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中医学 の記事一覧

葛根湯と頭痛

普段から食養生食養生と口を酸っぱくして言っているのに、朝からマフィンとコーヒーの誘惑にまけてしまい、胃もたれと若干の腹痛を感じている櫻井です。どうもこんにちは。やっぱり食養生、大事ですね!って説得力無いですが、体験したことで自信を持って言えます!    ・・・反省しています。
今日のお話は、先日またツイッター上で、勉強熱心なフォロワーさんから「頭痛に葛根湯が効くのはなぜ?」という簡単そうで、なかなか難解なご質問をいただいたので、今日は葛根湯について、私ももう一度勉強し直しながら、お話させていただきます。

 

葛根湯

葛根湯は、漢方を飲んだことがないという人でも1回は飲んだことがあるぐらい、もっともメジャーな漢方薬ではないでしょうか。落語の枕詞(なんでもかんでも葛根湯を出す藪医者の話)にもなるほど、日本人にはなじみが深い漢方薬ですが、本場中国では同じような症状に対して、麻黄湯や桂枝湯の方が良く使われており、葛根湯の登場機会は日本ほど多くありません。
葛根湯は今からおよそ1800年ほど前に書かれた「傷寒論」という中医学の古典に掲載されている処方です。1800年前と言えば日本はまだ医療どころか文献すらないような卑弥呼の時代です。そのころの医療といえば、もっぱら神頼みだったと思われます。その時代に中国ではすでにある程度体系化されていた「医学」が存在されていることには驚きを隠せません。著者は張仲景(ちょうちゅうけい)。張仲景は、親族の大半を【傷寒】で亡くしたことを嘆き、そんな状況を克服するべく古代から伝わる医術をもとに「傷寒論」を編残したものと言われています。「傷寒」には二つの意味があり、広義では「湿熱を含めた一切の外感熱病」で、狭義では、「風寒の邪の侵入により身体が傷つくもの」で湿熱は含まれません。傷寒は広義の意味では、腸チフスやインフルエンザなどの高熱を伴う感染性の疾患を指します。狭義ではカゼなどがその範疇になります。
 

 

葛根湯の分類

葛根湯は「解表薬」(かいひょうやく・げひょうやく)という種類のお薬です。「解表」には「発表・発汗」という意味があります。なので、解表薬は(ウィルスなどの病原体を)「外(表)に出す」、または、「汗をかかせる」ためのお薬です。「表証」(ひょうしょう)は、感染症の初期に見られる、悪寒・頭痛・身体痛・発熱などの症状がみられる状態を指していて、このような状態に対して、発汗させ熱の放散を強める方法をとることが、症状を緩和させるのに有効だと考えられています。ただ、発汗の程度はそれら症状の状態や体力などに応じて変える必要があるため、様々な解表方法が工夫され、様々な包剤が考え出されてきました。
中医学では、病邪が体の表面の浅い部分(皮膚の少し下ぐらい)を侵す「表証」という状態になると考えていて、その病邪の種類には、風寒、風熱、風湿、燥邪などがありますが、大きく分けると、風寒表証(表寒)と、風熱表証(表熱)の二つになります。
葛根湯は、風寒表証に対して用いられる辛温解表薬で、悪寒・頭痛・身体痛などの寒証の症状がみられる「表寒」に対して使われるお薬です。
 

 

 葛根湯の適応

中医学解説書による、葛根湯の適応を見てみると、「悪寒・無汗・発熱・頭痛・身体痛・咳嗽あるいは呼吸困難・口渇がないなどで、鼻閉、鼻水、ふるえなどに、項背部のこわばりをともなうもの」とあります。葛根湯は、確かに悪寒をともなうカゼの初期に使う薬ですが、上記適応の最後にある「項背部のこわばりをともなうもの」という部分がポイントです。この適応は麻黄湯や桂枝湯などのほかの辛温解表薬にはありません。違いは、「葛根」という生薬の有無です。
 

葛根とは

葛根は、マメ科のクズの塊根を乾燥させたものです。性味は平性で寒熱の偏りがなく、味は甘・辛で、補う力と同時に、発散する力があります。薬理基礎実験では、解熱作用、冠状動脈拡張作用、脳血管拡張作用による脳血流量の増加作用、筋弛緩作用などがあるとされ、臨床的には、首や背中の上の方にこわばり・緊張がある場合や、潤いを補いたい場合、下痢、湿疹が出きらない場合、高血圧、狭心痛や突発性難聴の初期などに使われます。
葛根は、血管を拡張させ、血流を良くして、潤してくれる生薬です。
 
 

痛みと葛根湯

痛みの原因を中医学では、「不通則痛」(通じざれば即ち痛む)と、「不栄則痛」(栄養がいきわたらなければ即ち痛む)という二つに分けています。葛根湯と頭痛や身体痛の関係を考えると、寒さや潤いの消耗などによる血流悪化が原因の、頭痛や肩こり、身体の各部分の痛み(不通則痛)を、麻黄や桂皮、生姜などで温めながら、葛根、白芍、大棗、甘草などで潤いを作り出すことで血流を良くし、痛みを緩和しているのではなかろうかと考えることができます。もっとよく効かせるためには、血流改善薬(活血剤)をプラスすると良いでしょう。

 
葛根湯は肩こりや寝違い、五十肩、神経痛などの痛みはもとより、頭部や顔面の化膿性炎症、皮膚炎、じんましん、乳汁不足、大腸炎とその応用範囲の広さから、様々な症状の改善に使われてきています。どれにもある一定の効果がみられることから、何にたしても葛根湯っというのは藪というわけでもないかもしれません。実際「葛根湯医」という言葉には、なんでもかんでも葛根湯を出す藪医者という意味と、葛根湯にさらに生薬を加えたり、抜いたりした数あるバリエーションを使いこなせる名医という二つの意味があるそうです。今回、葛根湯をもう一度見直してみたことで、また応用範囲がひろがったと感じます。知ってる処方も、もう一度しっかり考え直してみることはとても大切ですね。

2013/11/16

「こたつでみかん」はほてりに注意!「みかん」のお話

こんにちは。櫻井です。今日はツイッターでリクエストがあった、「みかん」のお話をしたいと思います。
 
私たちが良く知っている「温州ミカン」はその「温州」という名前から、中国のかんきつの名産地「温州」連想されますが、「温州」とは、名産地にあやかってつけられたもので、中国の原産ではなく、400年ほど前に中国から輸入した「橘」もしくは「小みかん」が、突然変異したものと考えられています。「温州みかん」の原産地は「日本の鹿児島」です。みかんの名前の由来は、中国から輸入された「橘」もしくは「小みかん」が、日本に元々あったかんきつ類より甘かったので「蜜柑」とよばれ「みっかん」と言われていたものが変化したそうです。
 


Mikan picking みかん狩り_06 / nAok0

日本で「みかん」として初めに広まったのは種の多い「紀州みかん」です。これは元々、中国から輸入された「小みかん」を日本で栽培したもの。それを15-16世紀ごろに紀州藩が力を入れて一大産業にしたことから、「紀州みかん」と呼ばれるようになったそうです。そのころ温州ミカンは、その「種が少ない」という特徴を、武士の時代では縁起が悪いとされてあまり広まらなかったそうです。江戸時代後期からその利便性や甘味が重宝され、徐々に広まっていきますが、本格的に温州ミカンが紀州みかんにとって代わってくるのは明治27年頃だそうです。温州ミカンには、その収穫時期により、極早生温州(9月から10月)、早生温州(10月から12月)、中生温州(11月から12月)、普通温州(11月下旬から12月)などがあるようです。


3283 / sakura_chihaya+

 

ビタミンCの話

温州みかんはとにかくビタミンCが豊富。ビタミンCの力はみなさんご存知のとおり、コラーゲンを合成し皮膚や粘膜、血管などの弾力保持、抗ストレス作用を持つ副腎皮質ホルモンの合成を促進、色素沈着の元、メラニン色素の合成を抑え、シミを抑えるなどの働きをしています。 ちなみにビタミンCの一日の推奨摂取量は100mg(妊婦は+10㎎、授乳中は+40㎎)。これを下回る食事を60~90日続けると、出血性の欠乏症状が出てくるとされています。さらに一日2.5㎎のビタミンC摂取を下回る状態が3年続くと、老化が進行すると言われています。
それにしても1日100㎎って意外と少なく感じてしまいます。大体「レモン何個分!」なんてうたってるものには、1000mgぐらい入ってます。ちなみにレモン1個でビタミンCは約20㎎。100mg摂ろうと思うと、レモン約5個を毎日食べないといけません。その他、イチゴでとるとしたら約10個。ピーマンなら約4個。そしてパセリなら2束必要です。これだけの量を毎日食べるのは、ちょっと難しいですよね。さらにストレスが多い場合や、たばこを吸う方はビタミンCの消費が上がるので、それ以上に食べなくてはいけません。それを見積もると一日大体500㎎程度が適当ではないかと言われています。多く摂ったビタミンCは、尿と一緒に排泄されるので、たくさん食べて溜めることが出来ず、毎日摂取する必要があります。天然のビタミンCが良いか、合成ビタミンCでも良いのか、という論争はビタミンCに限らず様々な栄養素で言われていますが、実際にビタミンCを天然の食品で摂るのはなかなか難しいのでサプリ等をうまく活用してください。
ビタミンCの大量摂取による弊害は、一度に数g単位で食べると下痢を起こすことがあるとされていますが、それいがいは科学的に証明されていません。食物からとる以上、ビタミンCの大量摂取による害はほぼ無いと言えるでしょう。酸っぱい=ビタミンCが多いというわけではありません。セロリやさつまいも、小松菜、ホウレンソウなどにもビタミンCが入っていますが、酸っぱくはないですよね。
ちなみにサプリメントや野菜ジュースなどで摂るより、ビタミンC入りのガムをかんだ方が摂取量もスピードも早いことがわかっています。ストレスが多い方、たばこを吸う方などは、ビタミンC入りのガムをかむのもいいでしょうね。
 


mikan / みかん / Kanko*

大分話がそれましたが、温州ミカンに含まれるビタミンCの量は約32㎎100mg摂るには、4個程度。これで一日に必要な量は満たしていることになります。ストレスが多い時、たばこを吸う人などはもう少し食べてもよいですが、みかんだけに偏らず、ほかの食物からビタミンCをとるようにすることも大切です。温州みかんの果肉を覆ううすい皮には、便秘改善の力がある、水溶性の食物繊維、ペクチンが多く含まれているので、腸内のデトックス、便秘の改善にもおすすめです。さらにその皮と白いスジには、ヘスペリジンが含まれていて、熱からビタミンCをまもり、ビタミンCによるコラーゲンの生成を促進します。そのほか、消化器官や目によい成分や、βクリプトキサンチンという抗がん作用が注目される成分も含まれています。
 
 

中医学的に温州みかんを見てみると

温州みかん温性で、身体を温める力があるので、こたつに入ってのみかんの食べ過ぎはほてりの原因になり要注意です。みかんを中医学では、実だけでなく、タネ、皮、白いスジすべてを使います。特に皮は、洗って乾燥させたものを「陳皮」(ちんぴ)という生薬として使用します。陳皮は気血の巡りを促進し、胃痛・嘔吐・下痢の緩和、胸やけの改善、咳や痰を鎮め、胃を丈夫にする働きがあるとされています。ちなみに古い方が効能がすぐれているとされています。陳皮は温燥性をもっていて、温めて乾かします(その作用で胃を元気にし、痰をとります)ので、熱が強い場合、乾燥(陰虚)がある場合にはむいていません。エネルギーを巡らせる作用があるので、エネルギーの不足(気虚)には、エネルギー補給剤(補気剤)と一緒に使います。
陳皮はご家庭でも簡単に作れますが、残留農薬の心配があるので、無農薬のものを使うか、良く洗って湯通ししてから干してつくってください。
皮の内側の白い部分を橘白(きっぱく)、白い部分をとった皮を橘紅(きっこう)、白いスジを橘絡(きつらく)、種子を橘核(きっかく)、葉を橘葉(きつよう)、成熟前の青いみかんの皮を青皮(せいひ)などを、症状に応じて使い分けます(日本ではそこまで細分化した使い方はあまりされていません)。中医学の世界でみかんは文字通り捨てるところがありません。


温州みかん箱入りキター!さとこさん、ありがとう! / norio_nomura

 
日本でのみかん栽培は、グレープフルーツやオレンジなどの外国勢のかんきつ類がその販売数を伸ばす中、日米貿易摩擦や、後継者問題、かんきつ類の需要の多角化など様々な影響から、生産量は下降線をたどっているそうです。冬の代名詞、「炬燵にみかん」が無くなってしまわないように、日本産のミカンを食べましょう!

2013/11/11

中医学的お口のケア

こんにちは、櫻井です。11月8日の今日は、「良い歯の日」だそうですので、「歯」についてお話しようと思います。

中医学では、虫歯や歯周病を考えるとき、口だけの病気として考えのではなく、体全体の問題としてとらえます。もちろん歯をきれいに磨けていないという問題は有りますが、それ以外にも、偏った食事によって溜まってしまった「胃腸の熱」が原因の炎症が多いタイプ、腎が弱り、歯や歯茎、そしてそれを支える骨が弱る「腎虚」タイプ、身体を動かすエネルギーの「気」や組織に栄養を伝える「血」の不足による「気血両虚」タイプなどが考えられます。


four teeth / mamaloco

食べ物が原因?歯ぐきの腫れや出血 炎症タイプ

習慣的に食べているものに、甘いものや脂っこいもの、辛いもの等が多かったり、野菜が少なかったりしている場合や、お酒やたばこなど、中医学で考える「熱」の原因になるものが多い生活習慣をされている方は、胃腸に熱が溜まってしまい、歯ぐきが腫れたり痛みだしたりなど、炎症性のトラブルが生じることがあります。その他、口周りのニキビや吹き出物、口角が切れるのも、同じく飲食の不摂生により生じた熱が原因のことが多くあります。そういった方は、冷たいものを欲しがったり、出血しやすかったり、口が乾いたり、口臭があったり、喉が腫れやすかったり、便秘がある場合もあります。舌の色は紅く、苔は黄色かったり、ひどい時は黒くなっていることもあります。

このような場合は、まず食生活を改めることが大切です。それに加えて、熱をとる漢方やハーブティーを使用します。食事は、辛いもの、油っこいもの、甘いものを避けて、葉野菜中心の和食を腹八分目で食べるようにします。ヒントは、カタカナの食材・料理をさけることです。後、気を付けていただきたいのは、熱だからと言って、冷たい食べ物(アイスクリーム、ヨーグルト、氷が入った飲み物など)をとることは、胃腸の機能を低下させるので、これも良くありません。内臓の温度を冷やさない、温かく、消化に良いものをとるようにしましょう。


Schooltandarts / School dentist / Nationaal Archief

腎の弱りからくる歯のトラブル

中医学のいう「腎」とは、単に腎臓を指すだけでなく、生長、発育、生殖を司り、人体の寒熱のバランスや水分量を調整し、呼吸を司ると考えられています。さらに脊髄、骨、歯、髪とも関係が深い臓器なので、加齢による体の変化は主にこの「腎」の機能の低下と考えています。歯が弱ったり、白髪になったりするのも腎が弱る事だからだと考えられています。腎の機能低下は、年齢によるものだけでなく、ストレスや、長く病気に患っていたりしても、同じく腎の機能は低下してしまいます。
腎の機能低下による歯のトラブルでは、歯が抜けてしまう、歯槽膿漏、歯ぐきの委縮、歯がぐらぐらするに加えて、足腰の痛みやだるさ、躓きやすくなったり、すぐに座りたくなるのも腎の弱りです。そのほか、頻尿、多尿、手足のほてり、もしくは冷え、記憶力・思考力の低下なども見られることがあります。
腎を護るには、まず歩くことが大切です。階段を使う、一駅歩く、散歩する、なんでもよいのでとにかく歩くことです。そして腰回りを冷やさないことも大切です。
「腎」を強くする食材は、黒いもの、ねばるものを毎日の食事に組み込みましょう。クルミ黒ごま黒豆黒きくらげひじき山芋ナマコなめこオクラそら豆木の実古代米などがおすすめです。
 


Dentist Commercial / Joseph.Morris

腫れは少ないけど、出血は有る。疲れも多いのは「気血の不足」

私たちが生きていくために必要なエネルギーを、中医学では「気」と呼んでいます。気は生態活動の源です。気の不足は全ての機能の低下につながります。「血」は身体の各部に栄養と潤いを届けています。「血」が不足すると、組織は栄養を失い、弱くなってしまします。もちろん歯ぐきや歯も「血」による栄養供給がなければ正常に機能してくれません。気血の不足による歯のトラブルでは、腫れは少ないですが、よく出血します。歯ぐきがやせ細り、歯の根っこが見えてしまうこともあります。また「血」がすくないと、血色は悪くなるので、歯ぐきだけでなく、舌も、顔色も白っぽくなります。気血が少ないタイプの方は、それら症状に加えて、疲れやすかったり、睡眠にトラブルがあったり、風邪などをひいてもなかなか治らないなどの状態も見られます。
気血の不足はそれを作り出す胃腸を元気に保つことがとても大切です。食事は炎症の時と同じように、葉物野菜を中心とした和食を腹八分目が基本です。疲れているからしっかり食べよう!は逆効果です。胃腸に優しく消化によいものを食べましょう。食欲がない時などは「おかゆ」を食べてください。米はそのままで胃腸薬になってくれます。生もの、冷たいものは避けるようにしてください。
 


Dentist’s sunset window / Glatze mit Kamera

 
 
虫歯や歯ぐきなど口腔内のトラブルを、口だけの問題と考えずに、しっかり生活習慣から見直すことで再発を防止できますし、歯磨きだけではケアできない部分もしっかり対応できるようになります。と言ってもやはり大切なのは歯をしっかり磨くこと。力を入れずに奥までしっかり磨きましょう。そしてこまめに歯ブラシは交換することも大切です。今日はせっかく良い機会なので、新しい歯ブラシにしてみてはいかがでしょうか?


Toothbrushes / Anderson Mancini

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脾胃(胃腸系)の元気は、健康の基本
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2013/11/08

「立冬」冬に備える中医的養生法

こんにちは。櫻井です。今日は朝から冷たい雨が降っていて、とても寒い日です。日に日に冬が勢力を増してきているのを感じます。今日11月7日は暦の上では「立冬」、もう冬です。「立」とは何かが始まるという意味で、「立冬」はまさに冬の始まりです。
 


美しい冬 / Ari Helminen

中医学で冬は、「閉蔵」といって、陰を溜めて陽を護る季節。いつもよりほんのすこし早く寝て、ほんの少し遅く起きるようにします。室温も暖かく保ち、しっかり厚着をするようにして、陽気が毛穴(腠理・そうり)から逃げ出さないようにしましょう。
冬は寒邪の季節。寒邪とは「冷え」です。寒邪は足腰や腎臓・膀胱系にまとわりついて、身体を中から外から冷やしてきます。寒邪から身を守るためには、しっかり陽気を養うこと。陽気は身体を温めるエネルギーなので、冷やさないことがとても大切です。家の外でも中でも防寒対策をしっかりして生活しましょう。そして、陽気を補う食べ物は、身体を温めるものです。調理法も生は避け、火を通して温かくして食べるようにしましょう。
 

身体を温める食べ物には、

薬味では、しょうが、ナツメグ、シナモン、八角(スターアニス)、フェンネルシード、唐辛子など
果物や木の実には、栗、クルミ、桃、サクランボなど
魚介などでは、鮭、ウナギ、エビなど
肉類は、羊肉、牛肉、鶏肉など
調味料は、酒、しょうゆ、黒砂糖など
飲み物は、紅茶など
注意)冷たいものはとにかく温めて食べましょう。日光を浴びることも大切です。
 
「頭寒足熱」と良く言いますが、冬場は足も頭も冷やしてはいけません。お出かけの際は帽子をかぶってくださいね。その他冷やしてはいけない部位に、臍、関節があります。「臍を冷やすな」というのは、勿論、冬場にヘソ出しルックはやめておけという意味でもありますが、本来は「冷たいものを避ける」という意味です。臍を冷やしてしまうと内臓が冷え、腹痛や下痢ばかりか、身体が芯から冷えてしまい、女性では生理痛の悪化や、ひどいと不妊にもつながります。男性でも腰痛や体力の低下、食欲の低下なども見られるようになります。関節は冷やすと痛みが出てきたり、関節炎の原因となります。特に足首を冷やさに無いようにしましょう。寒い外から帰ってきたときには、足湯をするとよいでしょう。冬場に素足をさらして歩いているのは、自ら病気を呼び寄せてるようなものです。絶対にやめてください。
 

天気の良い日はお散歩も効果的 上野公園は気持ちが良かったですよ

 
冬は寒さと同時に、乾燥の季節でもあります。空気の乾燥は呼吸するだけで体内の潤いを奪います。私たちの体を守っている「粘膜」は、潤っていることで十分な効果を発揮します。体内の乾燥はほてりやのぼせ、目や口の乾燥、寝汗、そして血液中の水分も少なくなり、血液がドロドロになりやすくなります。潤いを補う食材も温める食材と一緒に摂るようにしましょう。
 

潤いを補う食材には

薬味では、黒ゴマ、白ゴマなど
穀類・豆類では、あわ、豆腐、もち米、ハトムギ、黒豆など
野菜では、トマト、黒きくらげ、白きくらげ、サトイモ、ユリ根、白菜、山芋など
果物では、梨、リンゴ、柿など
魚介や海藻では、カニ、エビ、牡蠣、昆布など
肉類では、豚肉や卵
調味料では、はちみつ、オリーブオイルなど
 
注意) 辛味が強いものは控えるようにしましょう。
 


夕暮れのボルダー貯水池 Boulder Reservoir / Yuya Sekiguchi

冬場は心も穏やかにして、体も心もゆったりすることが大切です。そして汗(潤い)とともに陽気が逃げてしまうので、激しいスポーツは避けましょう。もし汗をかいたら、素早くふき取るようにしましょう。

2013/11/07

ねこの秘薬は痛みにも良い?「またたび」のお話

今日は昨日までの晴天とは打って変わって朝からどんよりなお天気。せっかくの連休も小雨が降ったりと余りスッキリしないお天気が続きそうです。そんな11月2日は「死者の日」と言われる「万霊節」。先祖の霊を鎮める祈りをおくる日です。
そんなどんよりな日のブログネタ、最近は食べ物の話ばかりだったので、中医学をしっかり載せようかと考えていましたが、ふとした会話で「なぜに猫はあんなにまたたびにまっしぐらなのか?」という話が出てきて、思わず知らべてみると、意外と面白い事実がわかったので、今日のブログは「またたび」について書きたいと思います。
あ、こんにちは、櫻井です。

 

またたび

またたびは山野に自生し、初夏に白い花、秋には扁平な実を付ける蔓性の植物です。ネコが喜ぶまたたびの実は、その果実で、3cmほどの楕円形をしています。またたびの花に「マタタビアブラムシ」が寄生した実は表面が凸凹になります。それを熱湯殺虫して、乾燥させたものが「木天蓼(もくてんりょう)」という生薬になります。正常な果実よりも凸凹の、寄生虫がついた方が薬効が強いとされています。木天蓼はあまり中医学の現場では見かけませんが、中医学の古典にその記載がみられます。

正常な実(右)と虫こぶの実(左)( 画像:蓼科クライネ ユースホステルさんブログより)

 

漢方のしてのまたたび:木天蓼

木天蓼が薬草の古典に初めて記載されたのは唐代の『新修本草』で、「味辛温小毒有り。積聚(臓腑中に気が停滞集結して散らない病態)、風労(感冒による衰弱)、虚冷(虚して冷えること)を主り、苗藤を切って酒に浸すか或いは醸して酒にして服すると大いに効果がある」とあり、薬用酒を造る部位は茎であるとあります。ただまたたびの実に関しては、「大棗のようで定まった形がなく、茄子のような種子をもち、味が辛くて姜や蓼に当てる」と記載があり、生姜などの代用食にされていたようです。味が辛いことから薬用としても「天蓼子は身体を温め、風湿を除くのに使う」と同じ唐代の『薬性論』に茎と良く似た薬効が記載されています。
茎を薬用酒にしたり、煎じたりして、冷えや体力がおちてカゼがなかなか治らないときやリューマチなどの症状改善に使ったようです。果実も身体を温め、血行を良くし、強心や利尿作用があることから、雨の日になると感じられる痛みや、冷えからくる腰痛、リューマチ、神経痛などに使われていたようです。

画像:wikipedia 「またたびの実」

 

ねことまたたび

またたびはネコの万能薬として、元気がない時、食欲低下時、下痢をしたとき、イライラしているときなどに使われます。ネコはまたたびの臭いに反応しています。この「臭い」は、ねこの神経を刺激したり麻痺させたりして、陶酔状態にさせ、ある種の性的快感を与える成分だということがわかってきているようです。でもそれが、どのような作用機序をもって働くのか、そしてなぜネコ科の動物のみに効くのかなど、まだまだ解明されていない謎が多くあります。
マタタビは常習性もなく、持続性も低いので、ネコにとって安全な「お薬」ですが、一気に大量に与えると神経の麻痺が広範囲にわたりすぎてしまい呼吸困難になってしまうこともあるので、一度に1g以上上げないように気を付けてくださいね。またたびが入った袋や保存容器の管理にはお気を付けください。
 

またたびの名前

またたびの名前の由来には諸説ありますが、一番有力と言われているのが、アイヌ語の「マタタムブ」からきたという説です。「マタ」は冬という意味で、「タムブ」は「亀の甲」、もしくは「手土産」という意味だそうです。「旅につかれた旅人がまたたびを食べたら元気になってまた旅にでられた」というのは間違いだそうです。
 

キウイもまたたび

ちなみに「キウイフルーツ」もまたたびの仲間です。というか、キウィはマタタビから作られました。中国の「シナマタタビ」を1906年にヨーロッパ経由でニュージーランドに持ち込まれ、それを改良して食べられるようにしたものが、キウィだからです。キウィは夏のイメージがありますが、耐寒性があるので、-10℃程度の寒いところでも育ちます。


以前 1000flowers で撮ったキウイ、おおきな実になりましたよ。 @hana_no_namae / norio_nomura

 

2013/11/02

イスクラ薬局の運営会社情報

運営会社 イスクラ産業株式会社(英文会社名:lSKRA INDUSTRY CO., LTD.)
本社所在地 〒103-0027 東京都中央区日本橋一丁目14番2号
設立年月日 1960年3月1日
事業概要 ロシア・CIS諸国・中国との医薬品、医療機器、化学品の輸出入
中成薬(中国漢方製剤)、健康食品、スキンケア製品の製造、販売