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紫外線と睡眠にガンを抑制する効果が? 睡眠と日光の意外な関係

皆様こんにちは。六本木店店長の櫻井です。皆様のGWはいかがだったでしょうか。私は人生初の菖蒲湯に入ったり、谷中銀座で話題の日暮里・谷中地域を足がおかしくなるまで歩き回ったりしたり、家族とおいしいものを食べに行ったりしました。素敵な休暇を過ごせた方、休み明けのお仕事お疲れ様です。GWもバリバリ仕事だった方、大変ご苦労様でした。

 

湯に浮かべた菖蒲:菖蒲には揮発性の芳香成分があり、気持ちを落ち着かせたり、痛みを和らげたり、胃腸を元気にしたりする作用があるとされています。

 
さてさて、日ごろ、Twitterやこのブログなどで、「健康のために夜はちゃんと寝て、朝はカーテンを開けて日の光を浴びてください」というお話をさせていただいていますが、先日NHKさんの「病の起源」という番組で、それを裏付けるとても興味深い内容を放映していたので、そのことについてブログを書いてみたいと思います。
私が見た回は、日照時間が少ない地域に住んでいる人とガンの発生率に相関性がみられ、さらに夜間、人口的な光に暴露されている状態では、ガンの発症率が高まるという内容でした。

 

日の光でつくられるビタミンD

ガンと日の光のお話をするには、まずビタミンDについてお話しなくてはいけません。
ビタミンDは、脂溶性の微量栄養素で、私たちの体の中では血中カルシウム濃度に関わっています。ビタミンDの欠乏症は、くる病や骨粗しょう症など、骨の弱体化による疾病が有名ですが、その他、高血圧や冬季鬱、歯周病、結核、末梢動脈疾患、そしてガンについての関連性も近年指摘されています。
ビタミンDは不思議な″ビタミン″で、紫外線を浴びることで身体の中で合成することが出来ます。推奨では、午前10時から午後3時の間に5~30分日光浴をすることで、必要量を補えると言われています。紫外線量は一年を通して変化するため、一般的に夏季のビタミンD血中濃度は高く、日照時間の少ない冬季には減るとされています。また、年間の日光照射が少ない高緯度の地域では、体内のビタミンD濃度が低いという報告もあります。
ビタミンDは、食べ物からも摂取することが出来、しらすや紅サケ、イワシ、サンマ、マグロなどに多いとされています。ビタミンDは、魚の油に多く含まれているので、それらの摂取量が少ないアメリカなどでは、ビタミンDの摂取はビタミンDが添加された牛乳やオレンジジュースなどの強化食品からがそのほとんどを占めており、カナダなどでは、牛乳やマーガリンにビタミンDの強化が義務付けられています。
しかし、食物からだけでは十分に吸収することが難しく、例えば潜水艦の乗組員は、一日に必要な量の数倍ものビタミンDを摂取していても、適切に吸収できていないという報告もあるそうで、ビタミンDの維持には、日光を浴びることがとても大切な要素だと考えられています
 
少し前までビタミンDの欠乏についての研究は、骨に関するものがそのほとんどでした。ビタミンDが足りないと、骨が弱くなったりスカスカになってしまったりして骨折の危険性が高まるので、カルシウムと一緒にビタミンDも摂りましょうというものでした。しかし、2004年ごろからビタミンDの不足と癌の関係性が指摘されるようになってきました。

 

北海道の朝焼け

ビタミンDと大腸ガンの関連性

日本国内で見てみると、東北や北陸地方と四国や九州などを比べた場合、大腸ガンの発症は日照時間の少ない地域の北陸や東北地方で多く、アメリカで見てみても、ハワイや南部、フロリダなど、日光がたくさん当たる場所よりも、北部や北東部の方が大腸ガンの発症率は高くなっています。これらをみて、一概に日照時間とガンを結びつけることは出来ませんが、日光によってつくられるビタミンDとガンの発生率の間には、何らかの関連があるということが考えられます。
では、それらを裏付ける以下の研究報告をみてみましょう。
 
55歳以上の女性を対象とした研究で、ビタミンDとカルシウムのサプリメントを摂っている方とそうでない方を比べた場合、77%もガンになるリスクが軽減されてたという報告があります。
After excluding cancers that were diagnosed during the first year of follow-up (cancers that were probably already present before the study began), women given vitamin D and calcium had a 77% lower risk of cancer than women given placebo.″(Vitamin D Linked with Lower Cancer risk/ American Journal of Clinical Nutrition)
 
上記はアメリカでの研究報告ですが、国立がんセンターの研究によると、日本人では、ビタミンDの不足と大腸ガンのリスクに関連性はみられず、日本人はビタミンDの不足によって直腸ガンになるリスクが増加する可能性があるという報告をまとめています。
ビタミンD受容体の遺伝子タイプの違いから、日本人は白人に比べて、ビタミンD不足で直腸がんリスクが上がりやすい体質である可能性を示す研究があります。″(ビタミンDと大腸がん罹患の関連性について/国立がん研究センター
 
近年の研究により、日光曝露の不足によるビタミンDの不足は、骨のカルシウムの問題だけでなく、免疫が関係するガンなどの疾病にも関連があることが指摘されています。

 

 日の光は命の恵み

夜間勤務と乳がんの発生リスク

もう一点、とても興味深い内容だったのが乳がんと睡眠の話です。下に記した研究は、デンマークで、夜間勤務をしている看護師と、昼間勤務をしている看護師の乳がんの発生率を比べたものです。その中では、日中のみ勤務している看護師の乳がん発生率を1とすると、夜間の交代勤務もしている人は、乳がん発生リスクが1.8倍に上昇し、夜間勤務が常勤の場合だと、2.9倍にまで上昇することがわかりました。
Overall, nurses who worked rotating shifts after midnight had a significantly increased OR (1.8; CI 1.2-2.8) for breast cancer compared to nurses with permanent day work. No association was found in a small group of nurses with evening work and no night work (OR=0.9; 0.4-1.9). The subgroup of nurses with periods of permanent night shift in addition to rotating night and day shifts experienced an OR of 2.9 (1.1-8.0). For nurses working after midnight compared to nurses never ending work before midnight, OR in the third tertile of cumulative number of shifts was 2.2 (1.5-3.2). In an analysis of different rotating shift systems, the highest OR (2.6; 1.8-3.8) was observed for long-term day-night rotating shifts.
(Case-control study of shift-work and breast cancer risk in Danish nurses: impact of shift systems./PubMed)
 
日本でも乳がんの発生率は近年増加傾向にあり、年間約5万人もの人に発症しています。これは、16人に1人という高い数字です。はっきりしたことはまだわかっていませんが、乳がんはエストロゲンが高いほど発症率が上がるという報告があり、その関連性が指摘されています。
栄養状態がよく初潮が早まり、出産回数の少ない先進国の女性ほど、若年期からの排卵によるエストロゲンの上昇と、妊娠によるエストロゲンの低下がないため、絶えず高い濃度にあるということも一つの要因だと考えられていて、「乳がんは先進国に多いガン」とも言われています。
 
 
エストロゲンとともに先進国における乳がんの発生率の上昇理由として挙げられているのは、上記研究のような夜間勤務をする人に、乳ガンの発生率が高いという報告です。これは、寝ている間体内で生産されるメラトニンというホルモンに、ガンを抑制する力があるためだと考えられています。メラトニンには強力な活性酸素除去作用があり、細胞を傷つける活性酸素を無毒化したり、免疫細胞に直接働きかけ免疫反応を増強したり、ガンの増殖を抑制したりする作用があると考えられています。
メラトニンは、起床から14~16時間後で、辺りが暗くなるころに分泌が始まります。また光を浴びることでその分泌が止まり、体内時計をリセットする役割もあると考えられています。メラトニンは外が暗く、寝ている間に分泌されるホルモンなので、太陽が沈んだ時間帯にちゃんと睡眠がとれていないと、メラトニンが正常に分泌されず、人間が本来持っている、夜間にガンを抑制するシステムの機能を低下させてしまっていると考えられます。
 

cat nap/dirty fingernails
cat nap/dirty fingernails / thejbird

朝起きて太陽を浴びることが、前回お話したようにうつの予防につながり、やる気をアップさせるだけでなく、ガンの予防にも効果があるようです。そして夜、太陽が沈んだ後は、なるべく早く寝ることも、ガンの苦しみから私たちを遠ざける重要な要素なようです。
上記の研究結果をもとに、夜勤中に、看護師が積極的に仮眠をとれるような仕事の内容やシフトに見直し始めた病院もあるそうです。今や、私たちの生活にとって、夜間の仕事というのはなくせないものになってしまいましたが、より良い労働環境が整えられるよう、健康と利便性のバランスやその内容も考えていかなくてはいけないのかもしれません。
私たち人間は、日が昇るとともに活動を始め、そして日が沈むと休むという生活を何千年と繰り返してきました。私たちの体もそのリズムに合わせて健康を維持するシステムを作り出してきたのです。今後何百年、何千年後には、また新たなライフスタイルに順応した人間が出来上がっているのかもしれませんが、今の私たちは、私たちの先祖が送ってきた生活の中にまだ生きているのです。
もしあなたが、昼間太陽をしっかり浴びることができるなら、そして幸運にも夜お布団に入ることができるなら、1分でも長くその幸せを享受してくださいね。
 
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今日のように太陽が気持ちの良い日は、朝カーテンを開けて日の光を体で感じると、さっきまでぐずぐずとしていた気持ちもパーッと晴れて、がんばるぞーっという気になります。そんな単純な六本木店店長櫻井です。でも実はこれが単純な私だけの問題ではなく、ちゃんと根拠があるんです。

 

曇が鬱や自殺を増やす?!

雨の多いシアトルや、冬の日照時間が短いアラスカや北欧では、鬱病患者が多いそうです。それと関連したことで、とても興味深い記事をみつけました。なんと、日照時間が少なくなると、鉄道自殺が増えるそうなんです。
″寒水孝司 医学研究科准教授、角谷寛 滋賀医科大学医学部附属病院特任教授(京都大学医学研究科 元准教授)らの研究グループは、直前数日間の日照時間の少なさが鉄道自殺に関係することを示しました。「鉄道自殺の直前3日間あるいは7日間の日照が少ないほど鉄道自殺の危険が高いことが示されました。」(京都大学)″
まだはっきりしたことはわかっていないのですが、体内時計をコントロールしているメラトニンというホルモンが、日照時間が短くなることで、タイミングが遅れて分泌されたり、分泌が過剰になったりするために体内時計が狂ってしまい、だるさ、やる気の低下などが起こってしまうという可能性や、光の刺激が減ることで、セロトニンという神経伝達物質が減り、脳の活動が低下してしまうということが原因として考えられています。カーテンを閉め切った部屋で暮らしていると鬱になりやすいという報告もあるそうです。
 

眠りのメラトニンと活動のセロトニン

メラトニンは、脈拍、体温、血圧を低下させることによって睡眠と覚醒のリズムを調整し自然な眠りを作り出す、通称「眠りのホルモン」です。メラトニンは光を受けると分解されます。セロトニンは、体に適度な緊張感を与える興奮性の神経伝達物質です。これが減ってしまうと鬱症状がみられることがわかっています。ちなみに鬱症状に使われる抗鬱剤のデプロメール、パキシル、ジェイゾロフトは、このセロトニンを(ざっくりいうと)増やすお薬なんです。セロトニンは光を受けると増える性質があります。日の光に当たる時間が減ると、眠りのホルモンであるメラトニンが増加し、活動的にしてくれるセロトニンが減るので、やる気がなくなって鬱っぽくなってしまうんですね。鬱っぽくならないためには、朝は太陽を浴びて、メラトニンをしっかりと分解して、セロトニンを増やすことがとても重要なことなんです。
 

リズム運動でもセロトニンが増える

セロトニンは朝強い光を浴びることで増えますが、もう一つ増やす方法があります。それはウォーキングやランニングなどリズムを持った運動を行うことなんです。「ウォーキングが体にいいのはわかってるけど、そんな時間がない!」という方、セロトニンはリズムを持った運動で増えるので、呼吸でも、咀嚼でもなんでもいいんです。朝ご飯のときに噛む回数を最低30回増やすとか、毎朝1日5分でも座って腹式呼吸をするでも、足踏みでも、なんなら貧乏ゆすりでも(たぶん)いいんです。
セロトニンを増やすには、原料であるトリプトファンを多く含んだ食材を摂るのが良いでしょう。いくら太陽を浴びても原料がないと作られませんからね。トリプトファンはマグロやカツオなどの赤身の魚や、納豆、豆腐、豆乳など大豆製品、筋子、たらこ、アボガドや、お米にも多く含まれていますよ。

 

 

中医学では・・・

冬から春になって日照時間が伸びて、気温が上がりだすと、「陽気(ようき)」というエネルギーが高まると考えています。陽気とは大気中に存在する活動のためのエネルギーです。この陽気のおかげで、万物は生長し、変化することが出来ます。陽気が高まる春になると、動物も植物もそして虫たちも活動を始めます。草木は生長し、花は芽吹きます。陽気が少なくなると、気温は低下し、日照時間は少なくなります。季節は秋そして冬になります。1日では夜が陽気が少なくなる時です。
人の体では、体表を巡り体を護り、汗腺を開け閉めして体温を調節し、内臓を温めるなどをする「衛気(えき)」が陽気にあたるとされています。陽気は軽くて清浄なもので、外、そして上へ向かい、気持ちを高め、盛り上がらせ、強くしてくれます。衛気が低下すると、環境適応能力が低下し、汗をかきやすくなり、抵抗力が低下してカゼをひきやすくなったり、冷えたりしてしまいます。人体の臓腑というのは、ある一定の温度がないと活動することが出来ないため、衛気の不足で身体が冷えてしまうと、病気に罹りやすくなり、動きも緩慢になり、何をするにも億劫になってしまいます。
なので、中医学でも毎朝日光を浴びる事は、心と体を健やかに保つためにはとても重要なことと考えられています。

 

 
太陽の強いエネルギーには、私たちの体と心を整える力があるようです。雨の日や曇りの日が続くと何となく気分が滅入るな~っていうのは、何となくじゃなく、それは太陽不足せい、かもしれません。もし気分がふさぎがちで、体調もいまいちすぐれないとき、そして日ごろからそうならないためにも、曇りでもセロトニンを活性化するのには十分な光の量がありますので、毎朝カーテンを開けて日の光を浴びるようにしましょう。太陽が出ている日は貪欲にそれを吸収しましょう。そして散歩でもランニングでも、呼吸法でも、噛む回数を増やすでもなんでも、リズム感のある運動を生活の中に取り入れるようにしましょう。今日からGWです。ショッピングもいいですが、公園で日の光をあびて寝っころがるのもいいですよ~
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2014/04/26

つらいお腹の張りをどうにかしたい!「膨満感」のお話。

お腹にガスが溜まる。お腹が張って苦しい。そういったご相談を受けることがあります。健康な人から見ると、そんなのガスが溜まってるだけでしょ?っという情多飲なんですが、この溜まってるガスが抜けないっていうのは、けっこうつらいもんなんですよね。
お腹が張る、この原因はなんなんでしょうか。
 

ガスってどっから来てるの?

食べ物を食べるときに一緒に飲み込んでしまった空気。これも少ないですがお腹が張ってしまう理由の一つです。その他には、胃液が膵液によって中和される時に発生するガス、これもまた少ないですが、原因の一つです。
もう一点、腸内細菌が発生するガスというのがあります。良く聞く善玉菌と言われる乳酸菌や悪玉菌と言われる大腸菌などが【腸内細菌】です。これらの細菌の活動により、二酸化炭素やメタンなどのガスがつくられます。眼に見えないような小さな菌の活動によって発生したガスですが、体内の主なガス発生原因はこれら腸内細菌によるものです。
 
余談ですが、腸の中には、100以上もの種類の細菌がいて、その数はなんと100兆個とも1000兆個とも言われています。腸内に居る最近ぜーんぶを集めてみるとその重さはなんと1キロから2キロにもなるそうなんですが、一つ一つでは重さも何もないようなものが1キロを超える一塊分もあるなんて、驚きというか、ある種気持ち悪ささえ感じてしまいます。
でもこの腸内細菌がいてくれるおかげで、私たちは食べたものを分解して吸収したり、有害物質を無毒化したり、脂肪を分解・消化・排泄したりなど、たくさんの仕事を行えるわけです。ちなみに生まれたばかりの赤ちゃんの腸内は無菌状態です。お母さんの子宮内は基本無菌なので当たり前なんですが、これが生まれて数時間もすると菌に侵されていきます。大腸菌やら腸球菌がふえはじめるんですね。そして赤ちゃんが初めてお母さんの母乳を飲みはじめて、24時間後ぐらいには一気にその数を増やして1000億個にもなると言われています。
 
健康な状態だと、ガスは発生した分ちゃんと排出され、お腹が張るようなことはないのですが、もし増えすぎたり、排出しきれなかったりすると、ガスが溜まってしまって、ゴロゴロとなったり、お腹が張って苦しく、膨満感を感じるようになります。

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ガスが増える原因としては、、、

①早食い
空気を飲み込む量が多くなります。
②悪玉菌の増加
高たんぱく・高脂質の食べ物は、悪玉菌の大好物です。腸の掃除をしてくれるはずの食物繊維も、腸が働きが低下して入りたり、すると逆に悪玉菌のエサになるので注意が必要です。
③腸の動きが弱い
ストレスによって腸がうまく動いておらず、排泄がうまくいっていない場合などでも悪玉菌が増えてしまう原因になりますし、ストレスを感じると緊張スイッチが入ってしまい、消化活動はリラックスしているときに行われているので、腸はうまく働けず、ガスをきちんと排泄できません。

④お腹を締め付けすぎている
きついズボンや、デスクワークなどでずっと同じ体制をしていると、お腹を締め付けてしまい、物理的に腸の動きを邪魔して、ガスも排泄しきれず、溜まりやすくなります。
 

その他、イモ類や豆類などが多いとガスが発生しやすくなったり、コーラなど炭酸飲料もや、下剤の多用による腸の動きの低下、内臓の下垂、ガスが溜まる原因になります。女性では、女性ホルモンの影響によって溜めこみやすい時期があるため、ガスが溜まりやすくなることもあります。
腸閉塞や妊娠、腫瘍、腹水など、実際に詰まってしまっている場合もありますので、一度病院で検査をしてもらうことも忘れないです下さいね。

 

中医学的にみるお腹のはり

中医学では、「張る」症状を、気の流れが悪くなった状態、気滞(きたい)状態と考えています。気は本来、体を駆け巡っているのが正常な状態です。気はエネルギーであり、体を動かす原動力であり、体の働きや機能のことです。気の流れが滞ってしまい、スムーズには流れにくい状態になると、体の働きは低下し、うまく機能しない状態になってしまいます。胃腸の働きも低下してしまうので、ガスの排泄がうまくいかず、お腹が張って苦しくなります。
気の流れが悪くなる原因としては、流れるだけの気が十分にない場合、流れが邪魔されている場合、そして、流れをコントロールしている機能の低下などが考えられます。
 
流れるだけの気が十分にないのは、胃腸機能の低下か、気の原料が足りていないため
胃腸機能が弱っていると、食べたものからしっかり気を作り出せません。また、気の原料となる食べ物をしっかり食べないと、やっぱり足りなくなってしまいます。加工食品が多い食生活は注意が必要です。胃腸は冷たいもの(サラダ、刺身、アイスクリームなど)や水分(飲み物全般、氷の入った飲み物、冷蔵庫から出したばかりの飲み物など)に弱いので、それらが多い人は注意。
 
気の原料になるもの
肉類、朝鮮人参、山芋類、エビ、うなぎ、栗、米、もち米、卵、りんごなど。
 
胃腸機能が弱い人は、
山芋類などをする下したとろろを味噌汁や野菜スープに入れたもの。お好み焼きもおススメ。
普段から冷たいものを避けること。そして良く噛むことを心がける。とにかく温かいものを。
 
 

飲食物の停滞や冷え、気血の滞りが動きを邪魔する

胃腸の処理能力を超えるほどの食べ過ぎや飲みすぎは、消化されない飲食物の停滞や便秘を招きますが、何気ない普段の食事も消化しにくい高たんぱく・高脂質(揚げ物が多い、肉類が多い)のメニューでは胃腸は疲れて、動きも悪くなってしまいますし、未消化のものが停滞してしまいます。冷たいものの摂りすぎや慢性的なお腹の冷え、寒い外気温による冷え、これらも胃腸の動きを妨げ、お腹が張る原因となります。その他、怪我や腹水などでは血や水の流れが滞り、その影響から気の流れも滞ってしまうこともあります。
食後のお腹のはり、ガスやげっぷが出ると楽になる、便秘、吐き気、痰が多い、下痢しやすい、下痢すると楽になるというのこのタイプです。
温かいもの、消化に良いものを食べるようにしましょう。火が通った野菜の多い和食を腹八分目。カタカナの食材やメニューを抜くことも大切です。早食い、大食いは病気の元です。どうしても食べ過ぎてしまう人は、味噌汁や野菜スープなどを先に飲んでしまいましょう。胃が水分で満たされれば、その分食べ過ぎを抑えられます。
 
 

気の流れをコントロールできないのは、肝の機能低下

肝には、情緒の安定や、睡眠など、リラックスさせる機能と、気が体内をスムーズに流れるようにコントロールする機能があります。ストレスが多く、肝に負荷がかかりすぎると、肝は気の流れをスムーズに保てなくなります。その結果、胃腸もうまく動かなくなってしまい、お腹が張ってしまいます。
イライラしやすい人や、ストレスがたまるとお腹が張る、生理前に胸の張りや痛みを感じるというのはこのタイプです。
このタイプは、リラックスが大切ですので、こまめな発散を心がけましょう。ストレスが溜まってしまうと、考えもネガティブになってしまい、さらに落ち込んでしまうので、とにかく早めの発散を。スポーツをする、散歩をする、映画をみる、ゆっくりと半身浴するなども良いでしょう。早めの睡眠も心がけましょう。
 
 

 

 
ストレスが多く、冷たいものや加工食品、ファーストフードなどが簡単に手に入る現代の私たちのライフスタイルは、気の巡りを悪くしてしまいがちです。お腹の張りは、食べ過ぎや、偏食、冷たいものの摂りすぎやストレスなどが中医学で考えられる主な原因です。まずは普段の生活を見直してみてください。食成生活では、気の巡りを助ける食材を積極的に摂りましょう。

気を巡らせるには

香りのある春菊や三つ葉、せり、 セロリ、パセリ等の香味野菜を積極てきに摂るようにしましょう。香り成分が気の巡りを改善してくれます。その他、オレンジ、みかん、春菊、苦瓜、ミント、アサリ、シジミ、イカ、グレープフルーツ、ブドウ、レモン、レバーなどもおすすめです。
 
 
 

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2014/04/24

【小児の発育不全と中医学】入学式をみて思う。

先日は入学式のだったようですね。緊張した顔、うれしそうな顔、怖がっている顔、いろんな表情の子供たちを見かけました。表情はもちろんみんな背丈もそれぞれ違います。子供の成長はほんとに早いものですが、この「成長」には、中医学では「腎」の強さが関与していると言われています。中医学の「腎」とは、いったいどんなものなのでしょうか。


入学式 / hirota_kenichi

「腎」とは、、、

「腎」とは、生長と発育、生殖を司る臓器で、エネルギーである「精」溜めている生命の泉です。中医学の「腎」とは、西洋医学でいうところの、泌尿器系、生殖器系、ホルモン代謝系、カルシウム代謝系、免疫などに関わる臓器です。また、「腎は精を蔵す」といい、生命エネルギーの源とも考えられています。そして骨や歯の成長、そして脳の機能も、この「精」無くしては正常に行われません。人の成長、発育、そして老化と健康は、腎の精の充実度合いにより決まってくるというのが、中医学の考えです
ちょうど小学校に入学するぐらいの齢、中医学でいえば、女の子は7歳ぐらい、男の子は8歳ぐらいになると、歯が永久歯に生え変わる時期と言われており、ちょうど「腎」が充実し始める時期です。腎は、生長、発育、生殖を司る臓器の一つで、私たちが生きていくための、エネルギーの源でもあります。中医学には、「 腎主骨」(「腎」は骨を司どる)という言葉と、「歯為骨之余」(歯は骨の余りである)という言葉があり、歯は、云わば骨が露出した部分なので、歯を見ることで、骨の状態、しいては腎の状態がうかがい知れるというわけです。
 
 
 

老化と成長と腎の精

人は誰しも平等に齢をとりますが、背が伸びる人伸びない人、歯や骨が強い人弱い人、毛髪が豊かな人薄い人、精力の強い人弱い人など、人それぞれ異なった特徴をもち、その成長や衰退の度合いは様々です。同じ年齢の方でも、腰が曲がっている人やまっすぐな人、髪が真っ白な人とそうでない人もいます。その違いの大きな部分で腎の充実度が関わってきています。腎の充実度とは、生命エネルギーである「精」の充実度です。精がたっぷりとあれば、腰はしっかりしており、髪は豊かで、歯も骨も強く、頭もはっきりして、見た目も若々しく見えます。また「腎は髄を生ず」と言われ、骨髄や脊髄をつくっています。髄は精からつくられており、それが集まったものが骨となります。また脳は「髄海(ずいかい)」と呼ばれ、腎が精に満たされ、ちゃんと機能していることが記憶や思考などの脳の機能を維持するためにも重要です。
 
前回の「美しい髪の毛を育てる中医学」でもお話しましたが、腎の精には、父母からもらった「先天の精」に加えて、飲食と呼吸から生まれまた「後天の精」があります。精は7~8歳ぐらいから徐々に充実し始め、20代後半から30代にピークを迎えて、30歳を過ぎたあたりから減り始めて、身体的にも徐々に衰えを感じるようになると考えられています。この生命エネルギーが衰えた状態を「腎虚(じんきょ)」と言います。腎虚とは要するに老化のことです。老化は誰にも等しく訪れるものですが、腎の精の充実度により、腎が衰えるスピード、老化のスピードには個人差が出てきます。40代を過ぎてからの腎の衰えは誰しもが感じられることですが、40代手前や、子供の腎の衰え(腎虚)は、生命エネルギーの不足を意味しており、対策が必要です。


龍山寺老人 / SUNG HSUAN WANG

腎の弱さを補う補腎薬

腎を補う漢方薬に「補腎薬(ほじんやく)」というものがあります。補腎とは、腎を補うということ。補腎薬はそのための薬です。腎を補うには、腎の陰と陽を補う方法があります。陰と陽は上記の精をもとにつくられます。陰と陽の基本的な働きとは、「陽は温煦を主り、陰は涼潤を主る。」なので、冷えを感じるような場合は、陽を補い、乾燥やほてりを感じる場合は、陰を補うというのが腎を補う場合の基本です。陰と陽の説明は余りにも長くなるので簡単に説明すると、陰と陽とは、人体の生理機能環境を整え維持するものです。陽気は主にエネルギーで「動かす」もの「変化をもたらす」もの、そして温かいものです。陰は「形ある」もので、栄養に富んだ潤いや水分、血などを指し、冷たいものです。


P1090197 / andieyywong

 

冷えを伴う腎陽の不足には「八味地黄丸」

代表的な補腎薬に、「八味地黄丸」という処方があります。別名「腎気丸」または「金匱腎気丸(きんきじんきがん)」と呼ばれる有名なお薬です。これは、腰やひざのだるさ、耳鳴り、めまい、健忘など腎の衰えの症状に、手足の冷え、寒がり、むくみ夜間多尿などの陽気の不足がみられる場合に使われるお薬です。生薬の構成内容を見てみると、地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂枝、附子から成り立ち、滋陰、補血の地黄、補益肝腎の山茱萸補気健脾の茯苓の「三補」と、それに対し「三瀉」の清肝火、清熱涼血の牡丹皮、瀉腎火、清熱利水の沢瀉、利水滲湿の茯苓でバランスをとっています。補とは補うという意味で、瀉とは、余ったもの、不必要なものをとり去るという意味です。附子と桂枝は全身の機能を活発にし温めるために入れられた生薬で、全体を見ると、腎陽を助け、冷えからくる様々な症状を改善するお薬といえ、主に大人や高齢者にみられる冷えを伴う様々な症状の改善に使われています。
 

小児の発育不全を改善する「六味地黄丸」

腎陽の不足を改善する八味地黄丸に対して、腎の陰の不足の改善を主眼に置いた「六味地黄丸」という処方があります。これは上記の八味丸から桂枝と附子を抜いた処方で地黄、山茱萸、山薬の三補と、沢瀉、牡丹皮、茯苓の三瀉から成り立っています。生薬が8つではなく、6つなので六味地黄丸です。さらに「六」には「陰」や「水(腎と置き換えられる)」という意味があり、その名前が付けられたと言われています。
中医学では小さな子供は「純陽」と言って陽の塊だと考えられており、子供の陽気を強めることは、熱性の副作用が出やすくなってしまうと考えられています。子供の腎を補う場合は、腎の陰をもって補う必要があり、補陽の生薬である附子と桂枝は邪魔になったので、それらを抜いた六味地黄丸がつくられました。
六味地黄丸は元々、小児の先天的な虚弱体質や発育不良を改善する処方です。歯がなかなか生えない時や生えてもぐらぐらしている、骨の弱りのクル病や足腰が弱いなどや精神発達の遅延などを改善するために使われています。六味地黄丸は腎の陰を補いますが、根本的には、腎の精を補う漢方です。
 
六味地黄丸は長期に使われると内分泌系を調節する作用もあるため、六味地黄丸をベースにした杞菊地黄丸や麦味地黄丸、知柏地黄丸などの補陰の処方は子宝相談の時に多く使われています。その他、その陰(栄養に富んだ潤い)を補う作用を持って、大人のほてり、眼精疲労、耳鳴り、めまい、口や喉の乾燥やそれに伴う咳などにも、腎の弱りを改善する薬として幅広く使われています。


Cuties / travel oriented

中医学では、人は生まれてくるときに腎の中に、一生分の生命力の可能性を宿して生まれてくると考えており(先天の精)、もし腎の精が不足して生まれてきたら、長生きできないと考えていました。1400年ほど前に書かれた小児科の専門書、『小児薬証直訣』には、腎虚の人は64歳以上生きることが出来ず、不摂生をしたらさらに寿命は短くなると書かれています。六味地黄丸はその不足を補うことで、一般的に近づけようとした処方です。今ではそこから派生した包剤もたくさんあり、さらに細かに症状や体質に適応できるようになっています。
発育不全がみられる腎が弱い子供には、腎を補い、発育、発達を促す。それがしいては、大人になったのちの健康の維持や、寿命を延ばすことにもつながると中医学では考えています。
もし病気がちな子、生長の発育が芳しくない子、骨や関節が弱い子、小さいころからでも出来ることは有ります。今後の心配事を抱える前に、一度、漢方薬局で相談してみてくださいね。
 

2014/04/09

【自然と病気のつながり】のお話。「寒い日や風が強い日に体調が悪い」そんな方必見です。

みなさまこんにちは。イスクラ薬局六本木店店長櫻井です。
昨日4月6日は、『寒の戻り特異日』だったそうです。
※【寒の戻りの特異日】 
 寒の戻りが起こる確率の高い日。
 寒の戻りとは、春になって気温が上がる時期に突然やって来る寒さのことで、
 大陸からの寒波・北東気流による冷え込み・移動性高気圧による夜間の冷え込み等によって起こる。
ぴったりあたってましたね。天気なんて毎日違うもんだと思ってましたけど、繰り返されているんですね。確かに昨日は風が強くとっても寒い一日でした。冬かと思うぐらい寒かったですね。おかげで鼻水が止まりませんでした。頭もじゃっかんボーっとしてましたね。左後頭部に鈍痛も感じていました。特に思い当たる節は無いのに、昨日はいろんな症状が出ていて、調子悪かったです。
昨日のように風が強くて寒い日なんかは、悪寒や冷え、鼻水、くしゃみ、ふらつき、頭痛、そしてイライラや落ち込みなど気分症状も出やすいお天気なんです。ということで今日は、寒さや風なども病気の原因になる!というお話をしたいと思います。中医学から見た「自然と病気のつながり」のお話です。
 

中医学的 病気の要因

中医学には、気象の状態も『外因(がいいん)』と言って、病気を引き起こす一つの原因であるという考え方があります。自然界には、気象の変動を左右する風(ふう)、寒(かん)、暑(しょ)、湿(しつ)、燥(そう)、火(か:あるいは熱)の六つの現象があり、これらを「六気(ろっき)」と呼んでいます。この六気が病気の発生原因となる場合には「六淫(ろくいん)」と呼ばれ、人体を外から侵す因子、「外邪(がいじゃ)」になり、それぞれ、風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、暑邪(しょじゃ)、湿邪(しつじゃ)、燥邪(そうじゃ)、火邪(かじゃ)または熱邪(ねつじゃ)と呼ばれています。
これら外因が原因で発生する病気を「外感病(がいかんびょう)」と呼びます。外感病は、一般的に季節性があり春は風病、夏は暑病(火と湿の邪気が重なりおこされる暑気あたりのこと)、秋は燥病、冬には寒病が多いとされていますが、最近では、夏場のエアコンや冷たいもの摂りすぎなどによる寒病や、冬場の暖房器具による乾燥などによる燥病など、人口的な環境による外感病も存在します。
これら六因の外邪は、毛穴や喉、鼻の粘膜から入り込み、奥へ奥へと侵入していきます。その際、人体の抵抗力からの攻撃を受けつつ、戦いながら進んでいきます。その抵抗の結果が熱だったり、炎症だったりなどの症状となります。抵抗力が強いと、身体の表面部分で追い出すことが出来ますが、弱いと、外邪は内臓まですすみ、体調を大きく狂わる原因となります。
六因の邪気は、熱邪、寒邪など単体で人体を襲うよりも、風と熱、風と寒など複数の邪気が合わさって人体を襲うことが多く、さらに病状が進むことで、初めは寒気や冷えなどの寒邪の症状(寒証)がみられていたものが、徐々に発熱、強い悪寒など熱邪の症状(熱証)に変わることも多々あります。
体内の陰陽や気血水(津液)のバランスの崩れ、臓腑の機能低下等を起こすことによって、外邪に侵されたときと同じような症状が現れることがあります。これらは、内風、内寒、内湿、内熱と呼ばれています。
 

秋冬は乾燥に注意

春は風邪(ふうじゃ)に注意

「風」は春を代表する六気。それが体内に侵入し悪さを働くと、風邪(ふうじゃ)に変貌します。風邪は風に似た性質を持ち、風邪に侵されると、変化の激しい症状、流行性(流行って、無くなる)、症状がでる範囲が広く種類も多い、病変部痿が変化する・移動するなどの特徴があります。また、風邪はほかの邪気を伴いやすいという特徴もあり、中医学の古典、黄帝内経にも「風為百病之長(風は百病の長となる)」記されています。
風邪の主なタイプには、傷風、風寒、風熱、風痺(ふうひ)、内風の5つがあります。
傷風とは、風が単独で引き起こした疾病で、風にあたるのを嫌い、厚着したがる「悪風」、発熱、何もしないのに汗が流れ出る「自汗」、頭痛、鼻づまり、くしゃみ、咳、喉の痛みなど、軽いカゼを引いたような症状がみられます。
風寒は、風邪に寒邪がくっついて人体に侵入し、悪さをしているもの。初期は悪寒が強く発熱は少なく、頭痛、筋肉痛、鼻づまり、咳などがみられます。汗も通常は無く、出ていても少しです。
風熱は、風邪に熱邪がくっついて人体に侵入し、悪さをしているもの。熱寒が強く、寒気は少ないのが特徴。喉の腫れて痛み、咳なども出ることがあります。
風痺は、遊走性の関節痛が特徴です。遊走性とは、発症部位が固定せず移動性を伴っているものです。風痺は、風、寒、湿が合わさって人体を襲い、関節や筋肉の痛みを引き起こす痺証(ひしょう)の一つで、風邪の影響が強いものを指します。寒くて雨の降っている春の風の強い日には関節痛や頭痛などが起こるというのが、風痺です。
内風は、臓腑の機能失調や、気血水のバランス異常、ストレスなどによる、高血圧、めまい、イライラ、脳卒中、痙攣やひきつけなどを指します。原因としては、五臓の肝の陰(栄養分に富んだ潤い成分や血液)が発熱や目の使い過ぎ、出血、月経過多、睡眠不足、飲食の不摂などにより過度に消耗され、肝の陽気(エネルギー)を安定させることが出来ず過度に亢進した状態を作り出した結果、陽気が体上部に向かって昇ることで起こされる「風」です。これが原因でめまいや痙攣、脳卒中、熱性痙攣などがみられるようになります。
春には、私たちを取り巻く自然も、草木は芽吹き、動物たちも目を覚ます季節で、陽気が高まる季節です。それだけに風が吹きやすく、また、内風傾向の人は外の「風」の影響を受けやすい季節なので、風が強くなる春にはめまいや頭痛、気分障害などの症状が出やすくなります。
 

Wind Farm at Upolu
Wind Farm at Upolu / Yinghai

風邪から身を守るには

それぞれに対処法がちがいますが、全般的に言えるのは、肌の露出を少なくすることです。風邪は毛穴や喉、鼻の粘膜から体内に侵入してきます。露出しやすい、首元、足首、手首などはしっかり守りましょう。夏場、汗をかいたままエアコンの前で風に当たると、無防備に開いた毛穴から風邪と寒邪が侵入し、筋肉や関節の痛みを起こさせたり、お腹を壊したり、悪寒・悪風・発熱・咽頭痛などのカゼの症状に苦しむことになったりするので、注意が必要です。
内風に関しては、若干対処が違います。上に書いた通り、内風は肝の血や潤いが失われたことで陽気を抑えらず以上に亢進した状態(一種の緊張・興奮状態と言える)や、肝の機能低下で、正常な状態では滞りなく流れているはずの気の流れが悪くなり、熱を帯びて陽気とともに上昇し、風を生み出したことによるものなどがあります。よって予防法としては、肝の血・陰(潤い)を常日頃しっかりと補充しておくこと、血・陰(潤い)の損傷を最小限にすることなどが第一です。それと同時に、肝の気の巡りを回復させ、気の巡りを低下させるストレスはこまめに発散することも大切です。
肝の状態は爪に現れるため、肝の血が不足すると爪が薄くなったり、ツヤが悪くなったりすることがあります。また、「肝は目につながる」といわれ、目は肝と深いつながりがあると考えます。肝の血が十分蓄えられていれば、 栄養や潤いがいきわたり目も良く見えるようになります。過労や老化などで肝の働きが低下したり、肝の血が不足すると、 目の疲れや目のかすみ、視力の低下、ドライアイなどの目の症状が現れることもあります。


Spring Storm / Hugh Nelson

血を補う食材:鉄分の多いレバー、牡蠣、ほうれんそう、小松菜、赤い色の食材のトマト、小豆、プルーン、ナツメ、ザクロなど。 ミネラルが豊富な黒い色の食材(黒豆や黒ゴマ、黒きくらげ)も補血に役立ちます。
陰を補う食材:豚肉、豆乳、レンコン、白ごま、黒ゴマ、松の実、ハトムギ、菊花茶、白きくらげ、きゅうり、トマト、梨、ハチミツ、サンザシ、クコの実、クワの実、トマト、メロン、レモン、梨、桃等。その他、甘い食べ物と酸っぱい物を組合わせて食べることで陰が作られると考えられています。
 気の巡りの低下におススメの食材:香味野菜(葱、三つ葉、生姜、パセリ、セロリ、春菊、香菜など)、オレンジ、みかん、グレープフルーツ、柚子、レモン、キャベツ、苦瓜、ミント、アサリ、シジミ、イカなど。
上記の食材を毎日の食事に摂りいれるようにしましょう。そして気の巡りが悪くなって、内風が起きやすくなっていると、熱もこもりやすくなっているので、体を過度に温めるもの(羊肉など)や、辛味の強すぎるもの、お酒の飲みすぎは症状をさらに悪化させるので、摂りすぎないようにしましょう。春は陽気が高まるので、発散させ易い香味野菜を出来るだけ取るようにしましょう。春の山菜などは、陽気の高まりによる過剰な熱をとり去り、気を巡らせてくれるものが多いので、積極的に摂るようにしましょう。
そして、働きすぎに気をつけ、陰が補充される時間帯の夜にはちゃんと眠る事や、過剰な性行為、軽い運動は気を巡らせるので、効果的ですが、激しい運動やサウナ、長時間の入浴などによる汗の消費は避けるようにしましょう。


Spring Storm Study / GollyGforce – Living My Worst Nightmare

季節の変化は私たちに四季を感じさせてくれると同時に、気持ちや体の影響をも、もたらしています。うまく順応するためには、日ごろの備えが肝腎です。明日はちょっとまた温かくなるようですので、陽気が高まり、内風が起きやすいともいえます。今日の夜は香味野菜をとって、ぬるめのお湯で長すぎない半身浴をして、しっかりと寝て、明日に備えましょう。心地の良い春を過ごすために、養生してくださいね~。

2014/04/07

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