三度の流産を乗り越え、2年間漢方薬を続けて自然妊娠。めでたく元気な赤ちゃんを出産された方の妊娠・出産までの経緯をご紹介致します。
3年前のちょうどこの季節、Aさん(当時37歳)が当薬局に来られました。妊娠を希望されてのことですが、それまでに稽留流産と子宮外妊娠による流産を経験されており、病院の検査では子宮・卵巣とも異常はないとのことでした。Aさんは中肉中背で性格も大変穏やかな方で、身体的には冬に足先が冷えること・便秘気味・高温期にはニキビが出るといったこと以外、目立った不調はありませんでした。
基礎体温は二相性であるものの、低温期の体温が少し高めで期間が短いこと、排卵期の体温上昇はよいが、高温期は山型で途中でカクッと下がることもあり、この状態は中医学的見地から主に生殖能力に大きく関わっている「腎」の陰陽のバランスが失調していると考えます。 Aさんの場合、妊娠はするけれどもそれを維持できない「不育症」とみます。
漢方薬での治療方針は『補腎・補血・養血』。 すなわち「腎」の機能を高め、受精卵をしっかり着床させることのできる内膜を作るための原料となる「血」を補い、さらに循環よく温かで丈夫な内膜を保つことです。
漢方薬を服用してからお通じも改善、ニキビもほとんど出なくなりました。服用して4ヶ月目、妊娠反応陽性! ところが喜びも束の間、8週目にしてまたも稽留流産という結果に。中医学では流産も 「小さなお産」とみなし、流産後は養生を重視して消耗した血をしっかり補います。ドクターによっては「次の月経が来たらもう妊娠は可能」と言うのを聞いたことがありますが、妊娠は可能であってもそれを維持する力が必要です。漢方的には少なくとも3~6ヶ月は養生の期間と考え、できれば妊娠は避けた方がよいとされています。
流産以降も漢方薬を服用し続け、3ヶ月過ぎた頃から徐々に基礎体温も安定してきました。様子を見つつ、月経期・低温期・排卵期・高温期と周期に合わせて薬を使い分ける「周期療法」を始めました(流産して7ヵ月後のことです)。
その後体調も良好、基礎体温もみごとに教科書に載っているようなきれいな二相性を描いていました。あとはコウノトリを待つばかり・・そして周期療法開始13ヵ月目、妊娠反応陽性!!しかし油断は禁物。妊娠を維持するための薬を服用して頂き、以前越えられなかった妊娠8週目を何とか無事に乗り切れるよう、「赤ちゃんもっと長く留まって」と祈るような気持ちでした。
病院での治療も受けながら妊娠14週目を迎え、ドクターから「もう大丈夫」と太鼓判を押され、その後は母子ともに順調で『ずっと年下の若い妊婦さんよりも優秀と言われました』とニコニコ笑顔で来店されたAさんがとても印象的でした。出産されるまでは血を養う「婦宝当帰膠」を続けて飲んで頂きました。そして秋も深まったある日、2700gの女のお子さんを無事出産し母子ともに元気でオッパイをよく飲んでくれると喜びのご報告を頂きました。
漢方薬を飲み始めてから赤ちゃんをだっこするまで32ヶ月(約3年)近く、毎日欠かさずの服薬と体温測定。これを継続していくことは本当に根気のいる大変な事だったと思います。今は何でもスピード化して情報もあふれ、欲しい物は大概手に入るような時代。不妊治療においても技術はますますレベルアップし、今まで人の手は介入できなかったところまでどんどん人工的になされるようになりましたが、ミクロの部分に集中するあまりマクロの部分やメンタルの部分を見失いがちではないでしょうか。
「西洋医学での最先端高度医療技術」と「個人の体質や取り巻く環境を重視し身体と心の調和をはかる中医学の知恵」
を組み合わせることによって、さらに多くの妊娠出産を成し得ることができると思います。
妊娠,不妊症,
漢方百科KANPO HYAKKA
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