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この症状って?

男性にも「更年期障害」はある?漢方の対策法とは?

近頃耳にするようになった「男性更年期障害」。男性ホルモンが青年期にピークを迎えた後、徐々に減少することによって生じる一連の生理的、心理的変化および臨床症状を指し、医学的には「LOH(ロー)症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」,PADAM(男性更年期症候群)などと呼ばれます。

最近は、男性更年期障害の認知も高まり、毛髪で男性ホルモン「テストステロン」の値がわかる検査キットなども出回り、気軽に自分で調べられるようになりました。

男性更年期障害の発症時期は一様ではなく、一般的に50~65歳頃に現れ、その症状の重さには個人差があります。軽度の症例では特に症状が気にならない場合もありますが、重症化すると日常生活や仕事に支障を来たすこともあります。主な症状としては、性機能の低下、神経血管症状、男性的特徴の低下、および不安や抑うつなどの情緒不安定が見られます。

この記事では、男性更年期障害の原因、診断基準、治療法、予防とセルフケア、そして中医学における男性更年期障害の考え方、対策法、代表処方などをご紹介します。



男性更年期障害とは?


男性更年期障害発症の原因


  • 加齢によるテストステロンの減少
    30代後半からテストステロン値が徐々に低下し、50代~60代で症状が顕著になります。

  • ストレスや生活習慣の影響
    睡眠不足、過剰な飲酒、不規則な食事、慢性的なストレスは、テストステロンの減少を加速します。

  • 基礎疾患の影響
    糖尿病、肥満、代謝症候群などは、ホルモンバランスを崩す要因となります。

  • 男性更年期障害の主な症状


    男性更年期障害の症状は、以下の3つの側面で現れます。

    身体的症状


  • 筋力の低下、疲労感

  • 体脂肪の増加、特に腹部肥満

  • 骨密度の低下(骨粗鬆症のリスク)

  • 頭痛や関節痛

  • 精神・心理的症状


  • 抑うつ、不安、イライラ

  • 集中力の低下、記憶力の減退

  • 睡眠障害(入眠困難や浅い眠り)

  • 性欲減退、意欲の低下

  • 性機能の変化


  • 勃起不全(ED)

  • 性欲の著しい減少

  • 精子量の減少


  • 男性更年期障害の診断方法


  • 患者の症状や既往歴の確認

  • 血液検査: 総テストステロン値、遊離テストステロン値、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の測定。

  • 他のホルモンの評価: FSH、LH、プロラクチンなどを測定して、原発性または続発性のテストステロン低下を評価。

  • AMS質問票(AMS: Aging Male Symptoms):この質問票は老年男性の「男性更年期症候群」の臨床症状の重症度を比較的体系的に記録する目的で設計されています。質問項目:以下の症状が自身に該当するかを確認し、それぞれの症状について程度を評価してください。

  • 全体的な健康感の低下

  • 筋肉や関節の痛み

  • 多汗

  • 睡眠障害

  • 嗜眠および頻繁な疲労感

  • 怒りやすい、イライラしやすい

  • 精神的な緊張、不安感

  • 焦燥感や恐怖感

  • 体力の衰え、活力の欠如

  • 筋力の低下、虚弱感

  • 情緒不安定、抑うつ

  • 非常に不調に感じる

  • 極度の疲労感、最悪の状態にある感覚

  • ひげの成長速度の低下

  • 性機能や性生活頻度の減少

  • 朝の自発的勃起の頻度減少

  • 性欲の減退

  • 追加質問:上記の17項目以外に主要な症状がある場合、具体的に記述してください。

    評価方法:
    各項目について、症状の重症度を以下の5段階で評価し、スコア化します:

  • ない(1点)

  • 軽度(2点)

  • 中等度(3点)

  • 重度(4点)

  • 特に重度(5点)

  • 総合評価:
  • スコア26以下:基本的に正常

  • スコア27~36:軽度異常

  • スコア37~49:中等度異常

  • スコア50以上:重度異常


  • 治療法


  • ホルモン補充療法(TST: Testosterone Replacement Therapy)

  • テストステロン製剤(注射、ゲル、パッチなど)を使用し、ホルモンバランスを整える。

    適応条件:テストステロン値が正常値以下・臨床症状が明確に存在
    注意点: ホルモン補充療法の前に前立腺癌や乳癌のリスクを排除する必要があります。

  • 中医薬による対策(詳細は後半ご紹介)

  • 理論: 肝腎不足や気血の滞りを改善。
    使用薬方: 八味地黄丸、補中益気湯など。

  • ライフスタイルの改善

  • 適度な運動(特に筋力トレーニング)

  • 栄養バランスのとれた食事(亜鉛、ビタミンD、良質なたんぱく質を含む食品の摂取)

  • 規則的な睡眠とストレス管理

  • 心理療法・カウンセリング

  • ストレス軽減のための心理的サポート

  • パートナーとの関係改善を目的としたカウンセリング

  • 予防とセルフケア


  • 定期的な健康診断でホルモンレベルを確認

  • タバコと過剰なアルコール摂取を控える

  • 趣味や運動を通じて生活の質を向上させる

  • 良好な人間関係の維持とストレスマネジメント

  • 注意事項


  • 全ての中高年男性が更年期障害を経験するわけではありません。

  • 症状が他の疾患と重なることがあるため、専門医の診察を受けることが重要です。

  • 男性更年期障害は適切な診断と治療により改善が可能です。早期の対応が症状緩和と生活の質の向上に繋がります。

    中医学における男性更年期障害の考え方・代表的な漢方薬


    原因とメカニズム


    この病は、主に加齢に伴う腎の衰え、精の源の枯渇、精血の不足、陰陽の不調によって引き起こされ、さらに心、肝、脾といった臓器の機能不調を伴うこともあります。中医学において、腎は生命力の根本であり、人間の生殖、成長、発育、性機能および老化の全過程を司るとされています。

    男性が更年期に差し掛かると、精の源も次第に枯渇していきます。これにより、体も強健から衰弱に、性機能や生殖能力も旺盛から減退へと変化し、人生が壮年期から老年期へと移行します。もし、先天的な体質が弱かったり、虚弱体質であったり、後天的に性生活が過度で精血が過剰に消耗されたり、生活習慣が不規則で過労や過度な精神的負担、睡眠不足が続いたりした場合、更年期の到来が早まるか、または明確な症状が現れる可能性が高くなります。

    また、陰陽の調和は心、肝、脾といった臓器の健全で調和の取れた機能にも依存しています。心、肝、脾のバランスが崩れると、最終的に腎の衰えと陰陽の不調が引き起こされ、男性更年期障害発生を促すことになります。

    代表的なタイプ


    1. 脾腎陽虚タイプ


    症状:主に男性の生理体能および性機能低下に関連する症状が現れる。

  • 寒がりで温かさを好む、眠気が強く横になっていたい、四肢の冷え、腰や膝の冷えや痛み、関節の痛み

  • 性欲低下、性行為の減少、勃起力の低下、勃起不全、陰嚢の冷えと痛み

  • 神疲乏力、世事に無関心、発声が小さく弱い、頻尿や排尿量の増加、軟便や水様便

  • 淡く腫れた舌と白苔、沈んで細い脈

  • 基本対策:脾を健やかにし、腎を補い、陽気を壮んにし、気を益す。
    代表処方:参馬補腎丸、参茸補血丸、金匱腎気丸、附子理中丸

    2.肝腎陰虚タイプ


    症状:主に生理機能の早期衰退症状が現れる。主な症状には以下が含まれる

  • 体が痩せ、頭がくらくらし、目がかすむ

  • 耳鳴りや難聴、健忘、多夢、髪が抜けたり歯が抜け落ちたりする

  • 口や喉が乾燥し、腰や膝がだるく、煩躁感、怒りやすさ、憂鬱や緊張感

  • 潮熱や盗汗、尿の減少、便秘、陽萎や遺精

  • 舌は赤く苔が少なく、脈は弦細

  • 基本対策:肝腎を滋養することが基本です。
    代表処方:杞菊地黄顆粒、亀鹿仙、八仙丸、瀉火補腎丸、二至丹など

    3.心腎不交タイプ(心と腎の協調不全)


    症状:精神心理症状と血管運動症状を主とする

  • 手足と胸部が熱い感覚

  • 心が乱れて眠れない

  • 動悸

  • 不安感、イライラしやすい

  • 不眠と夢が多い

  • 午後や夜間に発熱

  • 寝汗

  • 口の苦味と喉の渇き

  • 痩せている体形

  • 腰や膝のだるさ

  • めまい、耳鳴り

  • 場合によっては:勃起不全、早漏、精液の漏れ、頻尿、排尿量減少、尿が黄色く熱感がある、便秘

  • 舌は赤く苔が少ない。脈は細く速い。

    基本対策:交通心腎(心と腎を連携させる)
    代表処方:天王補心丹、瀉火補腎丸など

    4.陰陽両虚タイプ(陰と陽の両方が不足)


    症状:生理機能や身体機能の低下、特に性機能の低下を主症状とする

  • めまい、耳鳴

  • 不眠や物忘れ

  • 倦怠感、疲労感

  • 腰や膝のだるさ

  • 寒がり

  • 性欲が湧かない、勃起不全、性機能低下

  • 食欲不振

  • 頻尿、軟便

  • 夜間の頻尿、残尿感、尿失禁

  • 聴力や視力の低下

  • 健忘や痴呆、歯のぐらつき

  • 舌は淡く苔が薄い。脈は細く速い。

    基本対策:腎陰を滋補(腎の潤い栄養を養う)・腎陽を温補(腎を温め活性化する)
    代表処方:杞菊地黄顆粒、参茸補血丸、六味地黄丸、海精宝など

    5.肝鬱胆熱タイプ(肝気の滞りと胆熱)


    症状:精神心理症状と血管運動症状が主

    心理症状:

  • 情緒の不安定、焦りやうつ、恐怖感、ビクビクして動悸、頻繁なため息

  • いらだち、怒りっぽさ、悪夢が多い

  • 身体症状:

  • 胸や脇腹の張りと痛み

  • 食欲不振、腹部膨満感、腹痛と下痢、下痢後も痛みが続く

  • 午後のほてり、口の苦味と喉の渇き

  • めまいと耳鳴り

  • 性欲減退、勃起不全、早漏

  • 舌は紅く、苔が薄く黄色くべとべとしている。

  • 脈は弦(張りのある脈)。

  • 基本対策:滋腎養肝(腎を潤し肝を養う)、疏肝解鬱(肝気を巡らせて鬱を解く)
    代表処方:柴胡疏肝散、逍遥顆粒、温胆湯、木鶏丹など

    男性更年期障害の経過および予後


    男性更年期障害(男性更年期症候群)は、男性が中年から老年期へ移行する過程で現れる一連の症状群です。通常、良好な心の持ち方を保ち、積極的に適応し、適切に調整することで症状を軽減し、比較的安全に老年期へ移行できます。そのため、予後は良好とされています。ただし、以下の点に注意が必要です

  • テストステロンなどの男性ホルモン補充療法を行う場合は、医師の指導の下で行い、観察を続ける必要があります。

  • 前立腺がんや男性乳がんのリスク、赤血球増多症の発生、過度な肥満や睡眠時無呼吸症候群の存在など、ホルモン療法が不適切なケースもあります。

    男性更年期障害の予防とセルフケア


    1. アンチエイジングと健康維持
    アンチエイジングを目指し、体質を向上させることで老化を遅らせ、男性更年期症状を予防または軽減できます。

    2. 精神的なケア

  • 心を養い精神を安定させる

  • 良好な精神状態を保ち、心の若さを維持する。楽観的、寛大で穏やかな積極的な心の持ち方を身につける。

  • ストレスや怒り、不安、恐怖、自己否定的な感情をできるだけ避ける。

  • 3. 積極的な活動参加

  • 文化・スポーツ活動:

  • チェスやカード、気功、太極拳を練習する。

  • 読書や人との会話、地域のボランティア活動に参加することで、人生に楽しみと目的を見つける。

  • 体力維持:

  • 特に腰や脚の機能を強化することが重要であり、ウォーキング、ジョギング、散歩など下半身の運動を取り入れる

  • できるだけ車を使わず徒歩を心がける。

  • 4. 飲食の養生

  • 偏った嗜好を避け、さっぱりした消化に良い食事を心がける。

  • 辛味や脂っこいもの、焼き物など湿熱を助長する食物は避ける。

  • 野菜や果物を多く摂取し、腸の健康を保つ。

  • 動植物由来の高タンパク食品(魚、豆、肉)や特定の食材(ドジョウ、ニラ、エビ、羊肉、牛肉、クルミ、ローヤルゼリーなど)を取り入れ、性機能の強化、筋骨の強化、精血の補充を図る。

  • 嗜好品: 適量の飲酒は可能だが、禁煙を徹底する。

  • 5. 規則正しい生活

  • 規則的な生活習慣を守り、早寝早起きを心がける。

  • 仕事と休息のバランスを取り、適切な体重を維持して気血の調和を保つ。

  • 6. 適度な性生活

  • 性生活は適度で、規則的かつバランスよく行う。

  • 夫婦間で早期に別室で寝ることや禁欲を避ける。

  • 性行為を過度に追い求めない。

  • 適度な性行為は性ホルモンの定時分泌を促し、早期老化を防ぐとともに、以下の効果をもたらす:

  • 情緒を安定させ、心の若さを保つ。

  • 夫婦間の絆を深め、生活の幸福感を向上させる。

  • 気血の巡りを促進し、臓腑の機能を維持する。

  • 特に性器官の早期老化や萎縮を遅らせる。

  • 男性更年期障害でお悩みの方へ


    以上、中医学から見た男性更年期障害の主なタイプ、お勧めの漢方薬と養生法をご紹介しました。今回ご紹介した他にも男性更年期障害になりやすいタイプがあります。あなたがどのタイプかを知るには、漢方の専門家へ相談されるのが確実です。漢方薬局の漢方の専門家を大いに活用しましょう。

    男性更年期障害のお悩み、どうぞイスクラ薬局にもお気軽にご相談くださいませ♡まずはメール相談をご希望でしたらお試しプレ相談、ご予約でしたらお電話もしくはご予約フォームから承ります♡
    監修
    佐藤薫
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    上海外国語大学留学中に中医薬膳に出会い、帰国後北京中医薬大学日本校に入学。中医薬膳専科で中医薬膳学、中医中薬専攻科で中医学を学ぶ。現在、イスクラ薬局日本橋店での漢方相談のみならず、日本中医食養学会講師、北京中医薬大学日本校で中医中薬専攻科での通訳を務める。体の基礎を作る食事からしっかり指導できる学会認定不妊カウンセラー。

    「食養生は、中医養生法の礎となるものです。漢方同様、お一人お一人の体質体調に合った食養生法をご提案します。」

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