一般的な検査では問題ないのに・・・
赤ちゃんが欲しいと希望しているのになかなかできない不妊症。医学的には、避妊をせずに2年以上夫婦生活を営んでも妊娠しない場合を不妊症といいます。不妊症の原因はさまざま。一般的な不妊検査で明らかな異常が認められないにもかかわらず妊娠できないケースもあります。そのような方の中には、時に「抗精子抗体」が存在し、そのために妊娠しないことがあります。
抗精子抗体って?
免疫とは、もともとは体の中に入った病原菌などの異物から体を守るためのメカニズムです。抗体は異物を排除するのに大切な役割を果たしています。しかし、複雑な免疫のメカニズムは時として自分の体の一部や、異物として認識しない物質に対しても間違って抗体を作ってしまうことがあります。抗精子抗体とはこうした抗体の一つで、精子の表面に結合して精子を動かなくしてしまいます。抗精子抗体は男女どちらにもできる可能性があります。中でも女性に抗精子抗体がある場合には、抗精子抗体が結合した精子は子宮頚管や卵管の中を泳いでいくことができなくなってしまいます。よってヒューナーテスト(精子の子宮頚管通過性)も不良となります。
検査でわかる抗精子抗体
ヒューナーテストの結果が何度受けても思わしくない場合に抗精子抗体が疑われます。抗精子抗体は血液検査(精子不動化試験)で調べることができます。
抗精子抗体がある(陽性)といわれたら・・・
抗体がどれだけ精子を動きにくくするか、つまり抗体の強さによって違ってきます。抗体が弱い場合には人工授精で妊娠する可能性もあります。人工授精の場合、子宮内に直接精子を注入するので、子宮頚管液での抗精子抗体との接触はさけられますが、卵管液の抗体は避けられません。よって、最近では体外受精が第一選択となります。また、抗精子抗体を持つ方の体外受精での妊娠率は他の原因による体外受精での妊娠率よりも高いといわれています。他の機能異常がなければ、受精卵さえあれば妊娠が可能と考えられるからです。
中医学から見る抗精子抗体と治療
以上のように、 抗精子抗体は免疫バランスが崩れた状態です。西洋医学ではかつて過剰免疫に対して免疫抑制剤を使用することもありましたが、中医学では抑制するのではなく、このアンバランスを整えることが必要と考えます。また、アンバランスが生じた原因を見つけていきます。
具体的には、免疫バランスを整える漢方薬を用います。その上で一人ひとりに合わせた体質改善を行います。たとえば、冷え性の方には、からだを温めて代謝を良くする漢方薬を、反対にからだに必要な潤いが不足して暑がりな方には潤いを補って余分な熱をとる漢方薬を用います。これらによって妊娠しやすいからだを作りつつ、場合によっては病院の治療と併せて妊娠を待ちます。
ワンポイント!中医学的養生法
こうした体質改善のヒントは日常生活の中でもたくさんあります。冷え性の方はショウガやニラ、エビ、鶏肉、羊肉などを積極的に摂り体の中から温めましょう。これからの時期、冷房にも要注意です。暑がりの方は山芋、ホタテ、ユリ根、黒ゴマや豚肉などを意識的に摂り余分な熱を冷ましましょう。そしてなによりストレス・我慢は妊娠の大敵!ご自分にあった発散方法を見つけて毎日を気持ちよく過ごすことが一番の養生です。
抗精子抗体,