中国北方には「惊蟄には梨を食べる」、南方には「炒った虫(実際には豆)を食べる」という民間の風習があります。害虫と離れ、害虫を一掃するという意味です。
中医学では、惊蟄前後は各種の温疫の邪毒が活発になる季節なので、飲食では季節に応じた解毒作用のある野菜を食べると良いとされます。日本でもこの時期タラの芽、フキノトウなどの解毒作用のある山菜を食べますよね♡
惊蟄の節気食材
小嫁菜(中国語名は马兰头)
原産はアジア南部及び東部で、中国では長江流域に広く分布し、収穫時期は3~4月に集中しています。日本では四国、九州、沖縄で見られるようです。小嫁菜はカリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、セレン、ビタミンEとカロテンなどの栄養成分を豊富に含みます。
思い返すと、上海在住時に、レストランで前菜として干し豆腐との和えものがこの時期登場していました。自分で注文した覚えがないので、上海の友人が注文してくれていたのでしょうね。料理にご興味ある方は马兰头でネット検索下さいね♡今検索しましたら、近頃はオリーブオイルで和えるレシピもあるようです。餃子の餡にも使われるようで、気づかないうちに相当頂いていたようです(笑)
中医学では、小嫁菜は一種の全草薬用植物として、“清熱解毒(熱毒を取り除く)、健胃消食(機能低下している胃の働きを正常にし、消化を助ける)、散瘀止血(瘀血による出血を止める)”の効能があるとされます。
ほうれん草
原産はイランで、中国及び日本では広く栽培されています。ほうれん草はカロテン、ビタミンC、ビタミンK及び鉄、カルシウム、リンなど多種の栄養素を豊富に含み、炒めても、和え物にしても、スープに入れても全て美味しいですね。この記事を書いている1月後半多く出回るのが、ちぢみほうれん草(寒締めほうれん草)♡甘くえぐみが少なく美味しいですよね♡我が家ではオリーブオイルとつぶしたニンニクと一緒に蒸し煮にし、塩で調味、仕上げにナツメグ一振り、といったイタリア風蒸し煮を良く作ります。又、豚肉とのシンプル鍋である『常夜鍋』もほうれん草の美味しさを存分に味わうことができる料理ですね♡
縮みほうれん草はえぐみの元であるシュウ酸が少ないですが、一般のほうれん草はシュウ酸の含有量が多いので、調理前に切って水にさらす、もしくはさっとゆでて水にさらしてえぐみを取り除くことが必要です。
中医学では、ほうれん草は“開胸膈(胸の気の滞りによる痞えを巡らせる)、通腸胃(通便)、潤燥活血(潤いを養い、血を巡らせる)”の効能があるとされます。
ニベ(中国では小黄魚)
近海の底に棲む回遊魚で、中国では江蘇省、浙江省、福建省、山東省の沿海に生息します。日本では沿岸の砂泥底に生息します。ニベはたんぱく質、ミネラルとビタミンを豊富に含み、肉質は新鮮で柔らかく、蒸し、揚げ焼き、醬油煮込みなど各種の調理方法に適しています。江蘇省の沿海に生息ということは、上海在住時に頂いていたかもしれませんね。中国料理での魚の美味しい食べ方は何といっても『清蒸』!魚を丸ごと蒸して、ネギや生姜の薬味と共に醤油ベースのたれをかけていただくものですが、これが本当に美味しい♡このニベに限らず、白身魚一尾丸ごと調理する機会がありましたら、是非お試しくださいね。
春菊
原産は地中海で、中国では既に900年余りの栽培の歴史があり、広範囲に分布しています。炒め物、和え物、スープに入れたり、中国では薬用としても用います。日本では、鍋物やすき焼きなどに入れるのが一般的ですが、私は春菊をナムルにしていただくことが多いです。春菊を茎と葉に分けてさっとゆでて一旦水に取り、適当な長さに切ります。そしてごま油と塩とニンニクのすりおろしを加えてしっかり和え、器に盛って、白ゴマの半ずりを振って出来上がりです。ニンニクなしで、塩こうじとごま油の組み合わせもより春菊の香りが生かされて美味しいです。セリや春菊など、癖の強い葉野菜はごま油と相性抜群!ナムルに限ります♡
と、思っておりましたら、今から35年近く前の料理のレシピに、『春菊のミモザサラダ』というものを発見!春菊を生で使い、ベーコンを炒めてその油と赤ワインビネガーでドレッシングを作り、ミモザサラダですから仕上げに茹で卵の黄身の裏ごしを散らし、更にクルトンも加えるというとても美味しそうなレシピです♡春菊を生で使うのは最近のトレンドだと思っていたら35年前からあったのですね。もう少し気候が暖かくなったら、こちらも試してみたいと思います。
中医学では、春菊は“安心気(気を落ち着かせる)、養脾胃(消化器系を強化する)、消痰飲、利腸胃(デトックス)”の効能があるとされています。
季節の変化によってご体調も変化します。どうぞイスクラ薬局までお気軽にご相談くださいませ♡
《参考文献:二十四節気順時養生・節気養生薬膳食譜・きょうの料理 七十二候》