西洋医学では水という病因をそれほど重要視していないようですが、漢方では水は非常に重視される病因の一つです。漢方ではむくみを症状別に見ます。むくんでいる部位の違い、下半身のむくみか上半身のむくみか、全体のむくみかによっても違ってきます。
漢方から見たむくみやすい体質
では、ここからは漢方から見たむくみやすい体質についてご説明します。
むくみに共通する体質
漢方ではむくみがちな体質、状態を水滞(水湿停滞)といいます。
人体は気・血・水(津液)の3つの基本物質によって形成されています。この中の津液が何らかの原因で体内に停滞するとむくみが発生します。水は全身に分布していますが、水と特に関係の深い臓腑は肺、脾、腎です。肺のトラブルによるむくみは顔から手足、全身へと至り、脾によるむくみは下半身のむくみ、腎によるものは、顔面及び全身、特に腰以下が甚だしいといった区別がありますが、こちらでは、気・血・水の基本物質の観点からご説明していきます。
むくみを生む体質
では、次に水湿停滞を発生しやすい各体質についてご紹介します。
気滞
気の巡りが悪く体の水分の循環が滞り水滞につながる
津液の巡りは単独で行われるのではなく、気(体内エネルギー)の力によって推動されます。気の滞りによって、津液も体内をスムーズに巡らなくなり水湿という病理産物として体内に停滞してしまいます。
「気滞」とは、ストレスや精神的な過労が続き、「気」がうまくめぐらず停滞した状態を指します。中医学の「気」のめぐりは西洋医学の自律神経の働きと重なります。「気滞」になると精神的に不安定になり、イライラ、怒りっぽい、落ち込みやすくなります。気のめぐりをつかさどる臓腑は「肝」です。肝の経絡は体の両側にあり、気滞は、こめかみの痛み、乳房の張り、両脇の張り、舌の側面の赤みなど体の側面に症状が出やすくなります。また胃やおなかが張ってガスやゲップが出やすい、不眠、夢をよく見る、のどの不快感、血圧が高くなる、女性では生理不順や月経前症候群などに悩まされる人も多くあらわれます。
舌の両側は赤みがあり、苔は薄く、白または黄色くなります。
気虚
体の津液を動かすエネルギーが足りないので、水湿停滞に至ってしまいます。
気虚が進行してしまい、身体を温めるパワーも不足する(陽虚)と、体が冷え更に水滞がひどくなる場合があります。
「気」は元気・気力の気と言うように人の活力の素です。気の不足は疲労、倦怠や息切れを感じやすく、冷え性にもなりやすいです。胃や腸の冷えは消化機能が低下し、食欲不振、胃もたれ、軟便や下痢になることもあります。気は免疫力、自然治癒力の本でもあり、「気虚」になると、免疫力が低下して風邪をひきやすく、治りにくくなったりします。そのほか、花粉症などのアレルギー疾患、頻尿、夜間尿、不感症、不妊症などの症状も表れやすくなります。
舌は色が淡くて全体は厚く腫れぼったい、舌の縁に歯形がつくこともあります。
血瘀
血行が悪いと、血液の一部である津液も停滞して水滞につなってしまいます。
血瘀とは血がどろどろして「血」のめぐりが悪い状態を指します。「血」のめぐりが悪いと、末梢の栄養不足と、老廃物の蓄積から、顔や唇の色が暗い、シミやそばかすが多い、手足の冷え、便が黒っぽいなどの症状が表れます。さらに血行不良が続くと、慢性的な肩凝り、頑固な頭痛や関節痛、女性の生理痛、生理の血に黒っぽいレバー状のかたまりが混じることが多くなります。
「瘀血」は色々な病のもととなります。血がどろどろの状態が続くと、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、子宮筋腫、ガンなどになることがあります。舌の色は紫色がかり、また黒いしみのような斑点が見えます。舌の裏側の静脈は太く、時には静脈瘤のようなこぶが見えることもあります。
むくみにおすすめの漢方薬
次に、むくみになりやすい体質別にお勧めの漢方薬をご紹介します。
気滞
むくみの原因である気の巡りを整えることで、水湿の代謝を促します。
おすすめの漢方薬の一例:五皮飲、柴苓湯、茵陳五苓散、加味逍遙散、開気丸、大柴胡湯、防風通聖散など
気虚
身体の津液を動かすエネルギーを養います。
おすすめの漢方薬の一例:五苓散、啓脾湯、真武湯、牛車腎気丸など
血瘀
血行を良くすることで、水滞も動かして解消へと導きます。
おすすめの漢方薬の一例:芎帰調血飲第一加減、桂枝茯苓丸加薏苡仁、冠元顆粒など
まとめ
むくみには漢方薬がおすすめ
以上、体質的なむくみは漢方薬局で対応可能ですが、病気が原因でむくみが現れることもあります。むくみを生じる病気は多くありますが、代表的で緊急度の高い病気には、心不全や腎不全、アナフィラキシーなどがあります。急にむくんだ・むくみが1,2日経っても消えない・左右の足でむくみが違う、息苦しいなど通常のむくみとは違う症状でしたら直ちに病院で診察を受けましょう。
先述の通り、今回は気血水(津液)の角度から体質の解説をしましたが、実際には同時に五臓六腑の角度からの分析も必要です。漢方薬局の漢方の専門家に相談されることをお勧めします。
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参考資料:『いかに弁証論治するか』