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中医学 の記事一覧

「やかん」や「へそくり」も??【言葉に残る漢方の記憶】

こんにちは、店長の櫻井です。
漢方」というと相変わらずなんだか小難しい感じがしますよね。でも生姜やみかんの皮、菊の花なんて言うのも漢方生薬の一つだったりして、実は私たちの生活のすぐそばにそれらは有ります。今では忘れられていることもたくさんありますが、まだまだ西洋医学や西洋薬というものが無かったころは、生薬や漢方は私たちの生活にもっと身近な存在でした。そんな名残が、今でも私たちが普段何気なく使っている言葉に色濃く残っています。

A special Chinese medicinal mix of 9 herbs, roots and such
A special Chinese medicinal mix of 9 herbs, roots and such / Uncleweed

 
例えば、みなさんご存知の「五臓六腑」という言葉は、元々漢方医学の五臓である肝、心、脾、肺、腎六腑胆、小腸、胃、大腸、膀胱と三焦の事を指しており、西洋医学の内臓とはちょっと違ったものになります。
やかん」なんていうのも実は漢方の言葉。やかんは漢字で「薬缶」と書きます。そうです。薬を作る缶なんです。元々は薬鑵(やっかん)と書いて、薬を煎じるのに使われていた道具を指した言葉なんです。
 

Kettle
Kettle / mrhayata

 
倹約や内職をして内緒に溜めたお金のことを「へそくり」といいますが、その語源にも漢方が関わっているようです。吐き気や咳・痰をとる「半夏(はんげ)」という生薬があります。サトイモ科のカラズビシャクという、日本のあちこちに自生している植物の根の一部を乾燥させたものなんですが、昔は、この半夏の球根を集めてきれいに洗い乾かしたものを生薬として売って、副収入とすることもあったようです。半夏は、丸い球体で真ん中にくぼみがあり、それが「」にみえたので、「へそ栗」と言われていて、それが「へそくり」の語源になったという説があります。
さらにこの半夏は農業にとってもとても大事な時期を知らせてくれるものだったようです。農業にとって季節の変わり目というのはとても大切なもので、いまほど正確な暦が無かったころは、この半夏が生えてくるのを見て、季節の変わり目を知ったようです。この季節の変わり目を掴むために設けられた暦日はのちに「雑節」といわれ、その一つに、「半夏生(はんげしょう)」という日があります。陽歴で7月2日ぐらいを言うのですが、半夏生とは、半夏が生えだすころのことだそうで、この日までに農作業を終わらせておくという節目だったそうです。地方によってはこの日の天候によってその年の稲の豊凶を占う日でもあり、この日から5日間ほどを農閑期として、やがて来る酷暑の中の農作業をまえに英気を養っていたそうです。 暦がまだ一般的ではない時代では、季節の変化を植物の生育を見て知っていたんですね。
 

農作業
農作業 / タカハシケンタロウ

漢方がなんだか今では新しいもののように感じられますが、昔は当たり前のものだったんですよね。胃腸がわるくなったら当薬(せんぶり)をお茶にしてのんだり、吐き気がするときはショウガを乾燥させたものを湯に入れて飲んだり。寒い時は葛湯をのんだりなどなど。当時最先端だと思われていた、オランダ医学などの西洋の医学も、解剖学にはすぐれていて、外科的手法は卓越したものを持っていましたが、内科疾患に関してはからっきしでした。今ほど西洋薬の種類もあるわけでもなく、当時日本にやってきた西洋医たちも、漢方の力を借りていたようです。ということは、西洋の外科的手法と、漢方の内科的手法が組み合わさった当時の日本の医学というのは、世界にも類を見ないほど最先端だったんでしょうね。

中身が忘れられ、形だけが残っている言葉たちも、そんな遠い昔の繁栄の遺物といえるのかもしれません。今またあのころのように、西洋と東洋の医学のいいとこどりをした最先端の日本の医学の発展を祈るばかりです。
 
 

2014/04/14

美容と疲労回復に「アスパラガス」のお話 イライラやのぼせにもおすすめ

こんにちは。店長の櫻井です。今日もまた旬のお野菜のお話をしましょう。
今日のテーマは「アスパラガス」です。正直言って昔はそれほど好きではありませんでした。なぜかはわかりませんが、さっきちょの部分の見た目が苦手だったような気がします。でも今は大好きな野菜の一つです!

first asparagus
first asparagus / Muffet

 
アスパラの旬は春。4月から5月。北海道は6月ぐらいがおいしい時期だそうです。土に埋めて日に当たらないように柔らかく育てたホワイトアスパラもありますが、栄養価はグリーンの方が高いようです。
アスパラは、ヨーロッパの南のほうからロシア南部にかけて自生しているそうです。日本では、北海道が産地として有名なところをみても、涼しいところ好む植物であることがわかりますね。
 

Cooking Asparagus
Cooking Asparagus / balise42

アスパラの栄養

アスパラは、古くから疲労回復効果の高い野菜として知られていたようです。理由としては、豊富なたんぱく質です。その中でもアスパラギン酸が多く含まれているためです。アスパラギン酸はアスパラギンというアミノ酸から出来るんですが、アスパラギンは、その名の通り、アスパラガスの汁から単離されたものです。
アスパラギン酸は、タンパク合成に必要な物質で、尿の合成を促進する作用もあり、毒性のアンモニアを体外に排出し、中枢神経を守る働きもあります。また、筋肉にミネラルを運び、疲労に対する抵抗力を高めたり、スタミナ強化にも良いことがわかっています。
カリウムも多く含まれ、高血圧やむくみの改善も期待できます。上記のアスパラギン酸はカリウムと合体して、アスパラギン酸カリウムとなり、糖質の代謝を促進して、疲労が蓄積するのを防ぎます。ビタミンCやビタミンB群も多いので、血管の老化を防いだり、お肌を若々しく保つのにも適しています。タンパクやDNAの合成、赤血球をつくり、細胞の分裂や発育を促進している葉酸も含まれています。鉄分や赤血球を増加させるコバルトもほかの野菜に比べて多いので、貧血予防にはとってもおすすめの食材です。

Asparagus
Asparagus / Mike Licht, NotionsCapital.com

美味しいアスパラの選び方と保存方法

太くまっすぐ伸びているもの、繊維の筋が入っていないもの、穂先が締まっていて開いていないもの、切り口が白く変色していないものがおいしいアスパラです。保存するときは水分が失われないようにラップして、冷蔵庫の野菜室に立ておくことでアミノ酸などの減少を防ぐことができます。
 

Roasted Asparagus
Roasted Asparagus / bongo vongo

中医学から見たアスパラガス

アスパラの性質は、手元にある資料では、平性微涼性、寒性と三つとも異なっていますのが、効能と比べると、若干湯冷ましのように冷ましてくれる程度と捉えておいて良いとおもいます。味は苦味と甘味。帰経は肺。中医学的効能では、肺を潤し咳や喉の炎症を鎮め、利尿作用と便通作用あり、潤いの分泌を促進し、喉の渇きを収めるとされています。
 

Asparagus and Morels
Asparagus and Morels / Laurel Fan

アスパラはちょうど今から6月ごろまでがおいしい季節です。北海道では冬場は雪に埋もれて育ち、春になると雪解け水をたっぷりとすって育つので、瑞々しくてとても甘くなるそうですよ~。さっとゆでるだけでしゃきしゃきとした触感と甘み旨味が際立つとてもおいしいものです。水溶性ビタミンが多くふくまれているので、ゆで時間は少な目にしましょう。太い方を先にお湯に10秒ほどつけてから全体を湯の中に入れるのがおいしく茹でるコツです。
カロチンやビタミン類、食物繊維、タンパク質にミネラルと栄養価に富んだアスパラは、昔から疲労回復の食材とされたほか、高血圧や心臓、動脈効果の症状緩和、湿疹や便秘の改善など様々な症状の改善に民間でも使われてきました。近年では、抗がん作用もあるという報告もあるようです。春は陽気が上に上りやすく、のぼせやイライラを感じやすい季節。そんな時余分な熱をとり、潤いを補ってくれるアスパラはピッタリの食材です。かんきつ類などの気の巡りを改善する食材などと合わせるとさらに良いですね。
 

2014/04/11

高たんぱくで肝臓をまもり、むくみ予防にも!春の味覚「そらまめ」

こんにちは。店長の櫻井です。昨日の晩御飯に、ソラマメが食卓に上がりました。ソラマメ、恥ずかしながらちゃんと食べたことが無かったのですが、食べてみると美味しいですね。初めはどうやって食べてよい分らず、皮ごと食べてしまい、なんかごわごわして、口の中に残るので「おいしくない!」と妻に言ったところ、笑いながら皮をむくことを教えてくれました。皮をむいて食べるとでっかい枝豆みたいで食べごたえがあり美味しかったです。
 

そらまめ
そらまめ / pika1935

 
ソラマメは、秋口以外はほぼ通年市場には出回っているそうですが、最大生産地、鹿児島での旬は大体春の1月から4月の春先頃。これからは千葉、愛媛、茨木産が出回ってくるそうです。今がまさに旬で美味しい季節ですね。ソラマメがなんで「ソラマメ」なのかというと、大きな鞘が天をに向かって育つためと言われているそうです。大きな鞘の中に豆が2~4個入っていて、まだ固くならない未熟な状態のものを食べます。ソラマメは鮮度が落ちるのが早く、収穫から3日を過ぎてしまうと一気に味が落ちるそうです。
ソラマメの原産地は、いまだはっきりしていないようですが、地中海や西南アジアだと言われています。古代エジプトやギリシア、ローマでも食用とされていたようで、日本へも8世紀ごろ渡来した、古い野菜です。
 

空豆
空豆 / is_kyoto_jp

コレステロールが無く、栄養価が高いソラマメ

ソラマメは全体の10%以上が植物性蛋白質でできており、カロリーがとても低いので、ダイエットや健康維持におすすめです。ソラマメは生のままでも水分が少ないので、栄養が凝縮されています。栄養価としてはビタミンB1、B2、C、食物繊維やカリウム、リン、鉄、マグネシウムなどのミネラル分なども含んでおり、比較的栄養バランスが整った食品であるといえます。特にビタミンB1はほかの豆に比べて豊富で、さらに葉酸やパントテン酸も多く含んでいます。ビタミンB1は疲労の回復を、B2は血管を柔軟に保つ効果があり、カリウムは余分な塩分を体の外に排泄してくれ、高血圧やむくみにも良いですね。さらにレシチンは血中のコレステロールの酸化を防いでくれ、動脈硬化の予防やコレステロール値を正常に保つのにも効果的。お酒のおつまみとして食べれば、豊富なたんぱく質が肝機能を護ってくれ、カリウムが余分な塩分や水分を排泄してくれ、お酒を飲んだ後のむくみの解消を手伝ってくれるでしょう。
脂肪や糖質の代謝を助けてくれる上、食物繊維、タンパク質が多いので満腹感がしっかりあります。その上カロリーが低いなんていいことだらけですね。食物繊維が多いということは、お通じを良くしたり、腸内をデトックスするにもおすすめです。
 

空豆(Broad bean)
空豆(Broad bean) / kanonn

中医学で見るソラマメ

ソラマメは、平性で寒熱の偏りがなく、どなたでも食べられます。中医学的効能は、胃腸の働きを高め、体を元気にしてくれ、余分な水分を排泄してくれる効果があります。帰経は脾胃で、胃腸に届きます。食欲不振や胃もたれの改善、むくみをとる効果があるとされています。
 

そらまめ
そらまめ / mersy

美味しいソラマメ

鞘がきれいで瑞々しく、緑色で、均一にふっくらふくらみ、さやのなかにわたが詰まって弾力があるものを選びましょう。新鮮なものはさやの表面にうっすらとうぶ毛がついていますが、古いものは黒ずんでいたり、張りがなくなっていたりします。さやを向いたものもありますが、風味はおちるので、出来るだけさやつきのものを。
保存には、ポリ袋にいれて冷蔵庫の野菜室へ。ゆでたものは冷凍保存しましょう。とにかく鮮度が落ちるのが早く乾燥しやすいので、早く食べるようにしましょう。

タイトルなし
タイトルなし / titanium22

体のもとになるタンパク質を多く含み、コレステロールを吸着し血をきれいにしてくれて、血の原料となる鉄やミネラルが豊富で、血管を若々しく保ってくれて、身体を元気にしてくれるソラマメは春のエネルギー不足には効果的。しかし、豆類などタンパク質が多いものは、ちょっと消化しにくいという難点があります。消化不良が続いている場合、お腹にガスが溜まりがちな方は控えましょう。また、ソラマメに限らず豆類はアレルギーを起こす原因ともなり得ます。アレルギー体質の人は注意が必要。特に妊婦は一度にあまり多く食べないようにしましょう。
食物繊維は皮におおく含まれているので、便秘がちな人は皮ごとたべるのが良いそうですよ。おしくなかったのであまりおススメしませんが 苦笑
 

2014/04/10

【小児の発育不全と中医学】入学式をみて思う。

先日は入学式のだったようですね。緊張した顔、うれしそうな顔、怖がっている顔、いろんな表情の子供たちを見かけました。表情はもちろんみんな背丈もそれぞれ違います。子供の成長はほんとに早いものですが、この「成長」には、中医学では「腎」の強さが関与していると言われています。中医学の「腎」とは、いったいどんなものなのでしょうか。


入学式 / hirota_kenichi

「腎」とは、、、

「腎」とは、生長と発育、生殖を司る臓器で、エネルギーである「精」溜めている生命の泉です。中医学の「腎」とは、西洋医学でいうところの、泌尿器系、生殖器系、ホルモン代謝系、カルシウム代謝系、免疫などに関わる臓器です。また、「腎は精を蔵す」といい、生命エネルギーの源とも考えられています。そして骨や歯の成長、そして脳の機能も、この「精」無くしては正常に行われません。人の成長、発育、そして老化と健康は、腎の精の充実度合いにより決まってくるというのが、中医学の考えです
ちょうど小学校に入学するぐらいの齢、中医学でいえば、女の子は7歳ぐらい、男の子は8歳ぐらいになると、歯が永久歯に生え変わる時期と言われており、ちょうど「腎」が充実し始める時期です。腎は、生長、発育、生殖を司る臓器の一つで、私たちが生きていくための、エネルギーの源でもあります。中医学には、「 腎主骨」(「腎」は骨を司どる)という言葉と、「歯為骨之余」(歯は骨の余りである)という言葉があり、歯は、云わば骨が露出した部分なので、歯を見ることで、骨の状態、しいては腎の状態がうかがい知れるというわけです。
 
 
 

老化と成長と腎の精

人は誰しも平等に齢をとりますが、背が伸びる人伸びない人、歯や骨が強い人弱い人、毛髪が豊かな人薄い人、精力の強い人弱い人など、人それぞれ異なった特徴をもち、その成長や衰退の度合いは様々です。同じ年齢の方でも、腰が曲がっている人やまっすぐな人、髪が真っ白な人とそうでない人もいます。その違いの大きな部分で腎の充実度が関わってきています。腎の充実度とは、生命エネルギーである「精」の充実度です。精がたっぷりとあれば、腰はしっかりしており、髪は豊かで、歯も骨も強く、頭もはっきりして、見た目も若々しく見えます。また「腎は髄を生ず」と言われ、骨髄や脊髄をつくっています。髄は精からつくられており、それが集まったものが骨となります。また脳は「髄海(ずいかい)」と呼ばれ、腎が精に満たされ、ちゃんと機能していることが記憶や思考などの脳の機能を維持するためにも重要です。
 
前回の「美しい髪の毛を育てる中医学」でもお話しましたが、腎の精には、父母からもらった「先天の精」に加えて、飲食と呼吸から生まれまた「後天の精」があります。精は7~8歳ぐらいから徐々に充実し始め、20代後半から30代にピークを迎えて、30歳を過ぎたあたりから減り始めて、身体的にも徐々に衰えを感じるようになると考えられています。この生命エネルギーが衰えた状態を「腎虚(じんきょ)」と言います。腎虚とは要するに老化のことです。老化は誰にも等しく訪れるものですが、腎の精の充実度により、腎が衰えるスピード、老化のスピードには個人差が出てきます。40代を過ぎてからの腎の衰えは誰しもが感じられることですが、40代手前や、子供の腎の衰え(腎虚)は、生命エネルギーの不足を意味しており、対策が必要です。


龍山寺老人 / SUNG HSUAN WANG

腎の弱さを補う補腎薬

腎を補う漢方薬に「補腎薬(ほじんやく)」というものがあります。補腎とは、腎を補うということ。補腎薬はそのための薬です。腎を補うには、腎の陰と陽を補う方法があります。陰と陽は上記の精をもとにつくられます。陰と陽の基本的な働きとは、「陽は温煦を主り、陰は涼潤を主る。」なので、冷えを感じるような場合は、陽を補い、乾燥やほてりを感じる場合は、陰を補うというのが腎を補う場合の基本です。陰と陽の説明は余りにも長くなるので簡単に説明すると、陰と陽とは、人体の生理機能環境を整え維持するものです。陽気は主にエネルギーで「動かす」もの「変化をもたらす」もの、そして温かいものです。陰は「形ある」もので、栄養に富んだ潤いや水分、血などを指し、冷たいものです。


P1090197 / andieyywong

 

冷えを伴う腎陽の不足には「八味地黄丸」

代表的な補腎薬に、「八味地黄丸」という処方があります。別名「腎気丸」または「金匱腎気丸(きんきじんきがん)」と呼ばれる有名なお薬です。これは、腰やひざのだるさ、耳鳴り、めまい、健忘など腎の衰えの症状に、手足の冷え、寒がり、むくみ夜間多尿などの陽気の不足がみられる場合に使われるお薬です。生薬の構成内容を見てみると、地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂枝、附子から成り立ち、滋陰、補血の地黄、補益肝腎の山茱萸補気健脾の茯苓の「三補」と、それに対し「三瀉」の清肝火、清熱涼血の牡丹皮、瀉腎火、清熱利水の沢瀉、利水滲湿の茯苓でバランスをとっています。補とは補うという意味で、瀉とは、余ったもの、不必要なものをとり去るという意味です。附子と桂枝は全身の機能を活発にし温めるために入れられた生薬で、全体を見ると、腎陽を助け、冷えからくる様々な症状を改善するお薬といえ、主に大人や高齢者にみられる冷えを伴う様々な症状の改善に使われています。
 

小児の発育不全を改善する「六味地黄丸」

腎陽の不足を改善する八味地黄丸に対して、腎の陰の不足の改善を主眼に置いた「六味地黄丸」という処方があります。これは上記の八味丸から桂枝と附子を抜いた処方で地黄、山茱萸、山薬の三補と、沢瀉、牡丹皮、茯苓の三瀉から成り立っています。生薬が8つではなく、6つなので六味地黄丸です。さらに「六」には「陰」や「水(腎と置き換えられる)」という意味があり、その名前が付けられたと言われています。
中医学では小さな子供は「純陽」と言って陽の塊だと考えられており、子供の陽気を強めることは、熱性の副作用が出やすくなってしまうと考えられています。子供の腎を補う場合は、腎の陰をもって補う必要があり、補陽の生薬である附子と桂枝は邪魔になったので、それらを抜いた六味地黄丸がつくられました。
六味地黄丸は元々、小児の先天的な虚弱体質や発育不良を改善する処方です。歯がなかなか生えない時や生えてもぐらぐらしている、骨の弱りのクル病や足腰が弱いなどや精神発達の遅延などを改善するために使われています。六味地黄丸は腎の陰を補いますが、根本的には、腎の精を補う漢方です。
 
六味地黄丸は長期に使われると内分泌系を調節する作用もあるため、六味地黄丸をベースにした杞菊地黄丸や麦味地黄丸、知柏地黄丸などの補陰の処方は子宝相談の時に多く使われています。その他、その陰(栄養に富んだ潤い)を補う作用を持って、大人のほてり、眼精疲労、耳鳴り、めまい、口や喉の乾燥やそれに伴う咳などにも、腎の弱りを改善する薬として幅広く使われています。


Cuties / travel oriented

中医学では、人は生まれてくるときに腎の中に、一生分の生命力の可能性を宿して生まれてくると考えており(先天の精)、もし腎の精が不足して生まれてきたら、長生きできないと考えていました。1400年ほど前に書かれた小児科の専門書、『小児薬証直訣』には、腎虚の人は64歳以上生きることが出来ず、不摂生をしたらさらに寿命は短くなると書かれています。六味地黄丸はその不足を補うことで、一般的に近づけようとした処方です。今ではそこから派生した包剤もたくさんあり、さらに細かに症状や体質に適応できるようになっています。
発育不全がみられる腎が弱い子供には、腎を補い、発育、発達を促す。それがしいては、大人になったのちの健康の維持や、寿命を延ばすことにもつながると中医学では考えています。
もし病気がちな子、生長の発育が芳しくない子、骨や関節が弱い子、小さいころからでも出来ることは有ります。今後の心配事を抱える前に、一度、漢方薬局で相談してみてくださいね。
 

2014/04/09

【自然と病気のつながり】のお話。「寒い日や風が強い日に体調が悪い」そんな方必見です。

みなさまこんにちは。イスクラ薬局六本木店店長櫻井です。
昨日4月6日は、『寒の戻り特異日』だったそうです。
※【寒の戻りの特異日】 
 寒の戻りが起こる確率の高い日。
 寒の戻りとは、春になって気温が上がる時期に突然やって来る寒さのことで、
 大陸からの寒波・北東気流による冷え込み・移動性高気圧による夜間の冷え込み等によって起こる。
ぴったりあたってましたね。天気なんて毎日違うもんだと思ってましたけど、繰り返されているんですね。確かに昨日は風が強くとっても寒い一日でした。冬かと思うぐらい寒かったですね。おかげで鼻水が止まりませんでした。頭もじゃっかんボーっとしてましたね。左後頭部に鈍痛も感じていました。特に思い当たる節は無いのに、昨日はいろんな症状が出ていて、調子悪かったです。
昨日のように風が強くて寒い日なんかは、悪寒や冷え、鼻水、くしゃみ、ふらつき、頭痛、そしてイライラや落ち込みなど気分症状も出やすいお天気なんです。ということで今日は、寒さや風なども病気の原因になる!というお話をしたいと思います。中医学から見た「自然と病気のつながり」のお話です。
 

中医学的 病気の要因

中医学には、気象の状態も『外因(がいいん)』と言って、病気を引き起こす一つの原因であるという考え方があります。自然界には、気象の変動を左右する風(ふう)、寒(かん)、暑(しょ)、湿(しつ)、燥(そう)、火(か:あるいは熱)の六つの現象があり、これらを「六気(ろっき)」と呼んでいます。この六気が病気の発生原因となる場合には「六淫(ろくいん)」と呼ばれ、人体を外から侵す因子、「外邪(がいじゃ)」になり、それぞれ、風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、暑邪(しょじゃ)、湿邪(しつじゃ)、燥邪(そうじゃ)、火邪(かじゃ)または熱邪(ねつじゃ)と呼ばれています。
これら外因が原因で発生する病気を「外感病(がいかんびょう)」と呼びます。外感病は、一般的に季節性があり春は風病、夏は暑病(火と湿の邪気が重なりおこされる暑気あたりのこと)、秋は燥病、冬には寒病が多いとされていますが、最近では、夏場のエアコンや冷たいもの摂りすぎなどによる寒病や、冬場の暖房器具による乾燥などによる燥病など、人口的な環境による外感病も存在します。
これら六因の外邪は、毛穴や喉、鼻の粘膜から入り込み、奥へ奥へと侵入していきます。その際、人体の抵抗力からの攻撃を受けつつ、戦いながら進んでいきます。その抵抗の結果が熱だったり、炎症だったりなどの症状となります。抵抗力が強いと、身体の表面部分で追い出すことが出来ますが、弱いと、外邪は内臓まですすみ、体調を大きく狂わる原因となります。
六因の邪気は、熱邪、寒邪など単体で人体を襲うよりも、風と熱、風と寒など複数の邪気が合わさって人体を襲うことが多く、さらに病状が進むことで、初めは寒気や冷えなどの寒邪の症状(寒証)がみられていたものが、徐々に発熱、強い悪寒など熱邪の症状(熱証)に変わることも多々あります。
体内の陰陽や気血水(津液)のバランスの崩れ、臓腑の機能低下等を起こすことによって、外邪に侵されたときと同じような症状が現れることがあります。これらは、内風、内寒、内湿、内熱と呼ばれています。
 

秋冬は乾燥に注意

春は風邪(ふうじゃ)に注意

「風」は春を代表する六気。それが体内に侵入し悪さを働くと、風邪(ふうじゃ)に変貌します。風邪は風に似た性質を持ち、風邪に侵されると、変化の激しい症状、流行性(流行って、無くなる)、症状がでる範囲が広く種類も多い、病変部痿が変化する・移動するなどの特徴があります。また、風邪はほかの邪気を伴いやすいという特徴もあり、中医学の古典、黄帝内経にも「風為百病之長(風は百病の長となる)」記されています。
風邪の主なタイプには、傷風、風寒、風熱、風痺(ふうひ)、内風の5つがあります。
傷風とは、風が単独で引き起こした疾病で、風にあたるのを嫌い、厚着したがる「悪風」、発熱、何もしないのに汗が流れ出る「自汗」、頭痛、鼻づまり、くしゃみ、咳、喉の痛みなど、軽いカゼを引いたような症状がみられます。
風寒は、風邪に寒邪がくっついて人体に侵入し、悪さをしているもの。初期は悪寒が強く発熱は少なく、頭痛、筋肉痛、鼻づまり、咳などがみられます。汗も通常は無く、出ていても少しです。
風熱は、風邪に熱邪がくっついて人体に侵入し、悪さをしているもの。熱寒が強く、寒気は少ないのが特徴。喉の腫れて痛み、咳なども出ることがあります。
風痺は、遊走性の関節痛が特徴です。遊走性とは、発症部位が固定せず移動性を伴っているものです。風痺は、風、寒、湿が合わさって人体を襲い、関節や筋肉の痛みを引き起こす痺証(ひしょう)の一つで、風邪の影響が強いものを指します。寒くて雨の降っている春の風の強い日には関節痛や頭痛などが起こるというのが、風痺です。
内風は、臓腑の機能失調や、気血水のバランス異常、ストレスなどによる、高血圧、めまい、イライラ、脳卒中、痙攣やひきつけなどを指します。原因としては、五臓の肝の陰(栄養分に富んだ潤い成分や血液)が発熱や目の使い過ぎ、出血、月経過多、睡眠不足、飲食の不摂などにより過度に消耗され、肝の陽気(エネルギー)を安定させることが出来ず過度に亢進した状態を作り出した結果、陽気が体上部に向かって昇ることで起こされる「風」です。これが原因でめまいや痙攣、脳卒中、熱性痙攣などがみられるようになります。
春には、私たちを取り巻く自然も、草木は芽吹き、動物たちも目を覚ます季節で、陽気が高まる季節です。それだけに風が吹きやすく、また、内風傾向の人は外の「風」の影響を受けやすい季節なので、風が強くなる春にはめまいや頭痛、気分障害などの症状が出やすくなります。
 

Wind Farm at Upolu
Wind Farm at Upolu / Yinghai

風邪から身を守るには

それぞれに対処法がちがいますが、全般的に言えるのは、肌の露出を少なくすることです。風邪は毛穴や喉、鼻の粘膜から体内に侵入してきます。露出しやすい、首元、足首、手首などはしっかり守りましょう。夏場、汗をかいたままエアコンの前で風に当たると、無防備に開いた毛穴から風邪と寒邪が侵入し、筋肉や関節の痛みを起こさせたり、お腹を壊したり、悪寒・悪風・発熱・咽頭痛などのカゼの症状に苦しむことになったりするので、注意が必要です。
内風に関しては、若干対処が違います。上に書いた通り、内風は肝の血や潤いが失われたことで陽気を抑えらず以上に亢進した状態(一種の緊張・興奮状態と言える)や、肝の機能低下で、正常な状態では滞りなく流れているはずの気の流れが悪くなり、熱を帯びて陽気とともに上昇し、風を生み出したことによるものなどがあります。よって予防法としては、肝の血・陰(潤い)を常日頃しっかりと補充しておくこと、血・陰(潤い)の損傷を最小限にすることなどが第一です。それと同時に、肝の気の巡りを回復させ、気の巡りを低下させるストレスはこまめに発散することも大切です。
肝の状態は爪に現れるため、肝の血が不足すると爪が薄くなったり、ツヤが悪くなったりすることがあります。また、「肝は目につながる」といわれ、目は肝と深いつながりがあると考えます。肝の血が十分蓄えられていれば、 栄養や潤いがいきわたり目も良く見えるようになります。過労や老化などで肝の働きが低下したり、肝の血が不足すると、 目の疲れや目のかすみ、視力の低下、ドライアイなどの目の症状が現れることもあります。


Spring Storm / Hugh Nelson

血を補う食材:鉄分の多いレバー、牡蠣、ほうれんそう、小松菜、赤い色の食材のトマト、小豆、プルーン、ナツメ、ザクロなど。 ミネラルが豊富な黒い色の食材(黒豆や黒ゴマ、黒きくらげ)も補血に役立ちます。
陰を補う食材:豚肉、豆乳、レンコン、白ごま、黒ゴマ、松の実、ハトムギ、菊花茶、白きくらげ、きゅうり、トマト、梨、ハチミツ、サンザシ、クコの実、クワの実、トマト、メロン、レモン、梨、桃等。その他、甘い食べ物と酸っぱい物を組合わせて食べることで陰が作られると考えられています。
 気の巡りの低下におススメの食材:香味野菜(葱、三つ葉、生姜、パセリ、セロリ、春菊、香菜など)、オレンジ、みかん、グレープフルーツ、柚子、レモン、キャベツ、苦瓜、ミント、アサリ、シジミ、イカなど。
上記の食材を毎日の食事に摂りいれるようにしましょう。そして気の巡りが悪くなって、内風が起きやすくなっていると、熱もこもりやすくなっているので、体を過度に温めるもの(羊肉など)や、辛味の強すぎるもの、お酒の飲みすぎは症状をさらに悪化させるので、摂りすぎないようにしましょう。春は陽気が高まるので、発散させ易い香味野菜を出来るだけ取るようにしましょう。春の山菜などは、陽気の高まりによる過剰な熱をとり去り、気を巡らせてくれるものが多いので、積極的に摂るようにしましょう。
そして、働きすぎに気をつけ、陰が補充される時間帯の夜にはちゃんと眠る事や、過剰な性行為、軽い運動は気を巡らせるので、効果的ですが、激しい運動やサウナ、長時間の入浴などによる汗の消費は避けるようにしましょう。


Spring Storm Study / GollyGforce – Living My Worst Nightmare

季節の変化は私たちに四季を感じさせてくれると同時に、気持ちや体の影響をも、もたらしています。うまく順応するためには、日ごろの備えが肝腎です。明日はちょっとまた温かくなるようですので、陽気が高まり、内風が起きやすいともいえます。今日の夜は香味野菜をとって、ぬるめのお湯で長すぎない半身浴をして、しっかりと寝て、明日に備えましょう。心地の良い春を過ごすために、養生してくださいね~。

2014/04/07

イスクラ薬局の運営会社情報

運営会社 イスクラ産業株式会社(英文会社名:lSKRA INDUSTRY CO., LTD.)
本社所在地 〒103-0027 東京都中央区日本橋一丁目14番2号
設立年月日 1960年3月1日
事業概要 ロシア・CIS諸国・中国との医薬品、医療機器、化学品の輸出入
中成薬(中国漢方製剤)、健康食品、スキンケア製品の製造、販売