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実は生だと吸収率が悪い。血を養い、不眠やめまいによい「卵」のお話

こんにちは。櫻井です。今日10月30日は、「卵かけご飯の日」だそうですので、「卵」のお話をしてみたいと思います。私も卵かけご飯は大好きです。留学時代、帰国した際に必ず食べていました。アメリカでは生で食べられるぐらい新鮮な卵は見つけられませんでした。割ってみると見た目に平べったくなっていて、新鮮さが感じられずとても生で食べる気にはなれませんでした。でももしかしたら高級スーパーなどにはあったかもしれませんね。
 


The Essence of Egg / bgottsab

食べ物の卵のことを書く場合は「玉子」と表記するのが一般的ですが、これは「卵」と書くとどうも動物っぽい感じがするからだったようです。卵が食べられるようになったのは江戸時代ごろ。当時は仏教の影響からか、肉を食べるのはとても稀でしたが、いつまでたっても孵化しない卵は、どうも「生き物じゃない」と考えられていたふしがあり、鶏肉よりも玉子の方が抵抗なく食べられ始めます。そうして採卵用にニワトリを飼うようになっていったそうです。しかし玉子はと当時はまだまだ高価なもの。卵かけご飯を庶民が口にすることはなかったようです。玉子を生で食べるようになったのは、近代に入ってから、1877年頃、従軍記者として活躍していた岸田吟香が初めてだったそうです。
 


康竜 卵かけご飯 / puffyjet


E.G.G (鶏卵) / onigiri-kun

卵は一つで一つの細胞です。卵は卵白と卵黄からなっていて、栄養価が高いのは卵黄の部分です。卵は生で食べるより、火を通して食べたほうがタンパク質が吸収されやすく、火を通したものは生で食べるのに比べて倍ほどタンパク質の吸収率が高まります。テレビなどでボディービルダーが生で卵の白身だけを大量に飲んでいるのは、消化にも悪く、さらに白身にはタンパク質も少ないので、良質なたんぱく質の摂取法としてあまり効果的とは言えません。卵を割ると白いひものような部分があり、あれを嫌って取り除く方もいらっしゃいますが、あの部分が特に消化に悪いとか、人体に悪い影響があるということはありませんし、あの部分だけ栄養価が高いわけでもありません。あれは、黄身を白身の真ん中に固定する部分で、あれが無いと黄身はすぐにいたんでしまいます。卵白はほとんどが水分で、弱い抗菌性があり、卵黄を守っています。卵黄は、50%の水分と30%の脂質、そして17%のタンパク質からなっています。必須アミノ酸も豊富なので、是非黄身を食べましょう。
市販されている卵には殻が白いものと、赤いものがありますが、栄養価的に違いはありません。白玉が無精卵、赤玉が有精卵という俗説も本当ではありません。卵の鮮度は割ってみるとすぐにわかります。新鮮なものは、白身も黄身もハリとふくらみがあります。古くなったものは、白身が水溶化してしまって盛り上がりが無くなってしまいます。卵黄も同じく平たくなります。卵の色は、ニワトリのエサを調節することでいろんな色が付けられるそうなので、割った時の見かけだけでは栄養価を図ることはできません。
 


egg / 摄影师Ring.R (食品,产品,服装摄影)

 

卵を中医学的に考えてみます

卵黄は寒熱の偏りのない平性で、卵白涼性で、余分な熱をとってくれます。味は甘で、卵白清肺利咽、清熱解毒の力があり、卵黄には滋陰養血、潤燥熄風、健脾和胃の力があります。身体を潤し、空咳や喉の乾きを癒してくれます。豊富な栄養バランスで、「血」を養い、不眠やめまい、こころの不安定なども良くしてくれます。黄身はコレステロールを気にして避けていらっしゃる方もいますが、黄身の中にはレシチンとよばれれうコレステロールを分解する酵素も含まれ、動脈硬化を予防するといわれています。1日3個を12週間続けて食べると、コレステロール値が低下したという実験結果もあるぐらいです。1日1~2個ならまったく問題ないどころか、必須アミノ酸も取れ、少し健康になると考えられます。卵はほぼほとんどの栄養素を含む「ほぼ完全食品」ですが、ビタミンCと食物繊維は含まれていませんので、これを補う食品を一緒に食べると良いですね。吸収率を考えるなら、黄身は半熟で、白身は完全に固まった状態がベストです。生や温泉卵は胃腸の弱い人、吸収率を気にする場合には不適当です。調理して食べてください。
 


卵焼きときんぴら / amadeusrecord


煮卵 2.0 / Takanori Ishikawa

2013/10/30

胃腸によし 喉によし 「蓮根」のお話

先週までのぐずぐずお天気が嘘のように週末から秋晴れが続いていますね。お天気がよいとさぁ何しよう??と前向きに物事を考えやすくなる単純な店長櫻井です。どうもこんにちは。お天気は良いのですが、空気の乾燥が一段と増してきましたね。さっそく喉の奥がひっつく感じがあり、板藍茶、板藍のど飴が欠かせません。
 

 
今日は「蓮根」のお話をしたいと思います。蓮根は根と書きますが、あれは根ではなく、蓮の地下茎で茎です。ちなみにジャガイモも茎なんです。
蓮根の旬は10月から3月ぐらいまでのまさに今。新蓮根は8~9月頃だそうです。蓮根は寒性なので、8~9月なら暑気払いにもよいですね。蓮根料理と言えば、私の中では『からし蓮根』が真っ先に思い出されます。あれを初めて食べた時の衝撃ったらなかったです。蓮根の穴にお肉を詰めたりするのは想像がついて、すんなり受け入れられましたが、まさか「からし」を詰めるとは考えもつきませんでした。しかもこれがおいしい。初めて食べたのは友人の熊本土産だったんですが、その発想力にびっくりしたのを覚えています。その味が忘れられなくて都内で散々探しましたが見つかりません。そこでずいぶんとたってから、たまたま会合で呼ばれたとある熊本料理屋さんで発見してやっと食べられると喜んで注文しました。すると熊本弁バリバリの女将さんが、「うちのはほんとに辛いよ。たくさん頼んで大丈夫?」とおっしゃるじゃありませんか。それでも「好きなんで大丈夫です!」と人数分だしてもらったんですが、これがほんっっとに食べられないぐらい辛いからしが使われていて、涙を流しながらがんばって食べた記憶があります。でも味はやっぱりおいしかったです。もし「からし蓮根」未体験でしたら、是非食べてみてくださいね。郷土料理ですので、和からし、白みそ、小麦粉があれば手間はかかりそうですがつくれそうです(たぶん)。
 


芥子蓮根 / ttanabe

蓮根を中医学で考えると

先ほども書きましたが、蓮根寒性です。味はで、脾胃(胃腸系)と、に主に影響します。生津止渇、清熱潤肺、涼血行瘀、健脾開胃、止瀉固精の力があり、肺にこもった熱をとったり、潤いを生んで乾燥をいやしたり、乾燥や「血」にこもった熱などによる肌トラブル、下痢や便秘、胃腸のトラブルに良いとされます。尚、「寒性」は、「涼性」よりも強く体の余分な熱を冷ましてくれる力があるので、発熱時や喉の乾燥、顔が赤い、喉が痛い、便秘などの時に多く食べると良いでしょう。皮にも有効成分がたっぷり含まれるので、この時期の喉の乾燥からくる痛みなどには、皮ごとすりおろしたしぼり汁を飲むのをお勧めします。蓮根はすぐ色が変わってしまいますが、その色をかえる成分の「タンニン」はポリフェノールの一種なので、抗酸化作用があります抗酸化物質には、血圧を下げたり、炎症を抑える力があるとされています。最近の研究ではアレルギー症状の緩和に良いそうで、花粉症対策にも一役買ってくれそうですね。
蓮根は寒性なので、もし生のままたくさん食べると冷えてしまいます。なのでこの時期には火を通して食べるか、熱性のものと一緒に食べる事をお勧めします。先ほどの「からし蓮根」は、蓮根の寒性がからしの熱の力で緩和されるので、まさに理にかなった食べ方と言えますね。ちょっと唐辛子を足したり、胡麻を足したりする「蓮根のきんぴら」も「からし蓮根」同じく胡麻や唐辛子の熱の力で寒性が緩和され寒い季節にも優しい食べ方ですね。
 


蓮根のきんぴら / [puamelia]


辛し蓮根 / Koji Horaguchi

蓮根は、高血圧予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、動脈硬化予防、胃もたれ、便秘改善に向いています。ほかにも高血圧予防によいとされるカリウムや、便秘改善に効果的な食物繊維も含まれていますので、胃腸の調子が悪い、乾燥からから、便通がいまいちよくないという方にもおすすめです。身体を冷やす性質があるので、生で食べるときは注意してくださいね。脾を通して温めて食べたり、胡麻やからし、唐辛子など温めるものと一緒に摂ればこの時期でもおすすめです。蓮根を選ぶときにはふっくらとして艶があり、変色のないもの、穴が小さくて肉厚のものが良いですよ。蓮根、ぜひお試しくださいね。
 

2013/10/28

ストレスや邪気を発散する「金木犀」のお話

今日はまた寒いですね。この台風が去った後は、台風一過の心地よい日差しが続きますが、気温は日に日に低くなり、いよいよ冬の到来を感じさせる時期となりそうです。こんにちは、櫻井です。私は寒がりなので、数日前から冬用コートを着用しています。真冬になったらどうしようかが今の悩みです。とりあえず身体を温める漢方を飲み始めます。
 
今日のネタをいろいろ探していたのですが、こう毎日長々とブログを書いているとそう簡単にネタも浮かんでこなくなります。最近はTwitter(@iskraroppongi)でリクエストがあった冬瓜冬の養生人参などを書いてきましたが、それも無くなってしまい、んじゃなにをかこうかな??っとイスクラ直営他店舗のブログを覗いてネタ探し(^^;)。そうすると目に留まったのが「金木犀」でした(中野店北原さん、ネタ拝借しました!)。この「金木犀の香り」ってみなさんいつごろ気づいたんでしょうかね。もう大人の常識として誰しもが知ってるっという雰囲気を感じていますが、「あ~これがあの金木犀なんだ。」と理解できたの20代も後半に入ったころでした。なんとなくこの季節になると感じる「香り」には気づいていましたが、この香りがあの金木犀さんだったなんて。
 


/ mk*

 
中国南西部原産のこの花が日本に入ってきたのは江戸時代。最初に入ってきたの雄株だったそうで、その後接ぎ木しながら増やされていたので、日本にある金木犀はすべてが雄で、実がなることはないそうです。
中国では金木犀を一般的に「桂花」とかいて、「けいか」と呼ばれています。日本ではあまり見かけませんが、中国では、「花茶」として使われたり、飴やお菓子の原料などとして使われているのを良く見かけます。桂花のエッセンシャルオイルもあるらしいですが、どんな時に使うんでしょうね。詳しい方、教えてください。


/ titanium22

金木犀(桂花)を中医学的に見ると

桂花は辛味で、温性。肝、心、脾、胃に入り、温中散寒、行気の力があり、お腹を温め、寒さを散らしたり、気の巡りを良くすることでストレス過多症状を改善する力があるとされています。辛味は肺の働きを整え、血流を良くし、ストレスや邪気を発散する力があるとされ、温性も体を温め気・血をめぐらせるとされていますので、やはり、この時期にぴったりですね。
花びらを白ワインにつけて3年ほど熟成させたお酒、『桂花陳酒(けいかちんしゅ)』は日本でも有名ですが、古くは楊貴妃も愛用していたと言われ、当時では宮廷だけで飲まれていたそうです。ちなみに「陳」というのは「古い」「経年経過した」という意味で、みかんの皮の「陳皮」というのも同じです。みかんの皮は古ければ古いほど良いとされていますが、お酒はどうなんでしょうね。

花茶としていただく場合は、10gぐらいに熱湯を注いで少しまって金木犀の甘い香りが立ち込めたら、香りを楽しみながら飲みます。その他、緑茶とブレンドしてはちみつを入れても美味しいですし、夏場はそこに氷を浮かべて暑気払いにもぴったりです。冬なら紅茶に入れてもおいしいですよ。


水井茶堂 桂花膨風茶+客家麻糬 / JerryLai0208

中国では金木犀の花とご飯を一緒に炊いたものに少量のはちみつを入れた「蜂蜜桂花飯」ってのもけっこうメジャーです。「ジャスミンライス」みたいなものですね。どうも私はご飯に芳香剤の香りが付いているみたいで好きにはなれません。あと「桂花蓮根」っていうのも北京で食べましたが、これがまた、芳香剤を輪切りにしたものを食べてるみたいで、、やはり、苦手でした。まぁ食べ物は習慣と好みがあるので、、私は花茶やお酒のがイイです。


桂花飯 / Jessie.yang


糯米在中間、口感很特別的桂花蓮藕 / *Chia-Ling

 
日本では余り食べる習慣のない金木犀ですが、身体を温めてくれ、胃腸を元気にしてくれるので、試してみてはいかがでしょうか?
 
 
 

2013/10/26

野菜は目に、薬用は元気の源!「人参」のお話!

こんにちは、櫻井です。台風がまたまた近づいてきていますね。今日は一日雨模様のようで、シンシン君も心配そうです。

 
リクエストにお応えして、今日は人参のお話をしたいと思います。リクエストの内容が、野菜の人参か、生薬の人参かが解らなかったので、両方書きます!

野菜の人参

まず野菜の人参ですが、原産はアフガニスタンだそうです。植物学上ではセリ科に属していて、ウコギ科の生薬の人参とは別物です。名前は、先に入ってきていた薬用の人参が「人参」とよばれていたそうです。後から入ってきた野菜の人参は、その形が薬用人参に似ていたため、「人参」という名前が付きました。
日本に入ってきた人参は中国から16世紀ごろに入ってきた東洋人参と、江戸末期にオランダやフランスから入ってきた西洋人参とがあります。東洋人参は栽培が難しく、私たちが目にするほとんどの人参は西洋人参だそうです。東洋人参は甘く、人参特有のにおいも少なく、煮ても型崩れしにくいので和食では良く使われています。京人参と呼ばれている、赤みが深い「金時人参」がそれです。西洋人参はスーパーで目にする誰もが知ってる人参です。
人参は涼しい気候で育ちやすいので、旬は9月から12月と、今が旬で、生産量は北海道が一番多いです。。ビタミンAとカロチンが豊富で、特にカロチンはほかの食材に比べて圧倒的に多く、人参半分で一日の摂取量をまかなえるぐらいです。その他、ビタミンB,C、カルシウム、鉄も含み、栄養豊かな食材です。カロチンは油に溶けやすいので、バターや油で調理すると、カロチンの吸収率が上がります。人参のオレンジ色が一般的です、その他いろんな色素を含んだ人参があります。アフガニスタンのもともとの人参は白や黄色、黒というのもあります。
 


Carrots – Carota – Wortels – Geze – 胡萝卜- zanahoria – carotte – ニンジン / color line

食用人参を中医学的に見てみると、

平性で温寒の偏りがなく、血の不足やエネルギーの巡りの悪さを改善してくれます。肝の働きを改善して、貧血や夜盲症を予防します。目の疲れや視力低下にも。脾(胃腸)の働きを正常にするので、下痢や便秘の改善にもおススメです。

Carrots / joyosity

 
 

生薬の人参

「朝鮮人参」、「高麗人参」と呼ばれるウコギ科の薬用人参。今から1300年前、天平の時代に中国東北部の渤海から日本に伝えられたと言われています。八代将軍徳川吉宗がその栽培を奨励したとされ、各藩の大名にその苗を与え栽培させていたことから「御種人参」という名前も残っています。人参の歴史は古く、四千年も昔から薬として使われてきた記録もあります。中医学で人参というと、この人参を指しますが、同じウコギ科でもその他に薬効の違う西洋人参(アメリカ人参)、田七人参、シベリア人参*などがあります。


DSCN9042 / mongobbq

高麗人参はそのほとんどが韓国や中国の東北地方で栽培されています。野生の人参の薬効は「ショック状態で倒れた人を蘇らせる」というぐらい強烈な力を持っていますが、今ではほぼ入手不可能と言われています。
人参は代表的な補気薬で、人体の生命活動の原動力となる「気」を補う生薬です。体力の低下時や疲労や慢性虚弱に、元気を補い、胃や腸などの消化器の働きを健やかにし、神経・精神を安定させ、身体中の水分である「津液」を生む効果があります。人参は長期にわたって服用しても害がなく、適応する病気や症状の範囲がとても広い生薬です。しかし、もちろん薬は薬ですので、使用の場合は専門家のアドバイスを受けてください。特にすこし温性の性質を持つので、高熱時やほてり、のぼせ、高血圧、熱性便秘などの症状が強い場合は慎重に使うべきです。

高麗人参には、その炮製(ほうせい)と呼ばれる加工方法により2種類の違ったタイプのものがあります。ひとつは蒸した後加工した「紅参(こうじん)」、蒸さずにそのまま加工した「白参(はくじん)」があります。紅参はその蒸す過程で有効成分のサポニンが少し失われますが、逆にその際に別な有効成分が造られます。さらに煎じた時にそれらの有効成分が溶け出しやすいという長所が生まれます。


Ginseng / Florena_Presse/
白参


Bottles of Ginseng Like Little Creatures /薬用人参の薬酒/ storyvillegirl

野菜の人参と薬用人参

野菜の人参は寒熱の偏りがなく、どんな体質でも食べやすい食材です。肝の働きを良くして目を養います。胃腸にも良いとされています。

薬用人参の性味は甘で微苦、そして微温とされ、甘味で腸(脾)に行き、微温で温めます。補気固脱、補脾気、益肺気、生津止渇、安神益智の効果があり、体に元気を補い、胃腸を健やかにして、肺を活発に動かし、潤いを生み、心を安らげます。
どちらの人参も体にとても良いので、気になる症状がある方はレシピに加えてみてくださいね。野菜の人参は油と相性が良いのできんぴらなんかおすすめですが、薬用ニンジンももし手に入れば、きんぴらやてんぷらにしてもおいしいです。焼酎につけて毎日少しずつ飲むのも良いですね。

*西洋人参(アメリカ人参)の薬効は高麗人参に似ていますが涼性です。熱をとり頭をすっきりさせる力があるとされ、エネルギー不足に加え、集中力や記憶力などが求められる場合に。田七人参は、活血・止血の妙薬。血流改善しながら同時に、そう反する止血作用もある不思議な生薬です。肝の機能をあげてくれたり、痛みを抑える力もあります。出血時や血流改善はしたいけど出血はさせたくないとき、痛みがあるときなどに使います。シベリア人参は、温性で、心を安らげるリラックスの力があり、環境ストレスに強くなれるとされています。

2013/10/25

猛毒の『トリカブト』も漢方ではお薬です。

今日、10月23日は、華岡青洲が生まれた日(1760年10月23日)です。華岡青洲と言えば、世界で初めて全身麻酔を使用した外科手術をした人物です。
その麻酔薬とは、草烏頭(そううず・トリカブト)と曼荼羅華の実(まんだらげ・チョウセンアサガオ)を主成分とした6種類(当帰、川芎、白芍、ナンセイシャ)の生薬を混ぜた通仙散(つうせんさん)、別名・麻沸散(まふつさん)という薬です。トリカブトはドクゼリ、ドクウツギと並ぶ、「日本三大有毒植物」すが、いまでもれっきとした「薬」としてつかわれています。華岡青洲はその他、紫雲膏をつくったことでも有名ですね。紫雲膏はこのブログでも前に取り上げています。「傷を残さない傷薬紫雲膏」は、こちらからどうぞ
 


Monkshood – 05 / Kabacchi/ トリカブト 


Angel’s Trumpet / Datura arborea / 木立朝鮮朝顔(キダチチョウセンアサガオ) / TANAKA Juuyoh (田中十洋)

トリカブトは生薬名を附子(ぶし)または烏頭(うず)といい、両方ともトリカブトをさす名前です。附子と烏頭の両者には違いがあり、トリカブト属の植物の母根を「烏頭」とよび、その傍生の子根を「附子」といいます。烏頭には川烏頭(せんうず)と草烏頭(そううず)の2種類があり、川烏頭は主に四川省で栽培されたものを指し、草烏頭は各地の野生品を指していいます。毒性が非常に強く、特に草烏頭はとても慎重に使わなくてはいけないとされています。実際に草烏頭を使った華岡青洲の麻酔薬も、数回にわたる人体実験の間に実母の死、妻の失明という犠牲を払うことになりました。
 

画像:wikipedia 附子

附子は、散寒薬とよばれる、温性・熱性を持つ、冷えや寒気などを伴う、嘔吐、下痢、腹痛などを改善する生薬です。その中でも附子は性質が「大熱」と、とても強い生薬で、すべての臓腑に通じるとされています。飲むとすぐに体が温まり、発汗します。しかし、毒性が強いので、一般には加工(中医学用語では「炮製・ほうせい」といいます)したものを使います。生で使う場合は作用が激烈なので、短期間で使うようにします。炮製したものは、炮附子とよばれ毒性が弱く、身体を温め、冷えを改善し、痛みを治す力を持っています。日本では、高圧加熱によって減毒した「加工附子」が良く使われています。日本で見られる附子が使われている漢方薬は、麻黄附子細辛湯、八味地黄丸、牛車腎気丸などがあります。注意点としては、冷えが強く、むくみがみられるような場合でないと使えません。潤い不足(陰虚内熱)や妊婦には使ってはいけません。
麻黄附子細辛湯は散寒止痛のお薬として、発汗促進・解熱、機能促進、代謝増高、抵抗力増強、鎮痛、血行促進などにつかわれ、利尿によるむくみの改善や痛み止め、咳止め、アレルギー性鼻炎の薬としても使われますが、冷えがベースにあることがこのお薬を選ぶポイントです。カゼやインフルエンザに使う時は、初期で、強い悪寒がして、余り汗をかけない場合に使います。
八味地黄丸と牛車腎気丸は補腎陽のお薬で、身体を温め、冷えを改善し、加齢に伴う足腰の弱り、冷え、痛み、夜間多尿などに使われれます。牛車腎気丸はさらにむくみの改善にも使われます。
 
 
 
初めて附子の原料が、あの有名なトリカブトであると知った時は本当にびっくりしましたが、毒と薬は使う方が勝手に決めているだけのことなので、当然と言えば当然です。前出のチョウセンアサガオの実や根にも、有効成分が多分に含まれており、海外ではシャーマンが行う、呪術的な儀式につかわれるほど強い幻覚作用をもった「毒」ですが、過去には鎮痙薬としても使われてきた経緯から、今でも日本麻酔科学会のシンボルマークとして使われています。現在では麻薬に指定されているアヘンから作られるモルヒネも、今私たちが手にすることができる中で最も強い鎮痛薬ですし、同じくアヘンをもとに作られたコデインも、咳を鎮める薬として市販の咳止め薬に広く入っていますし、覚せい剤の原料のエフェドリン(咳止め)の原料、麻黄(まおう)もれっきとした生薬です。インカ文明の時代には、コカの葉から作られた抽出液で鎮痛・麻酔して、頭蓋骨穿孔手術を行ったと考えらていますが、そのコカから生成されるのは、こちらも麻薬のコカインです。コカインはウィーンの眼科医によって、初めは目の局所麻酔薬として使われていました。さらに20世紀初頭までコカコーラにも入っていましたし、心理学の創設者で医師だったフロイトも、モルヒネの依存症を改善する薬としてコカインを処方していました。毒と考えられているものには、同じく薬効があります。薬効とは「人にとって都合の良い化学物資の影響」のことをさしており、逆に「好ましくない影響」は毒と呼ばれたり、副作用と呼ばれたりしています。今でも様々な毒から薬が造られていますが、華岡青洲の実母の死や妻の失明しかり、多くの犠牲の上にそれらも薬として使えるようになりましたが、薬と毒はやはり紙一重です。十分に注意して使用したいものです。
 
 

2013/10/23

イスクラ薬局の運営会社情報

運営会社 イスクラ産業株式会社(英文会社名:lSKRA INDUSTRY CO., LTD.)
本社所在地 〒103-0027 東京都中央区日本橋一丁目14番2号
設立年月日 1960年3月1日
事業概要 ロシア・CIS諸国・中国との医薬品、医療機器、化学品の輸出入
中成薬(中国漢方製剤)、健康食品、スキンケア製品の製造、販売