「膀胱」の西洋医学的な役割
六腑の一つである「膀胱」の中医学的な見方は、現在一般的に使われている「膀胱」の意味合いと大差はありません。まずは現代医学で言う「膀胱」を勉強してみましょう。
「膀胱」の機能は「尿を貯める」ということ。腎臓にて、血液をろ過して老廃物を排出するために生成された尿は、尿管を通って膀胱に運ばれます。膀胱に貯められた尿の量が一杯になると、神経系を通じて脳にその指令が伝達され、排尿を促します。膀胱から尿道につながる場所には括約筋という筋があり、尿が漏れ出さないよう制御しています。よってその括約筋が上手く働かないと「尿漏れ」を引き起こし、また脳へ“指令”を送る神経系がマヒしてしまうと、「頻尿」になるなどします。また尿道から「菌」が混入すると「膀胱炎」を引き起こしてしまいます。
「膀胱」の生理
中医学での「膀胱」は、主に「貯尿」と「排尿」の二つの生理機能を持つとされます。ただし、この二つの生理機能は「腎」によって統率されているため、「膀胱」独自の機能とは呼びづらいかもしれません。よって「膀胱」に関係する疾患は、原則として「腎」の治療に依ることが多くなります。
膀胱の病理
「膀胱」に関係する症状には「頻尿」「排尿時の痛み」「残尿感」「尿失禁」などがあります。先ほど述べたとおり、これら疾患は原則として「腎」の治療に依りますが、これは「腎」が「虚」してその機能が衰えた場合であり、「邪」の侵入に依って生じた下記のような病理に於いては「膀胱」を念頭に治療します。
膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)
ウイルスや細菌によって膀胱が侵され、その機能が低下した状態です。中医学的には「湿熱邪」の侵入と考えます。いわゆる膀胱炎の症状に近いと言えるでしょう。頻尿、排尿痛、血尿、尿路結石などが代表的な症状です。この場合には「清熱利湿通淋」(熱を冷まし、湿気を取り除き、お小水の出を良くする)が治療方針となります。