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この症状って?

「物忘れ」 (健忘)のための 漢方

「物忘れ」について



現代医学で「物忘れ」は、
(1)生活に支障のない生理的なもの、
(2)痴呆症(=認知症)と診断される病的なもの、
の2つに大別されています。


さらに、痴呆症の分類は、
脳血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆に大別され、
中には両者の混合型もあるとされています。


日本では従来脳血管性痴呆が多かったのですが、
アルツハイマー型痴呆も増えてきているようです。
脳血管性痴呆はその字のごとく脳血管の循環不全によるものですが、
脳組織萎縮によるアルツハイマー型は、根本的な原因は解明されていません。


かつて、アメリカのレーガン元大統領がアルツハイマー型であることを
ご自身で公表されたことは記憶にあることと思います。


さて、病的ではない(1)の物忘れは、ほぼ生理的な老化現象によるものと考えていいのですが、
漢方薬療法において、病的かどうかはあまり議論するところではありません。


漢方では、数千年の昔から物忘れ症状を観察しており、
現代医学のような細かい鑑別があったわけではないからです。


とはいえ、症状がひどくなり病的な痴呆症の領域に入ってくると、
ガスコンロ消し忘れによる火事騒ぎや、徘徊行動、いらいら、うつ状態などの問題行動が頻繁になり、見守る家族にかかる重圧もたいへんなものになります。
介護者にとっても、
ストレスが少ない状態で在宅介護ができる方法を模索する必要があるといえそうです。


 

「物忘れ」 のための 漢方薬


さて、現代医学的な治療は一般の医療機関に譲るとして、
ここではよく応用される漢方薬を挙げます。


物忘れといっても、他の病気と同様に、
証(自覚他覚の諸症状を総括した概念)に従って漢方薬が選択されます。


できれば物忘れが生じてから治すよりも、
予防の段階で漢方薬を服用するのが賢明でしょう。

1) 脳血流低下に血流改善薬 :


からだの細胞にはその機能維持・活動のために酸素が必要なのですが、
なんとその 20 %が脳により消費されています。


脳血管の血液循環に障害を受けるとその必要な酸素が届かなくなり、
物忘れなどの症状が出始めるとされています。


また、脳細胞は再生しないので、脳の血流循環・組織代謝を良くし、
周囲の細胞の活性化をはかることが大切です。


これに対応すると考えられる漢方薬としては、
桂枝茯苓丸、丹参製剤(冠元顆粒)、釣藤散、などの血流改善剤があります。


 

2) 心脾両虚に健脾安神薬 :


心の安らぎが損なわれて、不安・健忘・動悸・夢をみるなどの症状(心血虚)が出るとともに、
消化器官の機能低下により
食欲不振・倦怠感・無気力・疲れやすいなどの症状(脾気虚)が合わさると、
心脾両虚という証を示します。


これらの症状を改善できる健脾安神の代表薬としては、心脾顆粒あるいは加味帰脾湯があります。

 

) 腎虚に補腎剤 :


中国漢方では、
「腎(生命力をつかさどる組織)は髄(骨髄・脊髄・脳髄)を生ず、脳は髄の海」といわれます。


物忘れを含め、脳の萎縮・機能不全は髄の不足(腎虚)により起こるので、
腎を補う補腎剤を使います。


代表例としては、
八味地黄丸、牛車腎気丸、杞菊地黄丸、
海馬補腎丸などがあります。

これらは、腎虚の他の症状、腰痛・下肢倦怠感・耳鳴・精力減退などにも効果が期待できます。

以上は、中国漢方での考え方ですが、 その他、
成果をあげている漢方薬として、
加味温胆湯、黄連解毒湯、当帰芍薬散、抑肝散加陳皮半夏などもよく使われています。


どの処方を選ぶかは、証によるところが大きいので、漢方に詳しい医師・薬剤師に相談してください。



 

物忘れを避けるための日頃の養生・注意点


物忘れに関するいくつかの生活上の注意点を列挙してみました。できそうなことから実行してみましょう。

1) 生活習慣病にならないこと :


脳血流障害には高血圧が大きな危険因子になります。
糖尿病・高脂血症など、
その他の生活習慣病でも高血圧を合併あるいは誘発することが多く、
まずこれらの病気にならないようにすることが懸命です。
では、
日頃から気をつけることとしては、

(1)タバコを控えること、
(2)脂っこい食物を摂りすぎないこと、
(3)肥満にならないよう適量の食事を摂り、適度の運動をすること、
(4)ストレスをためこまないこと、

などが挙げられます。
定年を迎えられた方は、運動面からも、精神面からも、張りのある生活を維持することも大切でしょう。

 

2) 指先つぼ刺激 :


昔から、手先が器用ならぼけにくい、などといわれます。

東洋医学では、手や足の指先には、
からだ全身を駆け巡る経絡
(気血を運行する通絡系統)が集まっており、
指先の運動を活発にすることによって脳への刺激を与え、
物忘れ・
痴呆の予防にいいとされています。

例えば、ピアノを弾いたり、編み物をする女性などは年老いても元気な様子が伺われます。
つぼの詳細や刺激の仕方については専門家に譲りますが、
若さを保つ健康法の一つとして、指先刺激を心がけてみてはいかがでしょうか。

3) 食べ物で補腎益精 :


脳の衰えを避けるために、
中国医学では腎精(生命力の源である生体内要素)を補うことが大切と考えられています。


漢方薬を服用する以外に、食生活の面からも、 補腎益精(腎精を補い、腎機能を保つ)の食べ物、黒豆、黒ゴマ、黒きくらげなどを積極的に摂るようにしましょう。

 

4) 規則的な生活リズムを心がける :


定年後などで、生活スタイルが急に乱れることがあります。
中国医学では、陰陽理論というものがあります。


例えば、太陽が出ている日中(陽)にはからだを起こして適度に運動し、
太陽が沈んだ夜中(陰)にはからだを横にして休める。


自然の流れに逆らわずリズムを維持することは、
精神生活を充実させるためにも心がけたいことです。


近年よく耳にする「免疫機能」の面からも、
休むべきときにしっかり養生することはとても重要です。


夜更かしをせず、夜は 11 時ごろには就寝、 時間睡眠することが理想と言われています。

 

5) 周囲の協力 :


痴呆症と診断されている場合には、家族介護の状況がかなり影響すると考えられます。
介護者は、痴呆者がおかしなことを言っても気にせず受け入れ、
痴呆者の立場を尊重して接すれば問題行動も少なくなるようです。


気のおけない人が介護者として世話をし、
慣れた環境でともに生活することが一番の治療といえるかも知れません。


物忘れ症状が進行して悪化すると、不安、意欲低下、自閉症、うつ病、自律神経失調症など他の病態が合併する可能性があります。ぜひ日頃の養生に努め、病状が進行しないようにしましょう。

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