を考えていくと何となく見えてくることがたくさんあります。




Chinese Medicine / howie221


中医学の治療では、症状の原因が実(多い)のか、虚(足りない)なのかを見極め、余分なものをとり去る「瀉法」(しゃほう)か足りないものを補う「補法」(ほほう)を治療方針の原則として見極めることはとても重要です。その症状は気・血・津液やその他が多いから起こっているのか、少ないからなのかを見極めるのは、とてもとても大切なことです。人の体調や症状というものは、虚か実か、常にどちらか一つになるのではなく、この部分は虚でこの部分は実というように、補いながら瀉していかないといけないという場合もあります。その辺りの見極めは知識と経験がものをいう微妙なさじ加減です。でもこのさじ加減一つで結果が大きく変わってきます。
どうでしょう。何となく難解に見えていた中医学の用語に少しは親しみがもててきたでしょうか?「風」や「痰」などの概念はちょっと難しいですが、その他の陰や陽、血や気などは比較的イメージしやすいと思います。足りなければ(虚)足して(補)、多ければ(実)、減らす(瀉)というのが基本です。滞っていれば、動きやすくして、動かすというのも大切な治療の要素です。とにかく正常な状態に近づけるにはどうするべきかを考えるのが中医学の治療の根幹です。こんど中医学の言葉に触れるときはその言葉の意味を考えるようにしてみてくださいね。
 

2013/12/26

イスクラ薬局の運営会社情報

運営会社 イスクラ産業株式会社(英文会社名:lSKRA INDUSTRY CO., LTD.)
本社所在地 〒103-0027 東京都中央区日本橋一丁目14番2号
設立年月日 1960年3月1日
事業概要 ロシア・CIS諸国・中国との医薬品、医療機器、化学品の輸出入
中成薬(中国漢方製剤)、健康食品、スキンケア製品の製造、販売