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紫外線と睡眠にガンを抑制する効果が? 睡眠と日光の意外な関係

皆様こんにちは。六本木店店長の櫻井です。皆様のGWはいかがだったでしょうか。私は人生初の菖蒲湯に入ったり、谷中銀座で話題の日暮里・谷中地域を足がおかしくなるまで歩き回ったりしたり、家族とおいしいものを食べに行ったりしました。素敵な休暇を過ごせた方、休み明けのお仕事お疲れ様です。GWもバリバリ仕事だった方、大変ご苦労様でした。

 


湯に浮かべた菖蒲:菖蒲には揮発性の芳香成分があり、気持ちを落ち着かせたり、痛みを和らげたり、胃腸を元気にしたりする作用があるとされています。

 
さてさて、日ごろ、Twitterやこのブログなどで、「健康のために夜はちゃんと寝て、朝はカーテンを開けて日の光を浴びてください」というお話をさせていただいていますが、先日NHKさんの「病の起源」という番組で、それを裏付けるとても興味深い内容を放映していたので、そのことについてブログを書いてみたいと思います。
私が見た回は、日照時間が少ない地域に住んでいる人とガンの発生率に相関性がみられ、さらに夜間、人口的な光に暴露されている状態では、ガンの発症率が高まるという内容でした。

 




日の光でつくられるビタミンD


ガンと日の光のお話をするには、まずビタミンDについてお話しなくてはいけません。
ビタミンDは、脂溶性の微量栄養素で、私たちの体の中では血中カルシウム濃度に関わっています。ビタミンDの欠乏症は、くる病や骨粗しょう症など、骨の弱体化による疾病が有名ですが、その他、高血圧や冬季鬱、歯周病、結核、末梢動脈疾患、そしてガンについての関連性も近年指摘されています。
ビタミンDは不思議な″ビタミン″で、紫外線を浴びることで身体の中で合成することが出来ます。推奨では、午前10時から午後3時の間に5~30分日光浴をすることで、必要量を補えると言われています。紫外線量は一年を通して変化するため、一般的に夏季のビタミンD血中濃度は高く、日照時間の少ない冬季には減るとされています。また、年間の日光照射が少ない高緯度の地域では、体内のビタミンD濃度が低いという報告もあります。
ビタミンDは、食べ物からも摂取することが出来、しらすや紅サケ、イワシ、サンマ、マグロなどに多いとされています。ビタミンDは、魚の油に多く含まれているので、それらの摂取量が少ないアメリカなどでは、ビタミンDの摂取はビタミンDが添加された牛乳やオレンジジュースなどの強化食品からがそのほとんどを占めており、カナダなどでは、牛乳やマーガリンにビタミンDの強化が義務付けられています。
しかし、食物からだけでは十分に吸収することが難しく、例えば潜水艦の乗組員は、一日に必要な量の数倍ものビタミンDを摂取していても、適切に吸収できていないという報告もあるそうで、ビタミンDの維持には、日光を浴びることがとても大切な要素だと考えられています
 
少し前までビタミンDの欠乏についての研究は、骨に関するものがそのほとんどでした。ビタミンDが足りないと、骨が弱くなったりスカスカになってしまったりして骨折の危険性が高まるので、カルシウムと一緒にビタミンDも摂りましょうというものでした。しかし、2004年ごろからビタミンDの不足と癌の関係性が指摘されるようになってきました。

 


北海道の朝焼け



ビタミンDと大腸ガンの関連性


日本国内で見てみると、東北や北陸地方と四国や九州などを比べた場合、大腸ガンの発症は日照時間の少ない地域の北陸や東北地方で多く、アメリカで見てみても、ハワイや南部、フロリダなど、日光がたくさん当たる場所よりも、北部や北東部の方が大腸ガンの発症率は高くなっています。これらをみて、一概に日照時間とガンを結びつけることは出来ませんが、日光によってつくられるビタミンDとガンの発生率の間には、何らかの関連があるということが考えられます。
では、それらを裏付ける以下の研究報告をみてみましょう。
 
55歳以上の女性を対象とした研究で、ビタミンDとカルシウムのサプリメントを摂っている方とそうでない方を比べた場合、77%もガンになるリスクが軽減されてたという報告があります。
After excluding cancers that were diagnosed during the first year of follow-up (cancers that were probably already present before the study began), women given vitamin D and calcium had a 77% lower risk of cancer than women given placebo.″(Vitamin D Linked with Lower Cancer risk/ American Journal of Clinical Nutrition)
 
上記はアメリカでの研究報告ですが、国立がんセンターの研究によると、日本人では、ビタミンDの不足と大腸ガンのリスクに関連性はみられず、日本人はビタミンDの不足によって直腸ガンになるリスクが増加する可能性があるという報告をまとめています。
ビタミンD受容体の遺伝子タイプの違いから、日本人は白人に比べて、ビタミンD不足で直腸がんリスクが上がりやすい体質である可能性を示す研究があります。″(ビタミンDと大腸がん罹患の関連性について/国立がん研究センター
 
近年の研究により、日光曝露の不足によるビタミンDの不足は、骨のカルシウムの問題だけでなく、免疫が関係するガンなどの疾病にも関連があることが指摘されています。

 


 日の光は命の恵み



夜間勤務と乳がんの発生リスク


もう一点、とても興味深い内容だったのが乳がんと睡眠の話です。下に記した研究は、デンマークで、夜間勤務をしている看護師と、昼間勤務をしている看護師の乳がんの発生率を比べたものです。その中では、日中のみ勤務している看護師の乳がん発生率を1とすると、夜間の交代勤務もしている人は、乳がん発生リスクが1.8倍に上昇し、夜間勤務が常勤の場合だと、2.9倍にまで上昇することがわかりました。
Overall, nurses who worked rotating shifts after midnight had a significantly increased OR (1.8; CI 1.2-2.8) for breast cancer compared to nurses with permanent day work. No association was found in a small group of nurses with evening work and no night work (OR=0.9; 0.4-1.9). The subgroup of nurses with periods of permanent night shift in addition to rotating night and day shifts experienced an OR of 2.9 (1.1-8.0). For nurses working after midnight compared to nurses never ending work before midnight, OR in the third tertile of cumulative number of shifts was 2.2 (1.5-3.2). In an analysis of different rotating shift systems, the highest OR (2.6; 1.8-3.8) was observed for long-term day-night rotating shifts.
(Case-control study of shift-work and breast cancer risk in Danish nurses: impact of shift systems./PubMed)
 
日本でも乳がんの発生率は近年増加傾向にあり、年間約5万人もの人に発症しています。これは、16人に1人という高い数字です。はっきりしたことはまだわかっていませんが、乳がんはエストロゲンが高いほど発症率が上がるという報告があり、その関連性が指摘されています。
栄養状態がよく初潮が早まり、出産回数の少ない先進国の女性ほど、若年期からの排卵によるエストロゲンの上昇と、妊娠によるエストロゲンの低下がないため、絶えず高い濃度にあるということも一つの要因だと考えられていて、「乳がんは先進国に多いガン」とも言われています。
 
 
エストロゲンとともに先進国における乳がんの発生率の上昇理由として挙げられているのは、上記研究のような夜間勤務をする人に、乳ガンの発生率が高いという報告です。これは、寝ている間体内で生産されるメラトニンというホルモンに、ガンを抑制する力があるためだと考えられています。メラトニンには強力な活性酸素除去作用があり、細胞を傷つける活性酸素を無毒化したり、免疫細胞に直接働きかけ免疫反応を増強したり、ガンの増殖を抑制したりする作用があると考えられています。
メラトニンは、起床から14~16時間後で、辺りが暗くなるころに分泌が始まります。また光を浴びることでその分泌が止まり、体内時計をリセットする役割もあると考えられています。メラトニンは外が暗く、寝ている間に分泌されるホルモンなので、太陽が沈んだ時間帯にちゃんと睡眠がとれていないと、メラトニンが正常に分泌されず、人間が本来持っている、夜間にガンを抑制するシステムの機能を低下させてしまっていると考えられます。
 

cat nap/dirty fingernails
cat nap/dirty fingernails / thejbird


朝起きて太陽を浴びることが、前回お話したようにうつの予防につながり、やる気をアップさせるだけでなく、ガンの予防にも効果があるようです。そして夜、太陽が沈んだ後は、なるべく早く寝ることも、ガンの苦しみから私たちを遠ざける重要な要素なようです。
上記の研究結果をもとに、夜勤中に、看護師が積極的に仮眠をとれるような仕事の内容やシフトに見直し始めた病院もあるそうです。今や、私たちの生活にとって、夜間の仕事というのはなくせないものになってしまいましたが、より良い労働環境が整えられるよう、健康と利便性のバランスやその内容も考えていかなくてはいけないのかもしれません。
私たち人間は、日が昇るとともに活動を始め、そして日が沈むと休むという生活を何千年と繰り返してきました。私たちの体もそのリズムに合わせて健康を維持するシステムを作り出してきたのです。今後何百年、何千年後には、また新たなライフスタイルに順応した人間が出来上がっているのかもしれませんが、今の私たちは、私たちの先祖が送ってきた生活の中にまだ生きているのです。
もしあなたが、昼間太陽をしっかり浴びることができるなら、そして幸運にも夜お布団に入ることができるなら、1分でも長くその幸せを享受してくださいね。
 
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2014/05/07

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