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中医学 の記事一覧

年末年始で疲れた胃腸に優しい「食」のお話

今日は1月11日。鏡開きの日です。鏡開きの説明はこちらに→任せるとして、新年も11日になると、もう普段通りの生活に戻られているころでしょうか。こんにちは、櫻井です。
新年あけてからのご相談内容で一番多いのは、1位はやっぱりカゼにまつわるご相談です。咳や鼻水、妊娠中に飲めるかぜ薬など様々な症状でご相談にいらっしゃいます。その次は、冷え。これは冬の間ずっとある相談ですが、寒い今年はいつもにも増して多いような気がします。その次は、胃腸のトラブル。年末年始で食べ過ぎ、飲みすぎが重なったせいか、食欲がない、胃もたれ、胃痛、便秘、下痢など様々な問題を抱えてご相談にいらっしゃいます。新年会もある事ですし、胃腸の養生しっかりしておきたいですね。今から胃腸の調子を整えておくことは、春の花粉症予防にもつながりますよ!
 

食のトラブル

食欲がない、食が細い、疲れやすい、そんなご相談はこの時期とても多いです。体も寒さに耐えるために食べようとしますし、じめっとした湿気もなく、本来冬は比較的食欲が増加する傾向にある季節なもに、どうも食べられない。高齢者の方にもこうした方は数多くいらっしゃいます。食は健康の基本なので、しっかり食べて元気を養い、健やかに毎日を過ごしたいものです。
【医食同源】という言葉は良く耳にしますが、これは中医学の【薬食同源】から発想を得て、近年に日本で作られた造語です。【薬食同源】とは、「日々の食事こそ良薬」という意味です。食材にはそれぞれに味*(酸・苦・甘・辛・鹹)と性質*(温・熱・寒・涼・平)があり、それが身体に作用して自然と調子を整えてくれます。そのため、しっかりと食事をとることが出来れば、健やかな体を作ることが出来きるはずなんですが、胃腸の調子をおかしくして、食欲もなく、食べてもしっかり消化できていなければ、体力は低下し、臓腑もきちんと仕事が出来なくなります。その結果は、様々な症状となって出てくるようになります。
* 味と性質はこちらをご参考ください→【元気に食べるための脾胃と食のお話
 

「脾胃」を養う

口から入ってきた食べ物はいったん「胃」に受け止められます。そこで小さく「消化」され、吸収のために「脾」へと運ばれます。吸収された栄養素や潤いは、肺に運ばれた後、全身へと送り出されていきます。脾胃の機能が低下するとこうした栄養や潤いの輸送も低下し、疲れや体の各部の機能低下、乾燥、免疫力の低下なども出てくるようになり、カゼをひきやすくなったり、疲れやすくなったり、髪や肌や粘膜が乾燥するようになってしまいます。
脾胃は温かく、乾燥した状態を好む臓腑です。冷蔵庫から出したばかりの飲み物やアイスクリームなど、日ごろから冷たいものをとる習慣がある方は要注意です。レストラン等で出される氷が入ったお水なども、できれば避けてほしいものです。
 
 

脾胃の養生のポイント

なるべく温かいものをとるようにし、水分を摂りすぎないことです。辛いもの・脂っぽい食事は控えることが良いでしょう。葉野菜を中心に、加熱してたくさん食べることをお勧めします。ストレスは、こまめに発散する方が良いでしょ。偏食はやめましょう。魚も肉も野菜もバランスよく食べることが大切です。家族や友人と一緒に、楽しみながら食事をする工夫をしてみてください。便秘は脾胃を健康に保つための最大の敵です。とにかく脾胃を健康にするためには便秘は禁物。もし便秘薬を飲まないと出ない状態なら、脾胃はかなり疲弊してしまっています。食生活を根本的に見直し、カタカナ食(パン、コーヒー、パスタ)を避けて、和食を中心に、野菜をたっぷり食べてください。なるべく身体を動かし、運動をして、食欲を増進するようにしましょう。運動をする時間をつくれなくても、階段を使う、一駅歩くなど普段の生活に運動を取り入れてください。
 
食べ方のポイントとしては、
暖食:温かく、消化に良いものを食べる
淡食:塩分を控えめに薄味で食べる
暢食:食事は楽しく、気持ち良く食べる
専食:食事に専念する。ながら食べをやめる
少食:腹八分目の量を食べる
慢食:食事はゆっくり時間をかけて食べる
潔食:新鮮で清潔な食材を選ぶ、食べる
を意識してくださいね。
 
その他、味(五味)・性質(五性)を考え、季節や体調に合わせた食べ物をそれぞれバランス良く食べることも大切です。そのへんは前回のブログにまとめてありますので、こちらのリンク→元気に食べるための脾胃と食のお話 をご参考下さい。
 

「おひたし」はかさばってしまう葉物野菜を沢山食べられ、調理も湯がくだけなのでおすすめです。写真は「春菊のおひたし」です。枝の太い部分を先に10秒ほど熱湯につけてから、葉の部分もさっと湯がいて、冷水でしめてから水けを絞り、出汁をかけて、たっぷりの鰹節と柚子を散らしてお召し上がりください。柚子の香りと春菊の香りが気の巡りを改善し、胃腸を動かし食欲をださせてくれますよ。すっごく簡単ですっごくおいしいです。

 
 

 
中医学が考える食の基本は「脾胃」という臓腑です。脾胃とは、消化器系全般の働きを指しており、胃は飲食の受け皿として主に消化を担当し、脾は栄養や水分を吸収して体各部に送る役割をしています。暴飲暴食やストレス、睡眠不足、加齢などによって、脾胃のこうした機能が低下すると、食欲不振や下痢・軟便、疲れ、胃もたれなど様々な症状になって出てきます。
食べるものがなかった大昔ならいざ知らず、「食」があふれかえっている現代では「飽食」にこそ注意を向ける必要があります。食べ過ぎは脾胃に負担をかけ、機能を低下させます。そして偏食や不摂生にも勿論気をつけなくてはいけません。ファストフード、お菓子、炭酸飲料、脂肪分や味付けの濃い食事、冷凍・加工食品などなど、脾胃の力を奪ってしまう「食」は私たちの周りにあふれかえっています。
元気で充実した毎日を送るためにも、おいしく楽しく食べるためにも、脾胃を養い、健やかに保ちましょう。
 

2014/01/11

【風邪の日】にちなんで「板藍根」(ばんらんこん)のお話

こんにちは、櫻井です。今日1月9日は【風邪の日】だそうです。風邪に記念日なんてあるのか!と驚きつつその由来を調べてみると、『1795(寛政7)年、横綱・谷風梶之介が流感であっけなくこの世を去った。』ということから、1月9日は【風邪の日】となったそうです。ちなみにインフルエンザのことを「谷風」というそうなんですが、これもこの横綱の名前から来ているそうです。世の中まだまだ知らない事だらけですね。
さてさて、風邪の日の今日ですが、200年以上経った現代でも人類と風邪の戦いは続いております。そんな中なんと、札幌でタミフルに耐性を持ったウィルスが見つかったとのこと。来るとは思ってましたが、こんなに早く出てきてしまったんですね。ウィルスの進化のスピードにはほんと毎度ながら驚かされます。人間もこれぐらい早く進化できないもんでしょうかね。そろそろインフルエンザにかからない人間が出てきてもよさそうなものなのに、そう簡単にはいかないようです。
ちなみに、タミフル以外の抗ウィルス剤のリレンザやイナビルには耐性をもっていないようですが、まぁそんなのは時間の問題でしょうね。さらに強いウィルスが出現して、それに勝てる薬が開発されてといたちごっこは続くのでしょう。
 
そんな時にこそ漢方の出番では無いでしょうか。とにかく、カゼやインフルエンザは予防すること、かかっても初期で治すことが大切です。そこで一番にお勧めしたい生薬は、やはり【板藍根】(ばんらんこん)です。最近になって耳にする機会も増えて、ずいぶんと板藍根の知名度は上がってきたかと思われますが、まだまだ知らない方も多いと思うので、ここでもう一度板藍根についておさらいしてみましょう。

Woad (Isatis tinctoria)
Woad (Isatis tinctoria) / echoe69

 
 

板藍根とは

【ホソバタイセイ】という黄色い花をつけるアブラナ科の植物の根を乾燥させたものです。漢方と言えば中国のイメージが強いですが、板藍根はヨーロッパ原産の植物で、14~15世紀ごろにドイツで栽培されていました。現在の主な原産地は河北省、江蘇省などです。中国ではこれ以外にもキツネノマゴ科の植物であるリュウキュウアイの根を板藍根として使われています。

どんな生薬?

板藍根は、中国では古くから、カゼやインフルエンザの常備薬として利用されており、SARSウィルスが2003年に大流行した際に中国の衛生部(日本の厚生労働省にあたる役所)が、SARSの予防に効果があると発表した漢方の一つで、WHO(世界保健機構)もその対策を評価していました。
板藍根には、涼血解毒、清利咽喉という力があり、細菌やウィルスによる炎症や感染による発熱、腫れ、痛み、鼻血、のぼせ、充血、のどの痛みなど抑える働きがあります。板藍根から抽出した水溶液をつかった基礎実験でも、インフルエンザウィルスを抑制する効果が確認されています。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21774246
板藍根の性質は、寒性なので、ぞくぞくと寒気がするような風邪の症状には、大量に使うべきではありませんが、短期間にウィルスの力を抑えるのに使う場合もあるので、ご使用をお考えの方は専門家にご相談ください。
 
 

手軽に板藍エキス

その板藍根から抽出したエキスを使った製品が、「板藍茶」(ばんらんちゃ)や「板藍のど飴」です。板藍根の抽出エキスから作ったお茶は香ばしい風味があり、臭みもなく、飲みやすいです。お茶といえども粉状なので、お湯に溶かしても、そのままでもお飲みいただけます。板藍のど飴は、板藍根から抽出したエキスを食べやすい飴にしたものです。お湯が無いところでも口に入れるだけで、お手軽に風邪・インフル対策が出来る製品です。
 

 
「板藍茶は寒性なので、どんなタイプのカゼにも、どんな人にも使えるというのは間違いですか???」というご質問をいただいたことがあります。確かに生薬の性質だけをみれば、その通りですが、実際に使用する量や期間などを考えると一概にはそういえないこともあります。板藍茶をお試しいただく際には、今どういった症状で、どういう体質なのかを、漢方に詳しい専門家にご相談の上、ご使用くださいね。
 

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2014/01/09

明日1月7日は「七草」 『七草粥』の体に良いお話

おはようございます。店長の櫻井です。
 
突然ですが、
芹、薺、御形、繁縷、仏の座、菘、蘿蔔とは、
“春の七草”七草粥に入る植物の事なんですが、いくつ読めましたでしょうか。ちなみに私は、漢方を生業にしておきながら一つも読めませんでした!
読み方は、、
 
芹 (せり) =セリ
薺 (なずな) =ペンペン草
御形(ごぎょう)=ハハコグサ
繁縷(はこべら)=コハコベ
仏の座(ほとけのざ)=コオニタビラコ
菘 (すずな) =カブ
蘿蔔(すずしろ)=ダイコン
 
となります。全く漢字は難解ですね。恥ずかしながら蘿蔔(すずしろ)なんて、「ぶどうか??」と思ったぐらいです(ちなみにぶどうは葡萄と書きます)。「春の七草」とか「七草粥」などとは昔からよく耳にしましたが、それらが何を指しているのは、このブログを書くために調べて初めて知った次第です。
 

某大型スーパーで鉢ごと売っていた「七草」です。

ところでこの『七草の行事』は、いったいいつから始まって、何が由来なのでしょうか?そして、『七草』たちにはどんな力があるのでしょうか。

 
七草の由来
『春の七草』は、日本に古くからある、年初めに雪の下から芽を出した若草をつむ「若菜摘み」その原点と考えられています。そこに、中国の「七種菜羹」という7種類の野菜を入れた羹(あつもの、とろみのある汁物)を食べて邪気を払い、無病息災を祈るという習慣がかさなり、定着していったようです。
昔は、前日(1月6日)の夜にまな板に載せて「七草なずな 唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬ先に、合わせて、ストトントン」(地方により多少の違いがあり)と囃し歌を歌いながら包丁でたたき、7日の朝に粥に入れて炊いていたようです(wiki参照)。この歌から見ても、中国(唐)の習慣と日本の風習とまじわりできた習慣じゃなかろうか?という想像ができますね。
 
 
春の七草の効能
手もとの資料によると、
セリは余分な熱をとり、おしっこやおりもののトラブルに良いとされ、
ナズナは、胃腸を元気にし、むくみや胃の不快感、目の充血などにも良いようです。
オギョウ(別名 ははこぐさ)は、咳を鎮め、痰を出すのに良く、
ハコベラは利尿によく、産後の浄血によいとされ、
ホトケノザは胃腸に良く、
スズナ(かぶら)スズシロ(だいこん)は解毒や、消化不良によいとされています。
春の七草は、お正月料理で疲れた胃腸にはぴったりのお粥といえますね。
 
 
ちなみに、、、
春の七草はご存知の通り1月7日ですが、これは旧暦の1月7日の事を指しています。となると、旧暦の正月は2月初旬ですので、実際の七草粥は2月初旬に食べられていたようです。実際にこれら『七草』も、2月ごろ、春先に食べごろを迎える植物たちですので、今スーパーに並んでいる『七草粥セット』なるものは温室栽培のものや、中には多少違った植物が入っているものあるようです。
元々は邪気を払い無病息災を祈るための粥でしたが、正月のごちそうで疲れた胃腸を癒すため、溜まった毒を除くためという意味合いもあります。実際に、緑たっぷりのおかゆは解毒の力に優れていますし、おかゆは疲れた胃腸を回復させる絶好の養生食ですし、正月太りも改善してくれる(かもしれない)ので、安心して七草粥を楽しんでください。
 
 
 
それでは14世紀、時は南北朝時代の四辻の左大臣(よつつじのさだいじん)が源氏物語の注釈書「河海抄(かかいしょう)」の記載から良く知られる一句をご紹介します。『春の七草』は歌になったことで世に広く知れ渡ったといわれています。

『芹なずな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草』

 

2014/01/06

血瘀、痰湿、気滞、理気??難しい中医学用語を読み解くヒント

こんばんは。店長の櫻井です。
気虚痰湿血瘀???これらは中医学の専門用語ですが、なかなか難解ですよね。私も中医学を始めた時は、意味の解らない外国語にしか見えず、まったくもってちんぷんかんぷんでした。けれども、コツさえつかめば何となく想像でき、実はそれほど難しくないんです。今日はそんな中医学用語を、一般的に良く見られる体質タイプとその治療法から説明していきたいと思います。

 

 
代表的な体質タイプ
 足りない「虚」タイプ
気虚タイプ
エネルギー不足。私たちが生きていくうえで必要なエネルギーのことを中医学では「気」といいます。気が足りなと疲労感、倦怠感、免疫力低下、食欲不振、胃もたれ、下痢、軟便、そして冷えなどの症状がみられるようになります。花粉症やアレルギー症状なども気の不足が関わっていることが多くあります。
 
血虚タイプ
血の不足。血には身体を潤し栄養を与え、温めるという力があります。また、精神の安定にも影響しています。不足することで、めまいや立ちくらみ、乾燥やかゆみ、白髪や抜け毛、生理不順、不妊症、目の疲れ、手足のしびれ、不眠、不安、息切れ、不整脈などがみられることがあります。
 
陰虚タイプ
潤い(陰)不足。体内の水分である「陰」(いん)が不足しているタイプ。乾燥を感じたり、口が乾いたり、喉が乾いたり、微熱やほてり、のぼせといった熱がこもった症状を感じやすくなったり、めまい、耳鳴り、寝汗、生理不順などがみられることもあります。更年期では陰が不足しやすく乾燥しやすい傾向にあり、めまいやほてり、のぼせ、寝汗などが出やすくなります。
 

 

 
巡りが悪い「滞り」タイプ
気滞タイプ
「気」の巡りが悪くなっているタイプ。気は体内を絶えず流れている状態が正常で、流れが滞り、詰まってしまうと、痛みを感じたり、張った感じがしたりするようになります。気は自律神経に影響を及ぼすので、イライラしやすかったり、不安を感じたり、憂鬱、落ち込みなど気滞タイプは精神的に不安定になります。胃やお腹、わき腹などが張り、なでたり、マッサージすると気持ち良い、ガスやげっぷが多い、高血圧、生理不順、月経前症候群(PMS)がひどいなども見られます。
 
血瘀(けつお)タイプ
「血」の巡りが悪いタイプ。冷えや飲食の偏り、ストレスなど様々な理由により、血がドロドロとした流れにくくなる状態です。流れにくくなった血を「瘀血」(おけつ)と言います。血瘀は状態で、瘀血は流れにくくなった「血」そのものです。血も気と同じで絶えず体内を流れているのが正しい状態です。滞ってしまうと、皮膚や関節、身体の末端などに栄養が運ばれず、新陳代謝が低下してしまいます。新陳代謝とは、細胞の入れ替わりのこと。古い細胞を新しい細胞に変えていくそのサイクルが低下してしまうことになり、シミやそばかすが増えるなどがみられることがあります。その他、顔、歯ぐき、唇の色が暗くなる、クマも血瘀の特徴です。肩こりや関節痛、頭痛、子宮内膜症、子宮筋腫、生理痛が重くレバー状の塊がまじることもあります。
 
痰湿タイプ
余分な水分や老廃物「痰湿」(たんしつ)が溜まっている状態。ニキビや吹き出物、痰、オリモノの増加がみられます。肥満・水太り、むくみ、めまい、だるさ、吐き気、高脂血症、糖尿病などがみられ、熱がこもる熱タイプと、冷えやすい寒タイプがあります。
 


Herbs / romainguy

 
治療法の解説
足りないものを補う「補法」(ほほう)「補気」「補血」「補陰」
気虚タイプですが、虚というのは「足りない状態」ですので、「気虚」は「気が不足した状態」です。これを改善するには、「気」を補う、「補気」(ほき)という方法をとります。その他の代表的な「補」の方法に、「補腎」(ほじん)が有ります。「補腎」腎を補うという意味で、弱った腎を強化するという意味です。その他「補」が付く言葉には、補気、補血、補陽、補陰などがありますが、どれも足りなくなった状態(「虚」きょ)を改善するという意味です。補腎と関連がある言葉で大切なのは、「補陽」(ほよう)「補陰」(ほいん)があります。「補陽」とは、「陽虚」(ようきょ)という冷えの状態を改善する方法です。寒がりで手足が冷たい、下半身が冷えるなどは陽虚の症状です。補陽とは温めることと言えます。もう一方の補陰は、潤い不足の「陰虚」を改善する方法です。
 
血虚タイプを見てみましょう。血虚は「血」の不足ですので、「血」を補う「補血」(ほけつ)で対処します。足りない血を補うのは、血の原料を重点的に補う方法と、血の原料を補いつつ、血の製造工場である脾胃の機能を同時に改善する方法などで選ぶ包剤も変わってきます。それはその人がどういった症状を訴えているかによります。胃腸のトラブル、胃もたれ、下痢、軟便などを訴えていれば、補血にくわえて血を作る脾胃(消化器系)を元気にする、胃腸回復薬が入ったものを選びます。そういった症状が見当たらず、便秘や肌の乾燥など、血虚の症状がおもに見られるようであれば、補血を中心とした処方を選択します。補血はその他、「養血」(ようけつ)と言うこともあります。
 
陰虚タイプに対する治療法は「補陰」(ほいん)です。組織液、関節液、粘膜を潤す液体、汗など体内に存在するすべての潤いや水分を中医学では「陰」(いん)と呼びます陰虚は陰が不足する体内の乾燥状態なので、これを改善するには「補陰」(ほいん)といって陰を補う方法をとります。補陰はその他、「滋陰」(じいん)という言い方をすることもあります。
 


drugstore prescription / jimmiehomeschoolmom

 
「滞り」を改善する「理気」「活血」法
気滞タイプに対する対処法、「理気」(りき)についてから始めましょう。「理気」とは、気を滞りなく流す、気を正常に巡らせて機能を回復させるという意味の治療方法です。気を巡らせる方法は「理気」の他、「行気」(こうき)や「疏肝」(そかん)という方法がありますが、基本的には同じ意味です。行気はその字の通り、気を行かせる方法で、疏肝は肝の疏泄(そせつ)を改善するという意味です。「疏泄」とは、精神機能や臓腑活動を統括する気の巡りを調節する肝の機能の一つです。疏肝とは肝の疏泄機能を改善し、精神機能や臓腑活動をのびのびと円滑にするという意味です。それらは気の巡りが滞っているとうまくいかないので、気を巡らせることが、肝の疏泄機能を改善することになり、疏肝=気の巡りを改善するとなります。
 
血瘀(けつお)タイプは、「血」の巡りが悪い状態なので血流を改善する方法、「活血」(かっけつ)で治療します。活とは、「活発」という言葉や、「活き活きと」という言葉からもわかるように、元気に動かすという意味です。「活血」は「血」を動かすという意味ですが、「活」は「血」だけに使われる用語で、「気」を巡らせる(動かす)場合は「理気」または「行気」といって、「活気」とは言いません。活血が使われる代表的な言葉に「活血化瘀」(かっけつかお)というのがあります。これは瘀血(おけつ)ドロドロとした血の塊や流れの悪い状態を改善するという意味です。化という字には変化させる、無くすという意味がありますので、化瘀は瘀血をなくすという意味です。
 
痰湿タイプは、痰や余分な水分、不要物である痰湿が排泄されず滞った状態なので、痰湿を排泄するまたは無くす、作らせないという治療方法がとられます。それを「化痰」(かたん)と言います。「化」とは、上でも説明しましたが無くすという意味で、「化痰」(かたん)は痰をなくす、痰を除くという意味です。喉に溜まる痰を見える痰、「有形の痰」といいますが、これをなくすのも化痰で、めまいや精神症状など見えない痰、「無形の痰」が原因の症状を改善させるためにも化痰という言葉は使われます。化痰方法は塊をなくすという方法や、胃腸機能や腎機能を改善し、痰を発生しにくくして、さらに排泄しやすくる方法などの複合的な方法がとられます。「湿」(しつ)は痰よりもう少しさらっとした薄い水分のイメージです。これらは水分の過剰や停滞状態なので、これらをなくす、「除湿」(じょしつ)や「化湿」(かしつ)といった方法で対処します。
 


Hu Qing Yu Tang / faungg’s photo

その他、脾胃(胃腸系)を健康にする「健脾」(けんぴ)や、胃の機能を整えて落ち着かせ、ゆったりさせる「和胃」(わい)や、本来は落ちていかないといけないものが逆流している状態と考える「吐き気」を改善する「降逆」(こうぎゃく) 、めまいやふらつき、出ては消える湿疹やかゆみなど「風」(ふう)を消す「消風」(しょうふう)や「熄風」(そくふう)、 体表にとどまっている邪気を発汗や汗ばむことで追い出す「解表」(げひょう)、寒さを散らす「散寒」(さんかん)、頭に火が昇るようにカーッとなってイライラや目が血走っている状態を改善する「瀉火」(しゃか)、身体に熱がこもってしまっている状態を改善する「清熱」(せいねつ)、食べ過ぎや胃腸機能低下による食の停滞である「食積」(しょくせき)や「食滞」(しょくたい)を改善する「消食」(しょうしょく)、便通を良くする「通便」(つうべん)など、漢字の意味を考えていくと何となく見えてくることがたくさんあります。


Chinese Medicine / howie221

中医学の治療では、症状の原因が実(多い)のか、虚(足りない)なのかを見極め、余分なものをとり去る「瀉法」(しゃほう)か足りないものを補う「補法」(ほほう)を治療方針の原則として見極めることはとても重要です。その症状は気・血・津液やその他が多いから起こっているのか、少ないからなのかを見極めるのは、とてもとても大切なことです。人の体調や症状というものは、虚か実か、常にどちらか一つになるのではなく、この部分は虚でこの部分は実というように、補いながら瀉していかないといけないという場合もあります。その辺りの見極めは知識と経験がものをいう微妙なさじ加減です。でもこのさじ加減一つで結果が大きく変わってきます。
どうでしょう。何となく難解に見えていた中医学の用語に少しは親しみがもててきたでしょうか?「風」や「痰」などの概念はちょっと難しいですが、その他の陰や陽、血や気などは比較的イメージしやすいと思います。足りなければ(虚)足して(補)、多ければ(実)、減らす(瀉)というのが基本です。滞っていれば、動きやすくして、動かすというのも大切な治療の要素です。とにかく正常な状態に近づけるにはどうするべきかを考えるのが中医学の治療の根幹です。こんど中医学の言葉に触れるときはその言葉の意味を考えるようにしてみてくださいね。
 

2013/12/26

カニは寒性で冷やすがエビは温性で温める!「エビとカニ」のお話。

今日はクリスマス!当店がある六本木には、ミッドタウンのイルミネーションを観にたくさんの方がいらっしゃっていて、どこもかしこも人と車でごったがえしております。私といえばもちろん仕事のことしか頭にございませんので(?)素通りで通勤・帰宅しておりますが、、、笑  こんにちは、櫻井です。
 
年末年始となると、飲み会や会合など、「食べる」機会がほんとに多くなりますね。そんな中でも一気に需要が伸びるのは、カニやエビではないでしょうか?調べてみると、年末のカニ需要は夏場に比べて10倍にもなるそうですよ!
ということで今日は、そんなカニやエビのお話です。カニとエビは似ていますが、中医学では全く違う性質と考えています。タイトルにもある「カニは冷やす、エビは温める」ってどういうことでしょうか?そんなお話をしてみたいと思います。


Crab (Matsudo, Chiba, Japan) / t-mizo


エビ祭り ClubMed Kabira Press Tour / Norio.NAKAYAMA

カニを中医学的に見ると

カニの力は、補気補髄、清熱散血、続絶傷、利湿といわれ、エネルギーを補い、血の巡りを改善します。骨折や破傷風の場合にも良いとされています。特に「肩こりの予防」には良い食材とされています。しかし、カニはまた、冷やす性質が強い「寒性」の食材なので、冷えが気になる方や、女性では冷えが強く生理痛が酷い方や、冷やしてはいけないとされている月経前や月経中などは控えたほうが良い食材といえます。なので、食べる場合は生ではなく、お鍋にしたり、温かいものと一緒にたべると良いですね。寒性のカニを温性のお酢で食べる「カニ酢」は、美味しいというだけでなく、中医学的に見てもとても理にかなった食べたかといえます。せっかくなので、黒酢と生姜のみじん切りを添えて食べるようにしてくださいね。尚、お鍋にすることで、殻に含まれる栄養成分も一緒にとれるので、カニの身をそのまま食べるより良いとされています。カニ、特に殻に含まれるキチンキトサンには、整腸作用や免疫力を高める効果があるとされ、癌の予防にも良いとされています。その他、コレステロールや血圧を抑制するタウリンや生殖能力にとても重要な亜鉛や、お肌によいカルシウム、最近某フィルム会社が出している化粧品にも入っていることで有名な、強い抗酸化力をもった「アスタキサンチン」などを含むとても健康的な食品です。


カニ / miki7500

アレルギーや湿疹、炎症症状を持つ方は注意!

カニはとってもおいしいですが、同時にアレルギーを起こしやすい食材としても知られています。中医学でも「発物」(はつぶつ)といって湿疹などの腫れものを発生しやすくする食材の一つに数えられています。皮膚トラブルや、炎症性の症状を抱えた方には注意を促し、食べないように指導しています。また、古くからの食べ合わせでは、「水を飲みながらカニを食べると下痢をする」と言われています。寒性の食材は、胃腸負担になりやすく、大量に食べると胃腸を痛め、排泄されるべき「湿」を溜めやすくします。そこに水分を多量に飲むとさらにその症状が進むことになり、下痢や腹痛が起きることが考えられます。同じ理屈で、柿や梨など体を冷やす食材と一緒に食べるとお腹を壊す可能性があるので、注意が必要です。
 
美味しいカニの選び方と保存
カニを選ぶときは、ずっしりと重みがあるものを。関節の裏側の膜が透き通っているものは鮮度が高いと言われています。生のものはその日のうちに調理するか、食べてしまいましょう。保存する場合は、ゆでてから冷凍します。毛ガニは重さ400g~600g 甲羅の直径が10cm 前後のものが美味しいと言われているようです。ちなみに500gサイズになるのに約10年はかかると言われています。カニが高い理由がわかりますね。身入りが良くて脂乗りがよくなる毛ガニの旬はまさに今。冬の初めから年末にかけてだそうです。タラバガニはオホーツクの流氷が去った4~5月が甘味が増しておいしいと言われているようですが、身入りが一番いいのはこれも今、11月から2月にかけてだそうです。タラバガニもほかのカニと同じように甲羅を含めた重さで値段が決まりますが、味噌はおいしくなく、甲羅は無駄に重いので、足だけ買う方が断然お得です。


カニ / y_ogagaga

カニは高級食材の代名詞ですね。アラスカでは文字通り一攫千金を夢見た猛者どもが集ってカニ漁に出かける時期です。しかし冬のアラスカはまさに命を懸けた漁場なようです。以下の動画をご参照ください。留学時代のハウスメイトに、冬場だけアラスカで漁をして、その他は遊んで暮らすという奴がおりました。体も心も大きな奴でしたが、今はなにをやっているんでしょうか。
 

 
 
 
もう一つ年末・お正月食材として外せないのは、エビですね。カップヌードルを創った、安藤百福が『エビは高級感があり、めでたい。日本人はみんな大好きなので、エビが入れば必ず売れる』と言っていたとか。一個の製品の運命を託せるほど日本人は「エビ好き」なようでしたが、年間消費量は97年35万トン強をピークに減少気味。今ではアメリカ、ヨーロッパや中国、アジア諸国に次いで第5位の29万トンとなっているようです。


甘エビ / norio_nomura

エビを中医学的に見てみると
エビの力は、補腎壮陽、益気開胃、袪風通絡とあり、食欲不振を改善し、スタミナをつけ、精力減退にもよいアンチエイジング食材とされています。エビはカニと違って温性の食べ物なので、冷えやエネルギー不足による血行不良にもおススメです。しかし、食べ過ぎてしまうと、熱がこもり、ふらつきや炎症などの症状も見られることがあるので、注意が必要です。エビもカニと同じくアレルギー症状を起こしやすい「発物」の一つです。熱がこもりやすいタイプの方、肌トラブルを抱えている方、ほてりがある方などは、食べ過ぎ注意です。
エビにも、カニのところでもお話した、赤い色素に含まれる「アスタキサンチン」が含まれています。産卵のために河を昇る中で大量に発生する活性酸素から身を守る必要がある鮭の身が赤いのも、浅瀬に産まれた鮭の卵が紫外線から守るために赤い色をしているのも、この「アスタキサンチン」のせいだそうです。抗酸化力に優れ、疲労を回復させ、炎症を抑え、免疫を強化し、持久力を伸ばすとして今注目されている成分です。アスタキサンチンを含むエビの栄養素の多くは殻に含まれているそうです。エビの身はコレステロールが多いと言われていますが、そのコレステロールを下げる働きのある「タウリン」が豊富に含まれるのも、肩こり、不眠、便秘を改善し、生活習慣病や老化の予防にも効果がある「キチンキトサン」が多く含まれるのも殻です。殻ごと食べれられればもちろんそれでも良いのですが、食べなれていないと口の中をけがしてしまうかもしれません。残念ながら、キチンキトサンも、アスタキサンチンも水溶性では有りませんので、お鍋の出汁に溶け出したりはしませんが、生活習慣病によいとされる「タウリン」は水に溶けます。身だけより、殻や尻尾も、お鍋に入れて、やわらかくしたものをしっかり噛んで食べるか、フライにしたり、焼いたりしてパリパリになったしっぽなどは残さず食べるほうが良いですね。エビには川エビと海エビがありますが、薬膳や中医学では、より効果が高いのは海エビだと言われています。コレステロールが低いのも海エビだそうです。


2011.6.20 北海シマエビ漁初日(ゆでたて) / betsukai_kanko

美味しいエビの選び方と保存法
エビを選ぶときは、髭がピンと張りがあるもの、足が折れていないものがおすすめです。生の場合はその日に食べましょう。保存する場合は冷凍で。ゆでた後でも冷凍できます。
エビの旬はやはり冬。これはカニにも言えることですが、温かくなってくると成長しようとして脱皮します。脱皮した後の殻はふにゃふにゃ、身もしまりがありません。そして脱皮は大きい殻になるためにするので、身はスカスカになってしまいます。なので、冬のカニやエビは固くなった甲羅にびっしり身が入った状態になるそうですよ。 

 
さてさて、エビもカニもまさに今が旬。とてもおいしい時期です。私もつい先日、北海道の友人に、年末にカニやエビなど北の幸の詰め合わせを送ってもらうようお願いしました。今からとっても楽しみです!

2013/12/25

イスクラ薬局の運営会社情報

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